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第21話 魔王城のとある部屋にて

 魔王城の最奥、そのさらに一段下——。

 階段を数十段降りた先にその部屋はある。

 

 扉は一枚岩を切り出した黒い石。

 厚いその扉を越えると、ひやりとした空気が漂っている空間に繋がっている。

 魔王と、その配下の頂点たちが顔を揃えるためだけに用意された空間。

 

 壁一面を覆うのは、この世界全土をかたどった地図。その上には蜘蛛の巣のように走る細い線が刻まれている。まるでこの世界そのものを6つに分断するかのように。

 灯りは天井から垂れた幾本もの鎖に吊るされた結晶灯だけで、白と紫の光が部屋の中央を照らしている。


 中央には楕円形の大きな石卓が一つ。

 魔王の座る玉座を起点にして、左右に六つずつ椅子が並ぶつくりだ。

 玉座の背後には、霞陽と煌陽を模した二つの紋章が浮かび、そのさらに上に、簡素だが威厳のある魔王旗が掲げられている。


左右に並ぶ椅子に座るのは、六つの区をそれぞれ預かる幹部たちと、その上位として二区ずつを束ねる三人の"冥網の御柱(めいこうのみはしら)"。

 ”魔王”、“冥網の御柱”、”六つの区を担当する幹部”。十人全員が顔を揃える場は、この城に数ある部屋の中でもここだけだ。

 

 いつもなら、会議の前に書記官が資料を並べ、魔王の唯一の執事メービルが茶を整え、各区からの定期報告書が石卓を埋める。

 しかし今、卓の上にはまだ何もない。

 卓の上どころか、この空間にはメービル以外誰も来ていない。

 

 この空間にあるのは、扉の外にまで漏れ出ている、わずかな緊張の気配だけだった。


 「……急な“冥召”か」

 階段を降りる誰かがそう呟いた。

 

 魔王クリシュネからの、前触れなしの招集。

 それは戦況の変化か、あるいは内部の不穏か――どちらにせよ、ろくな知らせではないことは皆分かっていた。


 重い扉の前に、足音が二つ、三つと集まってくる。

 やがて、執事メービルの手によって扉が静かに押し開かれ、冷えた空気の中へと、魔族団の“中枢”が一人、また一人と足を踏み入れていった。


 冥網の間が、本来の役目である「世界を絡め取る蜘蛛の頭脳」として、静かに動き始める。

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