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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯3 悪魔の血脈、覚醒
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 鎖迅が瞬時に後ろへと回り込んだのは考えにくい。なんぜならば、眼前には後ろにいた筈のラストラッシュが立っているのだから。そもそも、ラストラッシュと鎖迅の位置が逆になっているのだ。これにはトリックを感じざる終えない。



「何がどうなっているんだ、こいつは」



 頭の中が真っ白だ。これは別に眠たくてこうなっているという訳では無い。目の前で起きた現象がさっぱり分からずに白旗を上げているという事である。いくら考えようが、明白な答えなど出る筈も無い。


 なぜならば、旺伝の知識力はたかが知れている。むしろ、17歳という若さで知識力が豊富な男子の方がよっぽど希少価値が高い、



「君みたいな傀儡には理解出来ないだろうな。俺のパーフェクトマジックは」



「言ってくれるじゃねーか。後悔するなよ」



 旺伝が後ろを振り向き、再び引き金を引こうと瞬間、真夜中の静けさをかき消す一つの音が響いた。それは後方から聞こえてくる音で、明らかに扉を開ける音だった。なぜ旺伝がその音を聞き分けられたというと、聞き覚えがあるからだ。


 記憶の中に存在するラストラッシュとの会話。嫌、会話を交わす以前にこの音を聞いた。


 そうだ。


 あれは社長室の扉を開けた時の音に良く似ている。というより、そっくりだ。


 その音と共に旺伝は体の方向を反転させて、音の正体を確かめた。すると、やはり音の正体は扉を開ける音であり、中から一人の老人が現れた。老人はライダーの服に身を包んで、カーボーイハットを被っている。老人にしてはやけにナウいファッションである。



「こんな真夜中に派手してるのは、何処のどいつだ……睡眠の妨げになるじゃねえか」



 そう言って、後頭部を掻きながら、欠伸をしている。彼こそがこの級帝曇叡神殿の主にして、足若丸魔法学校の理事長である事を知るには左程時間は掛からなかった。


 なんせ、彼の外見は何度も見た事がある。テレビのニュース番組は勿論、雑誌にコラムを載せている程の有名人だ。彼はもっぱら未成年と魔法の有り方について研究しており、独自の理念をメディア発信している。



「十文字様!」



 先程の少年も我を忘れて理事長の元に駆け寄った。十文字は老人だというのに背が高くて、旺伝と同じぐらいの背丈を誇る。それに比べ、鎖迅の身長は中学生でしかなく、自然と上目使いになってしまっているではないか。



「鎖迅よ。お客様のもてなし方が随分と荒いようじゃないか。ワシは以前にも教えた筈だぞ。たとえ見ず知らずの相手がこの神殿の扉を叩こうとも、紳士的な態度で接しろと」



 それが礼儀だと言うのだ。どうやらこの老人は話しが通じるようで、何処かしら良い人の雰囲気を醸し出している。


 これならイケる。


 そう思った旺伝は、理事長の元に近づいて、訳を話す。



「夜分遅くに済まない。出来上がった剣を取りに来たんだが」



「これはこれは、そうとも知らずに馬鹿弟子がでしゃばった真似をして申し訳ありません……その変わりと言ってはなんですが、この老人めが鍛冶屋の元まで御案内して差し上げましょう」



 まるでラストラッシュを彷彿とさせる物腰の柔らかさだ。さっき相手にした鎖迅とは大違いである。これにはさすがの旺伝もたちまち魅了されてしまった。魅了と言っても性的な意味では無く、人間的に憧れの感情を抱いたという意味だ。



「わざわざあんたが案内してくれるというのか。それはありがたい申し出だ」



 旺伝はそう言って、十文字の申し出を受け入れたのだった。




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