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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯1 山羊頭の男
11/221

011


「そろそろ行こうよ。花火大会!」


 友奈が騒いでいたので、旺伝が時間を確認すると、19時40分だった。花火大会が始まるのは20時なので確かに移動した方がよさそうだ。そう思った旺伝はラストラッシュに話しかける。


「お前も見るんだろ、花火大会?」


「当然です。ここまで来て仲間外れは寂しいですよ」


 ラストラッシュは缶ビールに口をつけながら、言葉を返してきた。


「分かった。一緒に見ようぜ」


 プルプルプル。


 そこで、不意に旺伝のスマホが鼓動を始めた。ポケットの中で暴れ狂うスマホを手に取り、起動させると、電話が鳴っていた。相手は依頼人の男からだった。唐突に、嫌な予感がして電話を取った。


『旺伝君か?』


 やはりそうだった。声は依頼人の男の声だ。


「そうだが、お前は依頼人の男か?」


『そうだ。お前に電話したのは他でもない。標的のビーストが出現したぞ』


 やっぱりか。旺伝はそう思って溜め息を吐いた。


「はぁ。このタイミングでか」


『なにか用事ようごとがあったのかね?』


「今から花火見ようと思ってたが、依頼があるのなら仕方ないな」


『そうか、為らば安心したまえ』


 男の声色が変わった。若干笑いが混じったような声だった。


「どういうことだ?」


 旺伝は聞き返す。


『花火を見ながら標的と戦えるぞ』


「ちょいちょい、勘弁してくれよ。まさか」


『そのまさかだよ。標的は花火大会の会場に紛れ込んでいるようだ』


「紛れ込んでいるだと?」


『言い忘れていたが、標的は人間型の怪物ビーストだ』


「待てよ。それなら、どうやって見抜けっていうんだよ!」


 旺伝は若干苛立ちをしていた。顔が引きつっている。


『目の色が違う。恢飢と同じだ』


「ってことは、赤色の目をしているのか?」


『そうだ。頑張って探してくれ。出来れば生け捕りにしてくれよ』


 ブチっ、という音と共に電話が切れた。あまりの素っ気ない態度に、思わず、旺伝は電話口に向かって叫び倒す。


「おい、ざけんな。まだ話の途中だろうがい!」


「どうかしたのですか?」


 ここで、ラストラッシュが話しかけてきた。旺伝は何故か不意にラストラッシュが頼もしく思えてしまい、陰に呼び出した。


「ちょっといいか。友奈はそこで待っててくれ」


「うん。待ってる」


 旺伝はラストラッシュを陰の方に呼び出して、こそこそと話しを始めた。


「ちょっとお願いがあるのだが」


「まさか、盗賊ギルドに入る決心をしたのですか?」


「違うって!」


 そう、言うのだった。


「あら」


「この花火大会に異形の魔物が紛れ込んでいる。東日本からやってきた奴だ」


「それは……大変ですね」


 ラストラッシュの顔が一変した。かなり真剣な表情だ。


「一緒に探してくれないか? そいつを生け捕りにしろって依頼があるんだ」


「うーん、どうしましょうか」


 しかし、ラストラッシュは悩んでいるようだった。


「頼むよ。俺一人で見つけられる訳ねえだろ」


「私は報酬を受け取らないと動かない主義です」


「ほ、ほうしゅう?」


 聞き返すのだ。


「そうですね。依頼金の半分でどうでしょうか?」


「ちょいちょい。こっちは生活費がかかってるんだぞ」


「逆に言えば、依頼金の半分を払えば私は動きますよ。どうします?」


 旺伝の弱みを突いた、適格な交渉だ。


「……分かったよ。半分やるから手伝ってくれ!」


 しぶしぶ、ラストラッシュの要求を受け入れるのだった。





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