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絶対血戦区域  作者: 千路文也
1st ♯1 山羊頭の男
10/221

010


 花火大会はやはりいいものだ。普段、何げなく食べているものが、御馳走に変わるのだから。そう、一本の焼き鳥でさえ、御馳走になるのが祭りの効果だった。三人はそれぞれが注文した焼き鳥を口いっぱいに頬張っていた。そして、旺伝と友奈の二人は片手にコーラを持っていたが、ラストラッシュは片手にビールを持っているのだ。


 カシュという音を立てると、ビールの泡が溢れたので、ラストラッシュは急いで口につけて、ビールをグビグビと飲んでいる。焼き鳥をつまみにして。


「やっぱり、美味しいのか?」


 旺伝は隣のラストラッシュに話しかけた。すると、奴は満面の笑みでこちらに振り向いてきた。もうそれで答えが分かる。


「はい。相当美味しいです」


 相当だ。相当美味しいと言っていた。


「やっぱりビールと焼き鳥は合うのですね!」


 ここで、友奈が話しかけた。


「勿論ですよ。さっきも言いましたが、やはりビールには焼き鳥が欠かせません」


「なあなあ。思ったんだけど、お前って何歳なんだよ」


 旺伝がふと疑問に感じたので、尋ねた。すると、ラストラッシュはこう言うのだった。


「二十歳です。趣味は利き酒」


 ラストラッシュは、酒の品質を調べる利き酒を趣味としていた。


「二十歳か。ま、そんな感じだよな」


 納得したようだ。


「でも、二十歳でビールと焼き鳥の美味しさを知ってるだなんて、凄いですね」


 と、友奈は褒めていた。


「ありがとうございます」


 形式上か本心かどうかは知らないが、とにかくラストラッシュは「ありがとう」の言葉を口にしていた。この言葉は友達関係にも職場関係にも重要な一言だ。言って損は無い。


「さて、今度は何食べようかな」


 友奈はウキウキしている。それだけ食に関して敏感なのだろう。


「友奈さんは今時の女子って感じですね」


「そうですか!」


「そうですよ。ええ、そうですとも」


 そうだと言っている。余程、そうなのだろう。


「そうだな。花火大会まで時間はたっぷりあるし、もっと食べ歩きするか」


 旺伝は友奈の提案に賛成のようだ。もっと食べたいと思っている。後は、ラストラッシュだけだが、この男も同じ意見であることは間違いないだろう。なぜなら、食は人を虜にするからだ。三大欲求に勝てるものなど誰一人としていない。


「そうですね。私も日本の食文化を食べ尽くしたいです」


 一人だけスケールが違っていたが、取り敢えず三人とも食べ歩きを続ける意志はあるようだ。三人は同時に顔を見合わせて、ニッと笑った。そして、次の出店を見つけたのだった。


「見て見て。フライドポテト!」


 次の出店はフライドポテトを作っていた。看板には色々な種類の味があるのだ。定番の塩味からブラックペパー、などのシーズニングを入れて、袋を振るという方法で造られていた。


「俺は辛いのが苦手だから塩にするとしよう」


 旺伝は即決で決めた。


「私も塩にしようっと。やっぱり定番が一番美味しそう」


 友奈も塩味を頼むようだ。


「では、私はブラックペパーにしましょう」


「ええ。絶対辛いぞ」


 旺伝は、辛い物が苦手なので、想像するだけで顔をしかめてしまう。


「私は辛いの大丈夫ですよ」


 大丈夫だと言っている。


「そうか。だったら頼むぞ」


 ここは、旺伝が代表して皆のフライドポテトを注文した。そして、三人分のお金を店員に払うのだ。店員から物々交換の形で商品を受け取った旺伝は、二人にフライドポテトを渡した。


「友奈が塩味。ラストラッシュがブラックペパーだな?」


「うん」


「はい」


 二人は頷いてフライドポテトを受け取った。そして、今度も歩きながら、フライドポテトを食している。三人とも幸せそうな顔で。


「美味い! 美味いぞ!」


 旺伝はテンションを上げて貪りついていた。


「んんんん、塩味最高!」


 友奈も可愛らしい声で、言っていた。


「私のブラックペパー味も美味です」


「へえ。でも、辛いの何がいいんだ?」


 旺伝は尋ねた。


「この刺激がいいのです」


 と、ラストラッシュは言った。


「辛いもの好きはみんなそういうよな」


「事実ですから仕方ないでしょう」


「ラストラッシュさんはインド人だから辛さに慣れてるんでしょうね」


「そうですね。カレーの香辛料は多めにいれてもらってます」


 やはりそうだったらしい。インドではカレーが国民食のため、自ずと辛い物が好きになるらしい。







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