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呀豪の最大戦力

 1ヶ月前はこんな事すると思ってなかった。僕は想像すらできなかった。今の野球がこんな異次元なことに。


 1回表呀豪チームが先行した。県1位だけあって球速がプロレベル。うちのクラブの練習で一番速かった僕が138kmなのに対し、獅子王さんは球速154kmと化け物だった。


 玉を追うのが難しいくらいだった。極めつけは…



「とっておきを見せよう、筋力増強20%」


「ストロング・フィンガー!!」 


 獅子王さんの技ストロングフィンガー。ただでさえ速い球に加速と力を加えた技で、打とうとした金属バットが玉に当たった瞬間手から離れてふっ飛ばされる。これでまだ全力じゃないのが。


 バットを持っていた手が痺れて痛い。これが新しい野球か…少し舐めていたようだ。


「そう落ち込むな少年」


 左ノ助さん、こんな人たちを見ると僕たちってちっぽけなんですね。周りに凄い人達が集まってもそれ以上…それを超す人達もいる。まだ1回表なのに諦めかけてますよ。


「ワシがカッコいいとこ見せてやるぞ。かかってこい獅子王少年。」


「爺さん、あんたからは只者じゃない気がしてたぜ…筋力増強50%…あんたと戦うにはこれくらいは必要だろうなぁ!」


「ストロング・フィンガー!!!」



 まだまだ若い、自分の力に過信しすぎた末路だろうな。このワシを50%の力で相手しようなどと舐めておるわ。


 左ノ助はバットを刀と見立てて構えた。


 戸川流…抜刀


 左ノ助はとてつもない速さでバッドを振り獅子王の玉を弾き返した。そのボールは右翼手の後ろ、ホームランにはならなかったが遠くまでとんだ。


「爺さん、やるな!」


 左ノ助さんは一塁を抜け二塁まで足を運んだ。御年72歳にしてこれはチートすぎる。バッティングセンターでいつも慣らしてるけどロボットと実戦は違うのに…すごすぎる。


 それ以降は三振され1回表は終わり裏になった。因みに基本的なルールは一緒だけど練習試合や地区予選は5回裏まででコールドは10点らしい。


 いつも練習で使ってるグラウンドがこうも違う雰囲気を見せるのは緊張なのかなんなのか、僕の投げる玉で運命がきまる。


 僕はストレートとカーブができるので駆使していきたいけど相手選手はバット持ってない。これは焦らせるための作戦か、はたまたそう言う奴なのか、そう想いながら一球投げた。ストレートで投げた玉は真っすぐ隆治さんのグローブの中に行こうとしたが…


 足で蹴り飛ばされた。幸い低く跳んだのはいいけど初めての試合ってこともあって玉を取る譲り合いが発生した。そのせいで三塁方面にあった玉は左翼方面にいき、相手選手の瓦さんは三塁に走り込んだ。


 左翼手の月島さんは元々の強靭な腕で投げ返し、三塁に行く瓦さんを止めた。結果としては間に合った。最初から点を取られるところだった。月島さんには感謝でしかない。



 次は、長髪の綺麗なお姉さんだった。凛々しい顔つきで歴史上にでてきそうだった。バットは和弓だった。………、和弓!? 


 和弓ってどうやって撃つの?あの細い棒で撃つの?無理じゃない。やっぱり舐めてるのかな。


「貴方のその目怯えてる子犬みたいね」


 僕はカーブをかけゾーンのギリギリを狙った。狙いは良かったけど、このお姉さんは和弓の弦を使ってはね返し玉の球速を加速させた。高く高く飛んで場外まで飛んだ。


 1回裏は1点取られたがそこまでで死守した。僕らが戦ってるのは果たして人間なのかそうでないのか。明らか神業すぎる。


 

 2回表ここでチャンスが訪れることになる。バッターは月島さん。元軍隊あがりの月島さんは戦場では前線にいたおかげで洞察力は人一倍ある。


 獅子王さん投げた、月島さんならいける。


 ストライク!


 えっ…月島さんバット振ってすらいない。どうしたんだろう、緊張でもしてるのかな。

 

 ストライク!


 2回もストライク取られてるよ。何してるの月島さん、これ試合だよ。バット振ってよ。


「読めた…」


「筋力増強…30% ストロング・フィンガー!」


 月島さんは大きく振りかぶった。玉に命中して投手の股下に飛ばした。獅子王は一瞬戸惑ったが二塁の瓦が取ろうとした時、一瞬動きが止まった。


 ほんの一瞬だった、1秒よりも早かった。けどスポーツの1秒は命取りになる。取れるはずだったボールは瓦を通り過ぎていった。


 月島さんは勢いよく走り出した。一塁、二塁早くも三塁に行き、初の得点になると思ったら…


「和弓…清線鏡破(せいせんはきょう)


 中堅にいたあの和弓を持ったお姉さんがボールを矢に変えて捕手に向けて放った。投げるのより早く早く飛んできた。


 月島さんとの距離はほんの僅か。まずい、捕手がボールを取ってしまった。が、月島さんは突っ込んでいった。気が狂ったのか分からないけど、もうアウトになりそうなのに…


 捕手が月島さんにタッチしそうになった瞬間、月島さんは逆向きに突っ込んだ。あの時と同じ様に捕手が1秒くらい止まっていた。その止まっていた隙をついて1点をもぎ取った。


 さっきから何が起きてるんだ、新参の僕達に対するハンデなのか?にしてもわざとらしいというかなんと言うか。


「困ってそうな顔してるな拓人、あれは俺の能力"見解休止"(ストップアイストック)だ。」


 見解休止(ストップ・アイ・ストック)は相手の思考を一瞬だけ鈍らせる又は止める事のできる能力。物の様な生き物でないのに対しては意味を成さない。


「何回もやろうとしたら逆に怪しまれるし対策されるからここぞという時にしかやらない様にしてるんだ。」


 でもすごい。だってこの人は1点を確実にgetできる人間なんだから。これがもし三塁共にいる状態で月島さんの番になったとしたら、最高4点持っていけるって事。


 その後もなんだかんだあって強豪相手に一対一で5回表が終わった。相手チームの動きがあったのがここからだった。



 最初は不思議だった。強豪チームに挑もうとする奴等は1点取られるだけで諦めていたのに対し、お前らは食いついてくるどころか倒そうとする"意思"がある。こんなチームは昨年の大会にはいなかったぞ、誇りを持てチームイズミ。ここからは本気で行かせてもらう。


「場の空気が固まった、これが強豪と言われる呀豪本来の雰囲気なのか、足が震えていた。」


 いくぜイズミ、これが本当のストロング・フィンガーだ。筋力増強100%、ボール強度100%…ストロンゲスト・フィンガー!!


「爆風だ、まるで獅子王さんが台風を投げるかの様に周りを吹き飛ばしながらボールはミットに入っていった。」



 ここは私田中隆治が行かないといけませんね。いつもはマッサージ師をしてお客様や選手の皆様方をサポートする立場ですが今回は違います。この台風を私のマッサージ術でサポートする必要があるのです。


 そう言って隆治さんは針治療で使う針数本とバットを持っていく。


「次行くぞ!!ストロンゲスト・フィンガー!!」


 慌てなさんな少年よ、心を穏やかにすればその荒々しい波はとうに消える。私の治療術によってね。

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