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同接0人のEランク探索者ダンジョン配信、なぜか神様や魔王様が見ている件 〜コメント欄が古代龍や魔王とかなんだが〜  作者: 仁科異邦


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ボス戦に向けての準備 2


 ボス戦に挑むための準備期間初日、

 レンはダンジョンに入らず、協会の訓練場を借りた。


 まず雷魔法の練習だ。

 的に向かって放つ、集中する、放つ。それを繰り返す。

 一応配信はしている。


【古代龍バハムート】が入室しました

【魔王ゼルディア】が入室しました

【精霊王シルフィード】が入室しました


「今日は訓練場です。ダンジョン行きません、楽しみにしていた人すいません。」


【精霊王シルフィード】:えらい!!

【魔王ゼルディア】:真面目だな

【古代龍バハムート】:的に向かって撃つな。動く的を想定しろ


「動く的ってどうやって」


【古代龍バハムート】:頭の中でイメージするんだ


「……やってみます」

 目を閉じる。

 アーマーベアが動くイメージ。左に、右に。

 目を開けて、放つ。

 さっきより鋭い攻撃が走った。

「あ、なんか違う」


【古代龍バハムート】:それだ

【精霊王シルフィード】:すごい!!

【新規さん】:訓練配信でも見てしまう

【新規さん】:なんか一緒に特訓してる気分になるね

【魔王ゼルディア】:それが配信の力というものだ

【新規さん】:魔王さんが急に解説者になってる

【魔王ゼルディア】:まぁ、暇だからな

【新規さん】:出た、決めセリフ


 三時間、黙々と繰り返した。

 終わる頃には、雷の密度が朝より明らかに上がっていた。


【雷神トール】:合格だ


「トールさん!?いつの間にいたんですか」


【雷神トール】:実はずっといた

【新規さん】:ずっといたのに一言も言わなかったの笑う

【雷神トール】:邪魔をしたくなかったからな

【精霊王シルフィード】:トールさん優しいですねー。

【雷神トール】:だから違う



 準備期間、二日目。

 今日は装備の見直しだ。

 協会の装備売り場で、レンは棚を眺めていた。

「魔力強化の手袋……高いな」

 値札を見て、そっと戻した。


一応、今日も日常回として配信している。

【配信中】


【新規さん】:ちなみに何円だったんですか?


「三十万です、高すぎる」


【新規さん】:高いね

【魔王ゼルディア】:いや、スパチャが一千万あるだろう


「税金があるんですよ」


【魔王ゼルディア】:……そうか

【精霊王シルフィード】:税金って難しいね

【古代龍バハムート】:人間界は不便だな

【新規さん】:バハムートさんの人間界への解像度が低いねw

【新規さん】:急にロールプレイ勢っぽい発言きた


 結局、手袋より安い魔力伝導率の高いグローブを選んだ。

 八万円。

 レンは財布を見た。

「……まあいいか」


【新規さん】:思い切ったな

【kirishima_arisa】:それ私も使ってます。コスパいい選択ですよ!

【新規さん】:S級と同じ装備になった、なんか上がる

【古代龍バハムート】:道具より腕が大事だ

【kirishima_arisa】:それはそうなんですが道具も大事ですよ

【古代龍バハムート】:……そうだな

【新規さん】:S級にたしなめられてるバハムートさん


「バハムートさんとアリサさんの絡み、初めて見た」


【kirishima_arisa】:バハムートさんのこと、前から気になってたんですよ

【古代龍バハムート】:何がだ?

【kirishima_arisa】:アドバイスの精度が高すぎて‥どこかで探索者やってたんですか?


【古代龍バハムート】:いややっていない

【kirishima_arisa】:そうなんですか……(やっぱり何者なんだろう)

【新規さん】:アリサさんも括弧書き定着してるね



 準備期間、三日目。

 今日は地下一階と二階を軽く流して、体を慣らすだけの日だ。

 ダンジョンに入ると、空気が馴染む感じがした。

「うーんやっぱりダンジョン入ると落ち着く。変かな」


【精霊王シルフィード】:変じゃないよ!

【魔王ゼルディア】:探索者向きの性質だろう

【新規さん】:ダンジョンで落ち着くEランク()

【新規さん】:末恐ろしい

【古代龍バハムート】:当然だ

【賢神ソフィア】:体がダンジョンの魔力に馴染んでいる。良い兆候だ


 地下一階を軽く流す。

 ゴブリンを二体、スライムを三体。

 一週間前より確実に手応えが変わっている。

「なんか、楽に動ける気がする」


【古代龍バハムート】:成長しているな

【賢神ソフィア】:この三日で雷魔法の精度も上がった。準備は十分だ

【戦神アレス】:ようやくだ

【死神ネクロス】:明日か

【戦神アレス】:明日だな

【新規さん】:戦神と死神が珍しく息が合ってる

【新規さん】:ボス戦前夜感ある

【kirishima_arisa】:明日見届けます!

【精霊王シルフィード】:絶対来るよ!!わたしもいる!!


「みなさんがいてくれると心強いです」


【古代龍バハムート】:当然だ

【魔王ゼルディア】:まぁ、暇だからな


 地下二階まで確認して、今日は終わりにした。

 出口に向かいながら、レンは空を見上げた。

 夕方の渋谷。人が多い。

 ダンジョンの入口だけが、少し静かだ。

「明日、行ってきます」

 誰にともなく、そう言った。


【精霊王シルフィード】:うん!!いってらっしゃい!!

【古代龍バハムート】:行ってこい

【魔王ゼルディア】:待っている

【賢神ソフィア】:準備は十分だ

【雷神トール】:やれる

【戦神アレス】:勝て

【死神ネクロス】:今日は出番来なかったぞ

【kirishima_arisa】:頑張ってください。見てます

【新規さん】:頑張れ!!

【新規さん】:明日見る!!

【新規さん】:通知オンにした!!


 配信終了。

 登録者数:四百六十一人。

 明日の予告をSNSに上げると、三十分で三千リポストされた。


「……寝よう」

 レンは早めに布団に入った。

 緊張しているかと思ったら、思ったより眠れた。



 その夜、分析室。

 ユイは三日分のセンサーデータをまとめていた。

 数値がずらりと並ぶ。

「三日で雷魔法の精度が四十二パーセント上昇……」

 平均的な探索者の一ヶ月分の成長率を、三日で出している。

 ユイはペンを置いた。


「明日のボス戦、データどうなるんだろう」

 楽しみを通り越して、少し怖くなってきた。

 研究者として、の怖さだ。

 既存の理論が、また一つ崩れる予感がした。



 異世界のどこか。

 静かだった。

 バハムートが一人、目を閉じていた。

 しばらくして、ゼルディアが隣に来た。

「おや?眠れないのか」

「眠らない」

「まぁ同じだ、寝なくても良いからね」

 二人はしばらく黙っていた。


「あの人間、本当に普通じゃないな」とゼルディアが言った。

「ああ」

「気づいていないのか、本人が」

「気づいていないだろう」

「それが一番、不思議だ」

 バハムートは目を開けた。


「明日が楽しみだ」

 珍しく、素直にそう言った。


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