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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯3 悪魔の血脈、覚醒
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 鍛冶場に見える人影はあまりにも細くてしなやかな体形のしている女だった。昔でこそ女と言えば黙って家事をする家政婦のような印象が高かったが、第二次世界大戦戦争が終戦してからというものの、女性の社会進出が著しく増加した。今では女性職人なんて何ら珍しいものではないのだ。むしろ、近年では主夫の方が割合を多く占めているぐらいだ。まるで21世紀に流行ったヒモの男が主人公のラノベのようだ。


「なんだ。女だったのか」


 鍛冶場という事もあって、彼女はほとんど化粧をしていないが、化粧いらずの美人である。顔立ちが整っており、髪もポニーテールにしてくくっている。年齢も旺伝同じか、少し年上のように見える。恐らく10代後半から20代前半と言ったところだろう。


「その差別的な物言いは納得できないわね。まるで女の作った剣はなまくらだと言いたげそうな表情を浮かべてさ」


「御嬢さん。被害妄想って言葉を知ってるか?」


「どこまでも人を侮辱する人ね……一体何者なの!」


 彼女はそう言いながら、腰に携えている剣を抜いて、旺伝の鼻先に向けた。あまりの

速さに驚きを隠せない旺伝である。しかし、お互い的では無いというのは分かっていると思うので、特に慌てる様子はなく、剣先を向けられたまま会話をする事にした。


「ちょい待てよ。俺は剣を引き取りに来ただけだ」


「剣? ということは貴方が依頼人なのね。まったく……こんな身勝手な男と知っていれば作らなかったのに」


「おや、それは心外ですね。私の秘書を身勝手な男呼ばわりするのは」


 ラストラッシュが一歩前に出ると、彼女はひきつった顔をして剣を鞘に納めた。それぐらいラストラッシュから放たれている威圧感が彼女の剣に恐怖を植え付けたのだろう。今まで大した活躍はしていなかったが、やはりそれ相応の力を持つ男なのだと、旺伝は改めて再認識させられた。


「ラストラッシュさんがそういうのなら、私は何も文句は言いません」


「そうでしょうね。あなたには借りがありますから」


 どうやらラストラッシュと彼女は知り合いらしい。


「知り合いだったのか?」


「以前にそう話したでしょう」


「そうだっけか。覚えてねえな」


 旺伝は首を捻りながら眉間にシワを寄せていた。こういう時は必死に思い出そうとしているが、頭が空っぽだという合図が示されている。もしも相手が考え事をしている時に眉間にシワを寄せていたら「あ、こいつ考えているフリをして、実は何も感がていないんだな」と思うのが賢明である。


「なんと……物忘れが激しい方ですね」


「最近忙しくて仕事の事しか頭にないんだよ。言い訳と思って構わないが」


「言い訳をすれば仕事にも悪影響を及ぼしますよ。罪悪感に苛まれたくないでしょう」


 人は誰しも言い訳が嫌いだ。それ故に言った方は後で後悔するのがテンプレ的である。言われた方も不快な気持ちになるので極力は避けるべきである。しかし、言い訳をせざる終えない状況は人生で何度か遭遇する。もしも、その時だと分かれば別に構わないが、毎回のように言い訳をしていれば人望が亡くなり、やがては社会的地位も失ってしまうの要注意だと旺伝自身も知っていた。


「そうだったな。悪かった」


 旺伝はそう言って素直に謝るのだった。


「本当ですよ。言い訳と怠慢さえ失くせばどんな人間でも仕事は出来ますから」


 逆にこの二つがあれば、何をやっても成長する事は無いというのだ。



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