第13話 血塗られた遺骨
肇の手に握られた黒い管は、血に濡れながらもどこか“体温”を宿していた。
まるで、今もまだ、内側に命が残っているかのように。
その存在感に、肇の手のひらはかすかに汗ばんだ。
「……これはもしかして、骨か?」
ただの骨ではない。
奇跡の力に深く干渉し、それを“増幅”し、“暴走”させる。奇跡とは、神の力の欠片。いかなる生物であろうと、その神の力に干渉できるものなど存在しえないはずだった。
(こんなもん……誰が、なんのために……)
肇の視界の端で、高峰がうめくように呼吸する。
だが──この骨だけが、“まだ終わっていない”と訴えていた。
肇は、ふと──背筋にぞくりと冷たいものが走るのを感じた。
(……一体、誰の骨なんだ)
目を凝らす。
黒い棘の根元に刻まれた符文──それはどこか既視感があった。
記憶の奥にある、あの感覚。
転生の瞬間、自分の魂が異世界の“結界”を抜けたとき、感じた魂のゆらぎ。
(これは……転生した時のあの感覚と“似ている”)
その瞬間、肇の心に、ひとつの確信が灯る。
「……この骨は、“神の骨”だ」
アランが息を呑んだ。
肇の声は震えていない。ただ、静かだった。
「この遺骨は……神の骸から削り取られたもの。
感覚でわかる。俺が、あの結界を通ってこなきゃ気づけなかった。奇跡を与える神の力そのもの──それがこの骨に詰まってる」
そして肇は思い出す。
神を封じた存在──魔王、クリシュネ。
肇は、手のひらの中の骨を見つめた。
確かにそこに宿る“神の気配”。
(誰がこれを作った?何のために、こんなもんを使わせた?“また”誰かが、神の力を──奇跡を、兵器に変えようとしてるのか)
肇は静かに、ゆっくりと立ち上がる。
手の中の骨は、霞陽の光に当たっても、なお黒いままだった。




