表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/24

第12話 浄化

 暴走の黒い“手”たちは消えた。

 だが──まだ終わってはいなかった。


 肇は感じていた。彼女の身体の奥底で、何かがくすぶっていることを。


 「……おい。アラン、様子はどうだ」

 後方から駆け寄ったアランが膝をついて、体内の奇跡の流れを読み取るために軽く彼女の身体に手をかざす。

 アランの手が優しい緑の光で包まれる。

 「……乱れた奇跡の流れ、完全には止まってないすね。かろうじて抑え込んでるだけっス。」

 

 アランの声が低くなる。

 肇も頷いた。


 「今は沈静しているが、また暴走してしまう可能性があるな」

 肇はふと、彼女の首元──うなじのあたりに視線を落とした。


 「……アラン。ちょっと頭、持ち上げてやってくれ」

 アランがそっと高峰の頭を支えると、肇はうなじに触れた。


 その時だった。


 「……んっ」


 高峰が微かに呻いた。

 触れた部分に、確かに“異物”があった。皮膚の下、筋膜に沿うように埋め込まれた硬質な感触。

 皮膚に食い込むように、黒く細い金属片が埋め込まれている。

 それはまるで少し太い針金のようでもあり、小さな魔導具のようにも見えた。

 周囲の皮膚は赤黒く変色し、文字のような痕跡が浮かび上がっている。


 「……暴走の原因はこれだな、魔導具か?」


 「今取り出しますか?」


 「……あぁ。すぐに暴走再開ってこともある。ここで外す」


 肇は槍の柄の末端を外し、中から極細の刃を抜き取った。

 “刺す”のではない。“滑らせて、外す”ための薄刃。


 「アラン、痛み止め。頼む」


 「幻緩の癒紗ルシード・レース


 アランが優しく手をかざすと、淡い光が高峰のうなじを包んだ。


 肇は一息吸い、刃を差し込んだ。


 刃は、血を出すことなく、皮膚の下の異物へと滑り込んでいく。

 高峰が一瞬ぴくりと震えたが、アランの魔法がそれを和らげる。


 高峰の身体がわずかに痙攣した。その魔道具をはじめにゆっくりと引き抜く。皮膚が裂け、血がにじむ。

 肇は歯を食いしばりながら、異物を一気に引き抜いた。


 キィィィン……と、空気の中で金属のような共鳴音が響き渡る。引き抜かれたそれは、血に濡れた細い管のような形をしており、根本は骨のような形状をしていた。


 「奇跡の強制増幅……洗脳とかじゃなく、外付けのこの魔道具で無理やり暴走させてたってわけか」


 肇の額から、じっとりと汗が垂れた。


 そして、異物を抜かれた瞬間——。

 高峰の身体から、腐蝕の気配が完全に消えた。


 沈黙の中で、かつて失われかけた魂が再び、人間の心を取り戻した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ