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同接0人のEランク探索者ダンジョン配信、なぜか神様や魔王様が見ている件 〜コメント欄が古代龍や魔王とかなんだが〜  作者: 仁科異邦


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桜木の下で2

 夕暮れが近づき、西の空が少しずつ柔らかなオレンジ色に染まり始めていた。


 夕日を透かした桜の花びらは、昼間とは違う、どこか儚げな淡いピンク色に輝いている。


「きれいですね」

 サクラが桜の木を見上げて、ほうと息をつく。


「また来年も、みんなで来ましょう」とアリサが微笑んだ。


「来ましょう」とサクラが頷く。

「来ます」とレンが続く。

「来ますよ、絶対」とユイも同意した。


「……来るかもな」

 一拍遅れて、田中係長がぽつりと言った。

「来るかもって何ですか、係長さん」

「いや、来る。来る」


「もう、最初から素直にそう言ってくださいよ」

 レンのツッコミに、田中係長が珍しく、ふっと小さく吹き出した。



 ブルーシートを片付け、ゴミをまとめながら、アリサがレンに声をかけた。

「今日、すごく楽しかったですよ」

「僕もです」


「こういう日が、たまにあるといいですね」

「そうですね」

 レンが頷くと、アリサは少しだけ口ごもった。


「……これからもよろしくお願いします。探索者として、というより、なんか」

「なんか、ですか」

「友達として、というか」


 アリサが照れ隠しのように目を逸らす。

「こういう集まりの、仲間として」

 レンは手元の荷物を持ち上げ、少し考えてからまっすぐ答えた。


「こちらこそ、よろしくお願いします」

「私も、よろしくお願いします。あ、全員にです」

 サクラが空になった巨大なタッパーを抱えながら言った。

「よろしく」とユイが短く応じる。

「まあ、よろしく頼む」と田中係長が首を鳴らした。

 五人は連れ立って、賑わいの残る公園を後にした。

 夕暮れの代々木公園では、まだ満開の桜が風に揺れていた。


 その夜。

 異世界のどこかの神々が集う空間で精霊王シルフィードが、宙を舞いながらはしゃいだ声を上げていた。


「みんなでご飯食べてた!!桜の下で!!」

「花見というやつだな」と竜王バハムートが、静かに言った。

「人間界の春の行事だ」と、賢神ソフィアが補足する。「桜の花が散る前に、その下で宴を開くらしい」


「良い文化だな」と魔王ゼルディアが言った。


「楽しそうでした。食べ物もいっぱいあって」

「サクラという娘が作りすぎていたな」とバハムートが言う。


「から揚げおいしそうでしたよね」

「見ているだけだが」

「でもおいしそうだった」

 しばらく全員が黙った。


 トールが腕を組んで言った。

「……我々もやってみるか」

「え?」

「花見だ。あちらに合わせて」

 ゼルディアが少し笑った。


「異世界にも花が咲く木はあるだろう」

「あるある!!」とシルフィードが飛び上がった。「大きな白い花が咲く木が近くにあります!!」

「じゃあそこで」と雷神トールが言った。


「食べ物はどうする」と魔王ゼルディアが言う。

「私が用意する」と賢神ソフィアが静かに言った。

「ソフィアさんが!?」

「一万年生きていれば料理の一つや二つできる」

「食べたい!!」


 バハムートが少し間を置いた。

「……シートはどうする」

「シート?」

「あちらでは青いシートを敷いていた」

「バハムートさん、細かいところ気にしてる!!」とシルフィードが笑った。


「雰囲気が大事だろう」

「大事です!!じゃあ私が用意します!!どこにあるかな!!」

 死神ネクロスが静かに言った。


「……私も行っていいか?」

「もちろんです!!」

「死神が花見に来るのか」と魔王ゼルディアが笑う。

「悪いか?」

「いいや、悪くない」

 戦神アレスが腕を組んで言った。

「花見とはどういうものだ。宴なのか、戦なのか」


「宴ですよ!!」

「では私は馴染めるか?!」

「大丈夫です!!アレスさんは食べてればいいです!!」


「食べるだけか」

「食べながら語らうんです!!」

「食べて語らうのか。それならできる」


 異世界の、巨大な白い花が咲き誇る巨木の下。

 バハムートがどこからか調達してきた巨大な布を広げた。


 シルフィードが果実を並べ、ソフィアが手作りの豪勢な料理を運んでくる。

 トールが神酒を用意し、ネクロスが静かに布の端っこに座った。


 アレスは腕を組み、桜ならぬ白い花を険しい顔で見上げている。

「……悪くないな」

「でしょう!!」とシルフィードが胸を張る。


 バハムートは、白い花が風に揺れるのを静かに眺めていた。

 花びらがふわりと舞い落ちる。

 あちらの桜とは少し違う。

 だが、どこか似ている。

「レンたちは、どうしていたか」とゼルディアが杯を傾けながら言った。

「来年も来ようと、約束していた」とソフィアが答える。


「そうか」

「良い仲間ができたな、あいつにも」

「ああ」

 バハムートは短く同意した。

 全員が自然と、布の上で輪になって座った。


「……『いただきます』でいいのか」とアレスが周囲を見回す。

「そうです!!」

「では、いただきます」

 全員がそれぞれのやり方で、食事を始めた。


 ネクロスが、しみじみと呟いた。

「……悪くない時間だ」

「でしょう!!」

「仕事じゃない時間というものは、久しぶりだ」

「いつも仕事してるんですか?」


「魂の回収で忙しい」

「大変ですね」

「まあな」

 ネクロスはフードの奥から少しだけ空を見上げた。


「だが、今日は仕事のことを考えなくていい」

「よかったです!!」

 トールが豪快に酒を飲み干して言った。

「来年もやるか、これ」

「やりましょう!!!!」とシルフィードが即答する。


「賛成だ」とゼルディア。

「悪くない」とバハムート。

「私も付き合おう」とソフィア。

「来るか……」とアレスが少し照れたように顎を引いた。


「仕事がなければ来る」とネクロスが言った。

「そこは『絶対来る』と言えよ」とゼルディアが笑う。

「……仕事の予定は、入れないように努力する」

「それが前向きでいいです!!」とシルフィードが笑った。


 白い花びらが舞い散る。

 バハムートはそれを見つめながら、少しだけ目を細めた。

(レンたちも、こんな穏やかな時間を過ごしていたのか)

 悪くなかった。

 彼もまた、ただそれだけを思った。



 その頃、代々木公園から帰宅したレンは、一人きりの自室で今日の一日を思い返していた。


 満開の桜、おいしいご飯、みんなの笑った顔。

 ……なんか、いい一日だったな。

 ベッドに寝転がりながらスマホを開くと、アリサからメッセージが届いていた。


『今日、すごく楽しかったです。また来年』

『来年もよろしくお願いします』と返す。

 サクラからも来ている。


『から揚げ、喜んでもらえてよかったです。来年はもっと作りますね!』

『今日ので十分でしたよ』

『足りないよりいいんです!』


『じゃあ、来年もお願いします』

 ユイからもメッセージがあった。

『桜餅、好評でよかったです。来年も人数を計算して持っていきます』


『ありがとうございます。また来年』

 最後に、田中係長から。

『来年もコンビニスイーツ持っていく』

『ありがとうございます』

『ショートケーキが一番人気だったな。来年はそれを多めに買うか』


『係長さん、ちゃんとメモしてたんですか?』

『してない。覚えてただけだ』

 レンは画面を見て、ふっと声を上げて笑った。

(みんな、もう来年のこと考えてるんだな)


 当たり前のようでいて、決して当たり前じゃない。

 来年も、このメンバーで花見ができる。

 それだけで、胸の奥が温かくなるような気がした。


 ふと窓の外に目をやると、街灯に照らされた桜の木が見えた。


 夜の桜は、昼の喧騒が嘘のように静かで、とてもきれいだった。


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― 新着の感想 ―
配信してない間視聴者の皆さんちゃんと仕事してるんだな… わざわざレンの配信に間に合うようスケジュール調整してるんだろうか? にしても神様ズの物言い比喩じゃなくレンがほんとの家族みたいな言い様デスネ
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