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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯4 ぼくらのヒーロー
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 玖雅聖人という男は弟でありながら既に考え方は超一流の思想家のように思えた。それこそ日本史や世界史で習う偉人のように、常識とはかけ離れた考え方をしている。少なくとも旺伝のようにどっぷりと社会というぬるま湯につかっている者とは精神的強さがまるで違う。聖人は大事な思春期に山暮らしをして野生に身を置くことにより、狂人的な思想と概念を作り上げた。22世紀の発展した未来では有りえない行動だが、それが結果的に功をそうしたのは言うまでもない。他人とは敢えて真逆の行動をする事によって肉体面も精神面も中学生のそれを遥かに超え、もはや軟弱な大人達の上を行く存在へと進化していた。悪い意味で言うと原始人に近いが、良い意味で言えば超人に近い。それほどまでに超越した行動力と哲学を兼ね備えているのは玖雅家でも弟の聖人と父親ぐらいだ。しかし、父親は本能よりも理性に重点を置いているので聖人とは真逆のスタイルだがそれでも今の旺伝にとっては十分尊敬に値する。社会という荒波に揉まれる事によって精神面がズタボロになった自分よりよっぽど強い人間だとハッキリと言える。


 そして、会社に身を置く事で大人は想像しているよりも弱い人間だというのが分かった。表面では強がっているだけで、裏では己の弱さに悲観している者がなんと多いか。世界ナンバーワンヒットメーカーとしてカリスマ的な行動をみせるトリプルディー・ラストラッシュでさえも、普段の彼はとても弱弱しくて思わず助けたくなるような気持ちになるぐらいだ。これならば小学生や中学生の方がまだ精神的に強い。それぐらい子供と大人では精神力に違いが出てくる。だが、大人にも狂人的なメンタルを生かしてトップの座に君臨している本物がいる。そういう者は子供の時から外に出て脳と肉体をフル回転させて遊んでいる。遊びの達人だからこそ、大人になっても遊び心を忘れずに仕事を望むことが可能という訳だろう。しかし、家にこもってゲームばかり、あるいは勉強ばかりで外に出て遊ばなかった者は社会人になれば弱気になってしまう。大人達の理不尽な行動に耐えきれなくなってストレスと溜める一方なのだ。そういう意味では、子供の時外で遊びに遊んで、なおかつ勉強にも熱心で就職活動に全力を注いだ者だけが大人になっても精神的ストレスを感じなくて済む。悠々と仕事をこなして薔薇色の人生を過ごせるのだ。かといって、子供の時に怠けていた大人でも改善の余地はある。その方法は純粋無垢な子供と触れ合う事だ。彼ら彼女らから有り余るパワーを貰い、自分の枯れ果てた精神力に活力を生み出す。無論、子供がいない大人も大勢いるだろう。その人は小学生の気持ちになって昔やっていた事を日々の日常に取り入れば良い。


 たとえば小学生の時には当たり前にやっていた読書や明日の準備だ。当時の自分を思い出すという意味では、少年誌や古い漫画を見るのもアリだろう。それこそ児童文学にも手を出して構わない。それだけで精神的に強くなれるのだから子供の本を読んで恥ずかしいと思う自分を捨てるべきだ。それよりも精神的に弱い自分の方がよっぽど恥ずべき事ではなかろうか。そしてここで大事なのは感覚を大事にする事だ。昔読んでいた古い本を読んでいれば「懐かしい」と思う機会が多くなるだろう。その懐かしいという感覚が精神を研ぎ澄ませて、活力を生み出すのは言うまでもない。そうして少しでも純粋無垢だった小中学生の頃を思い出していく行為は必ず強みになるのだ。


「お前を見ていると中学生時代の自分を思い出す。あの時はなんでも出来ると思っていたし、実際になんでも出来た。しかし、今の俺は中途半端に社会の荒波に揉まれて精神力がズタボロだ。朝起きるのも億劫だし、ハッキリ言って仕事に行きたくない」


 旺伝は思いのたけを弟に語っていた。


「俺は社会の事はなんにも分からねーけど、仕事に行かなきゃ金は貰えねーだろ。だったら我慢して行くしかないよな」


「それが嫌なんだ。俺はストレスを感じずに、もっと楽しく仕事がしたい」


「だったら仕事でストレス解消すればいいじゃねえか」


「仕事で……ストレス解消?」


 やはり弟はとんでもない発言をしてくれると、旺伝は心の中で思っていた。



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