見落としは誰にでもある2
地下二階に進んで、レンは属性魔法を試しながら進んだ。
ウォータースライムが前方に二体。
「水が有効でしたっけ、スライムには」
【賢神ソフィア】:水属性のスライムに水は意味がない。火か雷を使え
【mukai_b_rank】:ソフィアさんの判断が速い
「じゃあ火で」
右手に火を集める。
雷より集まるのが少し遅い。まだ慣れていない。
五秒ほどかけて、放つ。
スライムに直撃して、弾けるように消えた。
「お、有効だ」
【精霊王シルフィード】:やった!!
【新規さん】:火魔法の初使用
【mukai_b_rank】:初使用でそのクオリティか……
もう一体に向かってレンが踏み込んだとき、横からサクラの声が来た。
「レンさん、左後ろ」
振り返ると、もう一体のスライムが壁の陰から来ていた。
「いたんですね」
「さっきから気配がおかしかったので」
レンは雷を集めて、すかさず仕留めた。
三体、撃破。
【古代龍バハムート】:サクラ、良い察知だ
【mukai_b_rank】:後衛からあの位置を把握してたのか
【探索者見習い_ハル】:サクラさんの目、どんどん鋭くなってますよね
【ダンジョンオタク_ケイ】:レンさんとサクラさん、連携が先週より格段に上がってる
「サクラさん、助かりました」
「三属性使えるなら、マッチアップも楽になりますよね」
「そうですね。使いこなせるかどうかですけど」
「練習しましょう。一緒に」
【精霊王シルフィード】:二人とも!!!!えへへ!!
【新規さん】:シルフィードさんがえへへし続けてる
【mukai_b_rank】:シルフィードさんの「えへへ」って毎回何なんですか
【ダンジョンオタク_ケイ】:誰も分からないんですよ
【mukai_b_rank】:そういうものか
◆
地下三階に降りて、アイアンウルフの群れに遭遇した。
数は四体。
「属性、使い分けてみます」
【賢神ソフィア】:アイアンウルフには雷が有効だ。ただし複数を同時に狙おうとするな。一体ずつ確実に仕留めろ
【mukai_b_rank】:ソフィアさんの解説、毎回教科書より分かりやすいんですよね
【賢神ソフィア】:一万年分の知識だ
【mukai_b_rank】:一万年か……(ロールプレイなんだよな、たぶん)
レンは先頭の一体に雷を集めて放った。
よろめいた隙に踏み込んで仕留める。
残り三体が反応した。
「二体こっちへ来ます。一体が左から回ろうとしてる」
「分かりました」
レンは正面の二体に雷を放って動きを止める。
左の一体には水を集めて叩きつけた。
水属性のアイアンウルフへの効果は薄いが、視界を塞ぐには十分だった。
怯んだ隙に剣を入れる。
残り二体を剣で処理した。
四体、撃破。
沈黙。
【mukai_b_rank】:雷と水を使い分けながら戦ってた今
【mukai_b_rank】:しかも初日で
【kirishima_arisa】:(雷・水・火の三属性を状況で使い分ける。これBクラスでも難しいんですが)
【ダンジョンオタク_ケイ】:アリサさんの括弧書きの温度が高い件
【kirishima_arisa】:すみません動揺してました
【新規さん】:アリサさんが動揺するレベルのことが起きてた
【古代龍バハムート】:まだ荒削りだ。だが筋はいい
【雷神トール】:加護が馴染んでいる。早い
【精霊王シルフィード】:レンくんすごい!!!シルフィードのプレゼント大活躍!!!!
「シルフィードさん、本当にありがとうございました」
【精霊王シルフィード】:えへへ!!またあげる!!
【古代龍バハムート】:調子に乗るな
【精霊王シルフィード】:えー
サクラが横で小さく笑っていた。
「どうしましたか」
「シルフィードさんとバハムートさんのやり取り、好きで」
「確かに」
「なんか……家族みたいですよね、コメ欄の皆さん」
【新規さん】:サクラさんいいこと言った
【mukai_b_rank】:確かに、そんな雰囲気ある
【魔王ゼルディア】:家族、か
【古代龍バハムート】:……そういう見方もあるか
【精霊王シルフィード】:えへへ!!家族!!
【死神ネクロス】:悪くない表現だ
【戦神アレス】:……まあ、そうかもしれない
【賢神ソフィア】:そうだな
レンはコメ欄を見た。
(家族、か)
なんかしっくりくる気がした。
「確かに、そうかもしれないですね」
【精霊王シルフィード】:!!!!!!!!
【新規さん】:レンくんが肯定した
【新規さん】:コメ欄が沸いてる
◆
探索を終えて地上に出ると、夕方になっていた。
二人で並んで歩きながら、サクラが言った。
「今日、三属性全部使いましたね」
「シルフィードさんのおかげです」
「でも出せるのはレンさんだから」
「まだ全然使いこなせてないですけど」
「練習しましょう、一緒に」
「はい」
少し間があって、サクラが続けた。
「レンさんって、どんどん強くなってますよね」
「そうですか」
「そうですよ。最初に会ったときと全然違う」
「最初に会ったとき、僕がサクラさんを助けた時のことですよね」
「はい。あのとき、すごく頼もしくて」
サクラは少し前を向いた。
「私も、レンさんに頼もしいって思ってもらえるようになりたいです」
「もうなってますよ」
「まだまだです」
「今日の壁際の察知、なってましたよ」
サクラは少し黙ってから、小さく笑った。
「……ありがとうございます」
◆
配信終了。
レンはログを確認してから、スパチャの画面を開いた。
今日のスパチャが一件来ていた。
【精霊王シルフィード】¥100 「火と水、ちゃんと読んでね!!」
「はい‥ちゃんと読みます」
レンは一人でそう言って、スマホをしまった。




