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第15話 観測者

 首筋に冷たく触れる鎌が、月明かりを反射して白い線を描く。

 耳元で、低く湿った声が囁いた。


 「……いいか。このことは、風に流した砂粒と同じだ。君は何も見ていないし、記録もこれで終わりにするんだ」


 冷たい吐息が首筋を撫でる。

 リセルの喉が震えた。


 「彼らの命運は──君の指先一つに結ばれている。

  君の一挙手一投足が、彼らの生死に直結するんだ。」


 鎌がわずかに押し込まれる。鋭い痛みが走った。

 「私は無闇やたらに人を殺したくはない。だから分かってほしい。互いに何も知らず、何も見なかった。それが最善だ。……そうだろう?」


 リセルの胸に凍えるような沈黙が落ちた瞬間──。


 魔族の指先が彼女の右腕を掴んだ。

 焼けるような熱が皮膚に走り、思わず声が洩れる。


 「……あっ!」


 赤黒い光が浮かび、皮膚の上に小さく奇妙な紋様が刻まれていく。

 それは文字とも呪文ともつかない歪な印で、じわりと脈打ちながら肌に沈んだ。


 「これは保険だ。

  この紋が消えぬ限り、君の行動は私に筒抜けだ。

  ……忘れるなよ、可憐な観測者」


 フードの奥から、かすかな笑みが漏れた。

 魔族は音もなく姿を消した。

 リセルは必死に息を殺し、震える手で右腕を押さえた。

 脈打つ紋様の痛みが、ただの言葉ではなく現実の枷であることを冷徹に告げていた。

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