Dランク昇格試験1
朝、協会から一通のメールが届いた。
件名:【探索者ランクアップ審査のご案内】
「……ランクアップ?」
レンはベッドの上で画面を見つめた。
内容を読む。
要約すると、こうだ。
渋谷第三ダンジョンでの実績が一定基準を超えた。
Cランクボスの単独討伐、隠し通路の発見、新エリアの踏破、その他複数の功績。
協会としてDランクへの昇格審査を推薦する。審査は筆記と実技の二部構成。実技は模擬戦形式。
「模擬戦……」
レンはしばらく画面を見てから、スマホを置いた。
(受けていいのかな、これ)
Eクラスの初級剣士だ。ランクが上がったとしても、クラスは変わらない。
でも、まあ。
(推薦してくれるなら)
レンは返信した。
「受けます」
◆
配信を開始すると、いつも通り全員が集まった。
「今日は報告があります。協会からランクアップ審査の案内が来ました」
【精霊王シルフィード】:えっ!!!ランクアップ!!?
【ダンジョンオタク_ケイ】:来ましたか!実績は十分すぎるくらいでしたもんね
【kirishima_arisa】:おめでとうございます。当然の推薦だと思います
【新規さん】:Eから何に上がるんですか
「Dランクへの審査です。筆記と模擬戦があるそうで」
【新規さん】:模擬戦!?
【新規さん】:誰と戦うんですか
【戦神アレス】:誰だ
「Bランクの探索者の方とやるそうです」
【新規さん】:Bランク!?
【新規さん】:EとBって差がありすぎない?
【ダンジョンオタク_ケイ】:ランクアップ試験の模擬戦って相手がかなり上なんですよ。勝つ必要はなくて、どれだけ善戦できるかを見る形式で
【探索者見習い_ハル】:へえ、そうなんですね
【kirishima_arisa】:神代くんなら大丈夫だと思います。相手が誰かにもよりますが
【古代龍バハムート】:やれる
【雷神トール】:問題ない
「お二人が言うと根拠はないのに自信が出てくるのなんなんでしょうね」
【新規さん】:分かる笑
【新規さん】:バハムートさんとトールさんが言うと安心する
【魔王ゼルディア】:私が言っても同じだが
【新規さん】:ゼルディアさんは「暇だからな」のイメージが強くて
【魔王ゼルディア】:……それはもういい
◆
審査当日。
協会の訓練棟、模擬戦用の広いフロアだ。
壁に沿って観覧席がある。今日は協会の職員が数人と、なぜかアリサがいた。
「霧島さん、来てたんですか」
「気になったので」
アリサが当然のように言った。
「あとコメ欄の皆さんにも見せてあげたくて」
レンは配信端末を確認した。
今日も一応配信している。
同時接続数は開始十分で一万二千を超えていた。
【精霊王シルフィード】:緊張する!!!
【ダンジョンオタク_ケイ】:試験の配信は初めてですね
【新規さん】:同接えぐい増えてる
【新規さん】:アリサさんが「見てきます」ってSNSに書いたせいだ
【kirishima_arisa】:すみません余計なことしました
【新規さん】:いや助かります
「今日もよろしくお願いします」
【古代龍バハムート】:落ち着け。いつも通りにやれ
【魔王ゼルディア】:見ている
【雷神トール】:行け
そこへ、相手が入ってきた。
三十代くらいの男性。体格がいい。
装備はシンプルだが、纏っている空気が重い。
田中係長が紹介した。
「Bランク探索者、向井さんだ。今日の審査官も兼ねてもらってる」
「向井です。よろしく」
向井はレンを一瞥して、少し首を傾げた。
「……細いな。本当にCランクボスを倒したのか」
「はい。一応」
「一応、か」
向井は少し笑った。
「まあいい。ルールを説明する。制限時間は五分。降参か戦闘不能で終了。魔法は使用可だが致死攻撃は禁止。俺がこいつは合格だと思ったらその時点で終わり。質問は?」
「ないです」
「じゃあ始めよう」




