第24話 帰還
幹部会同刻———。
≪ギルド・ヨスガ≫の扉が、軋み音を鳴らしながらゆっくりと開かれた。
羽沢肇が肩で扉を押し開けると、薄暗い室内に、埃と油と古い木の匂いが、むわりと漂う。
昼だというのに窓は半分しか開いていない。
カウンターの奥には、いつもの大男がひとり。
ギルドマスター、アーガス=レイン。
肘をついたままうたた寝していたらしく、扉の音に片目だけを開けた。
「…………おう?」
最初に肇の顔を認めたとき、かすかにアーガスの口の端が上がる。
続いて、肇の後ろから、見慣れた二人と、見慣れない一人が顔をのぞかせた。
「ただいま戻りました。マスター」
「ただいまっス、マスター」
あらたまったような冗談めかした肇の声に続いて、アランがひょいと片手を上げる。
「戻りました、マスター。ただいまです」
リセルも、胸の前で手記を抱えたまま、小さく会釈した。
その二人の陰に隠れるように立つ女に、アーガスの視線が止まる。
艶のある黒く長い髪に、土汚れの目立つ白装束。
「……彼女は?」
その一言だけで、空気が少しだけ張り詰めた。
責める声色ではない。ただ、状況を測るための確認。
「高峰玲といいます」
高峰は一歩前に出ると、ぎこちない所作で両手を揃え、深く頭を下げた。
「……オルべ村の依頼は、“暴走した転生者の鎮静化”だったよな」
低く、乾いた声。
「その転生者ってのが、あんたのことだね?」
高峰は静かに頷く。
「村を荒らした張本人でもあって、村を立て直した張本人だ。……俺の判断で一緒に来てもらった。ヨスガの新しい仲間として」
肇は一拍置き、言葉を継いだ。
「高峰は……自分の意志で暴れたわけじゃない。洗脳みたいなもんで無理やり暴走させられてた。オルべ村の連中もそのことは理解してる。彼女を責めてる奴は一人もいない」
高峰の肩が、かすかに震えた。ただ、黙って前を見ている。
「だからと言って、やったことが消えるわけじゃないのは本人が一番わかってる。それでも――自分の罪を自分の手で償いたいと言うから、ここまで連れてきた」
肇はアーガスをまっすぐ見た。曇りのない澄み切った瞳。
「マスター。ヨスガの一員として、こいつを認めてやってくれませんか」
アーガスはしばらく何も言わず、カウンター越しに高峰と肇の顔を交互に見た。
やがて、深く息を吐き、頭をがしがしと掻く。
「……ったく」
ぶっきらぼうに吐き出された声とは裏腹に、その目つきは満更でもなさそうな穏やかな目をしていた。
「事情込みでここまで連れてきて、“仲間にしたい”っつってる奴の目がそれじゃあな。ギルドマスター一人だけ『ダメだ』って言い張ったら、そいつの器が知れるってもんだ」
大きな手が、ゆっくりとカウンターを叩く。
「ここを、帰ってくる場所のひとつだと思っていい。ようこそ、≪ギルド・ヨスガ≫へ。高峰玲」




