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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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 それにしてもダニーボーイのだんまりは異常だった。昨日までそれなりの世間話はしていたにも関わらず、ここにきて何も喋らないのは此方としてもどう対処していいのか分からなくなる。思えば、あの公園でローンレンジャーと出会った時から露骨に不機嫌になっていたから、もしかすると彼を憎んでいるか何かをして怒っているのかもしれないという結論に、結局は至った。というよりも他には考えられようがないのだ。


「ここに来る途中、ローンレンジャーという黒人に出会ってからどうも様子がおかしいんだよな」


 人間は誰を相手にしているかによって露骨に気分を変える生き物だ。例えばさっきまで楽しくお喋りをしていた店員が、自分の番になると表情を変えて舌打ちをするのも外国では珍しくない。というよりも日本の接客業界が異常なだけだ。学生バイトにも社員と同じ責任感を求める企業がほとんどであり、お客さまという神様を全力で奉仕するために命を賭けて接客をする様はハッキリ言って外国人から思えば笑いの種になっているのは言うまでもない。それぐらい外国と日本の接客事情は違うのだ。アルバイトが間違った敬語を使えばお客様から怒られて、少しでも無礼があればクレームが入る。こんな馬鹿げた事は当たり前だが外国には無い。そういう意味では日本の接客業は宗教だと思えば納得がいく。お客様という神様を崇めるために、全力で奉仕に勤める様はまさしく狂信者のようだ。アルバイトの給料などたかが知れているので、本気を出して接客をするのはバカバカしいにも程があるし、無愛想な店員がいても仕方がないのだ。アルバイトのほとんどは最低賃金で雇われているのがほとんどで、しかも時給という名の拘束をされているのだから無愛想になっても仕方がない。むしろ外国では無愛想な店員が当たり前なのだから日本によくいる愛想の良い店員のようがよっぽどキチガイ染みているのは言うまでもない。だからと言って、日本は日本なので「お客様は神様」という狂った現状は変えられる事もないだろう。そもそも外国では店員が神様なのに日本だけお客さんが神様なんて甚だ馬鹿げている。旺伝はコンビニに行くたびに、そう思っていた。旺伝が良く通っているコンビニには威勢の良いアンチャンがいるのだが、彼もまた外国人にとっては狂った人間である。随分と日本から離れていたかれこそ旺伝はそういう外国人のような感性を抱けるのだから実に羨ましいものだ。


「黒人のローンレンジャー?」


 するとラストラッシュも黒人でローレンレンジャーというのは不自然だと言うのか、首を傾げて頭上に疑問符を浮かべていた。あのダニーボーイもおかしいと言っていたので恐らく黒人がローンレンジャーであるのはいけない理由でもあるのだろう。というよりも、そもそもローンレンジャーとは何なのか、そこから旺伝は分からなかった。このように誰しも人間には分からない分野というのがあるので、他人を無知呼ばわりする人間は無礼極まりない。それと「初めからコイツはしならないだろうな」という雰囲気を醸し出しながらワザと誰にでも分かるような簡単な言葉を使って喋りかけてくる人間がいるのだが、そういう人間を見ると吐き気がするのが旺伝の特徴だ。人をバカにする態度をとっているのがどれほど愚かで人を傷つけるかを相手は分かっていない。


「なんだよ。ローンレンジャーが黒人じゃ駄目な理由でもあるのかよ?」


 本格的に意味が分からなかったので、旺伝は素直に聞くのだった。このように人間は人から聞いて物事を多く学ぶので分からない事があれば遠慮せずに聞くのがお利口さんだ。




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