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同接0人のEランク探索者ダンジョン配信、なぜか神様や魔王様が見ている件 〜コメント欄が古代龍や魔王とかなんだが〜  作者: 仁科異邦


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初めてのパーティでの探索

 渋谷第三ダンジョンの入口前。

 レンとサクラは並んで立っていた。

 朝の空気はまだ冷たい。サクラは荷物を背負い直しながら、入口をじっと見ていた。

「……緊張してます」

「僕もです」

「えっ、レンさんも緊張するんですか」

「一人じゃないのが初めてなんで」

 サクラは少し意外そうな顔をした。それから、小さく笑った。


「なんか、それ聞いたら少し楽になりました」

「じゃあ行きましょうか」

「はい」

 レンが配信を開始すると、コメ欄がすぐに動き出した。


【古代龍バハムート】が入室しました

【魔王ゼルディア】が入室しました

【精霊王シルフィード】が入室しました

【戦神アレス】が入室しました

【死神ネクロス】が入室しました

【賢神ソフィア】が入室しました

【雷神トール】が入室しました

【kirishima_arisa】が入室しました

【ダンジョンオタク_ケイ】が入室しました

【探索者見習い_ハル】が入室しました


【精霊王シルフィード】:今日初パーティ回!!楽しみすぎた!!

【ダンジョンオタク_ケイ】:ずっと待ってました

【kirishima_arisa】:二人とも気をつけて。無理しないで

【古代龍バハムート】:サクラ


「は、はい!」

 サクラが画面の方を向いて、思わず返事をした。


【古代龍バハムート】:緊張しているか


「してます」


【古代龍バハムート】:それでいい。前はレンに任せろ。お前は後ろだけ見ていろ


「後ろだけ……分かりました」


【新規さん】:バハムートさんの第一声がサクラさんへの指示だった

【新規さん】:なんか保護者みたい

【古代龍バハムート】:違う


「行きます」

「はい」

 二人は中に入った。



 最初の魔物はゴブリン二体だった。

 レンが前に出る。剣を構えて、一体に踏み込んだ。


 一合、二合。

 いつも通りだ。

 ……のはずだった。

 後ろで足音がした。

 サクラが無意識に前に出ていた。

「あ」

 サクラが気づいて止まる。

 その一瞬の隙にゴブリンが横に回った。


「っ」

 レンがなんとか対処して、二体を仕留める。

 終わってから、二人とも少し固まった。

「す、すみません。つい前に」

「いえ、大丈夫です。ただ後ろにいてください」

「分かりました……本当にすみません」

「気にしないで」


【魔王ゼルディア】:連携は慣れが必要だ。最初はそんなものだ

【探索者見習い_ハル】:二人とも焦らずで大丈夫ですよ

【新規さん】:初パーティあるある

【精霊王シルフィード】:サクラちゃん大丈夫!!


「頑張ります」

 サクラが小さく呟いた。

 次はスライム三体。

 レンが一体を処理した瞬間、残りが左右に散った。


「サクラさん、左が来ます」

「え、あ、どうすれば」

「壁際に」

「ど、どっちの壁ですか」

「右の壁です」

「右ですね、はい、右っ」

 サクラが右に動く。スライムが追う。レンが右を仕留めてすぐ左に向き直る。

 全部で十秒の出来事だったが、なんとなく慌ただしかった。


【新規さん】:「どっちの壁ですか」が初パーティって感じがして好き

【新規さん】:テンポが噛み合ってないけど二人ともちゃんとやってる

【魔王ゼルディア】:それが今日の課題だな

【精霊王シルフィード】:でも二人とも冷静だよ!えらい!


「お互い、声かけが多すぎましたね」

「あの……右の壁って言ってくれたのに、私が聞き返して」

「僕も咄嗟に短く言いすぎました。もう少し丁寧に言います」

「いえ、私がすぐ動けなかっただけで」



【ダンジョンオタク_ケイ】:でもかけ合いができてるのはいいと思います

【賢神ソフィア】:サクラ、スライムが来たとき右手に光が集まっていた


「えっ、そうでしたか」

 サクラが自分の右手を見た。


【賢神ソフィア】:無意識に回復魔法を準備していた。咄嗟にそれができるのは悪くない


「でも使う前に終わってしまいましたが……」


【賢神ソフィア】:準備ができていたことが大事だ。自分では気づいていなかっただろう


「……全然気づいてませんでした」

 サクラはもう一度右手を見た。

 さっきの感覚を思い出すように、じっと見ていた。


【新規さん】:ソフィアさんがちゃんと見てる

【新規さん】:本人が気づいてないことまで


 地下二階に降りると、通路が少し狭くなった。

 レンが前を歩き、サクラが後ろについている。


 アイアンウルフが一体、前方から来た。

「来ます。後ろで待機してください」

「はい」

 レンが踏み込んだ。

 雷を集めて、一撃で仕留める。

 振り返ると、サクラがきっちり三メートル後ろで立っていた。

「完璧な位置取りです」

「距離、合ってましたか。さっきバハムートさんに三メートルって言われたので」

「ちゃんと覚えてたんですね」

「メモしました」

 サクラがポケットから小さなメモを出して見せた。


 ダンジョンの中でメモを取っていたらしい。

「……真面目だな」

「えっ、変でしたか」

「いや、いいと思います」


【新規さん】:ダンジョンの中でメモ取るサクラさん好き

【ダンジョンオタク_ケイ】:几帳面なんですね

【古代龍バハムート】:サクラ、メモを取ることは悪くない。だが体で覚えることの方が急な展開の時に役立つ


「体で、ですか」


【古代龍バハムート】:後衛は前衛の動きを見続けろ。それが一番だ。


「……レンさんの動きを、ですか」


【古代龍バハムート】:そうだ


「分かりました。見ます」


【新規さん】:サクラさんがレンさんをガン見することになった


「そういう意味で言ったんですが、言い方が難しいですね」

 サクラが少し赤くなりながら言った。


【精霊王シルフィード】:えへへ


「シルフィードさん何がえへへなんですか」


【精霊王シルフィード】:えへへ

【魔王ゼルディア】:気にするな


「僕も分からないんですよ、たまにああなるの」

「どういうことですか」

「分からないです」

 サクラはしばらく首を傾げてから、諦めたように前を向いた。



 ゴブリン四体の群れに差し掛かったところで、レンは立ち止まった。

「多いですね。どうしますかね」

 考えながら独り言を言うと、サクラが横から覗き込んだ。


「あの、左端の一体、他の三体から少し離れてますよね」

「あ、本当だ」

「あそこから一体ずつ引き離せそうじゃないですか」


【古代龍バハムート】:正しい見立てだ

【賢神ソフィア】:後衛から全体が見えている。前衛より視野が広い


「じゃあ左から行きます。サクラさん、右の三体が動いたら教えてください」

「分かりました」

 レンが左端のゴブリンに向かう。

 一体を静かに引き離して、仕留める。


「右の三体、まだ気づいてないみたいです」

「ありがとうございます。次、左から二番目に行きます」

「はい、見てます」

 二体目を仕留えた瞬間、残りが気づいた。

「来ます、右に二体」

「分かりました」

 レンが振り返りながら雷を集める。

 二体が間合いに入った瞬間、一気に放った。

 四体、全て撃破した。


 終わってから、二人で顔を見合わせた。

「……さっきより全然スムーズでしたね」

「サクラさんのアドバイスのおかげです」

「アドバイスってほどじゃないですけど」

「十分実況でした」


【ダンジョンオタク_ケイ】:さっきより声かけのテンポが全然違う

【探索者見習い_ハル】:噛み合ってきた!

【新規さん】:同接四千超えた

【新規さん】:みんな見てる

【kirishima_arisa】:サクラさんの全体把握が的確です。後衛向きの目を持ってますね

【賢神ソフィア】:前衛の視野外を補完する。それが後衛の本質だ

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