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その嘘、買い取らせていただきます

掲載日:2026/07/03

短編です

 高校の頃の同級生が結婚した。式の招待状には、俺の親友とあの頃ずっと好きだったユミちゃんの名前が書かれていた。

「あぁ、あいつら結婚したんだ」

 正直、式に行きたいとは思っていなかった。でも親友には久しぶりに会いたかったし、休みだって取ろうと思えばとれる。カレンダーを見ると、何の予定も入っていない。つまり断る理由がない。結局、出席に〇をつけた。

 式の前日、ご祝儀を準備していないことに気が付いた。慌てて銀行に向かったけど、夜だったからATMも閉まっていて焦った俺はどうにかお金を工面できないかと周囲を見渡した。

銀行の隣に【買取店】という文字が見えて、どんなものを買い取ってくれるのかだけでも分かれば、と藁にもすがる想いで駆け込んでみた。

「当店では、過去に“ついたことのある嘘”を買い取っています。ただし、買取が成立いたしますと、その嘘は事実に変わります。ご注意ください」

 店主の説明はよくわからなかったけど、モノじゃなくて“嘘”を査定して買い取ってくれるらしい。

「それでは、あなたの嘘を教えてください」

 スーツ姿に張り付いたような笑顔の店主にそう言われ、俺は高校生の頃についた嘘についてを語りだした。

 高校生の頃、隣の席になったユミちゃん。可愛くて、優しくて、俺は簡単に恋に落ちた。でも俺の親友も、ユミちゃんを好きだと言った。

小学生から偶然にも同じ学校に通う腐れ縁とまで言うべき親友は、一途で真面目な奴で、適当な付き合いをしたくないからと、ユミちゃん以外から告白されても断るくらい、真面目な奴だった。俺はそんな親友も大好きだった。

大好きな親友はユミちゃんが好きで、ユミちゃんもどうやら親友の事が気になっているみたいで、察しの良い俺は「え~!お前ユミちゃん好きなの!?どうせうまくいかないんだから告白してスッキリすればいいじゃねぇか!俺はユミちゃんの事は好きじゃないし!うまくいかなくても慰めてやるよ!」と背中を押したんだ。自分の恋心を懸命に隠すために余裕のあるふりをしたんだ。

結局あいつとユミちゃんは付き合って、今や結婚式に俺を呼ぶまでになった。本当に一途な奴だなぁ・・・。

 思い出してみると、俺って、結構いい奴じゃね?

「良い思い出ですね」

 店主は俺の話に横やりを入れることなく、そう言ってくれた。

「ありがとうございます・・・」

 店主は何やらパソコンを操作した後、査定が終了しましたと言って、俺に3万円を差し出してきた。

「注意点をもう一度お話しておきます。このお金をあなたが受け取ることによって買取が確定しますと、嘘が本当に変わります。あなたの言ったことが嘘だったということになりますが、よろしいですか?」

「・・・あぁ、構わない」

「承知いたしました。事実改変には多少のお時間をいただきますので、ご了承ください」

 機械的にそう言いながら、レジを操作して買取証明書を出してくれた。しかも三万円は新札にしてくれた。有難い。店の評価☆5つ付けちゃおうかな。

 翌日、目を覚ますと、今日の予定が無くなっていた。



——・・・アレ?——

なんで財布に3万入ってんだ?

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