ルームメイトの悪役令嬢はBLの薄い本がお好き
「ジョセフィーヌ! ジョセフィーヌ! ああ、ジョッセッフィーッヌッ!!」
ルームメイトのフランシスカが、私の名前を叫びながら部屋に飛び込んできた。
「どうどう。フランシスカ様、どうなさったの? そんなに鼻息を荒くされて」
「聞いてくださる? ジョセフィーヌ! わたくし信じられませんわ。本当に信じられませんわ!」
フランシスカは興奮している。私は、なだめるように冷静な口調で話す。
「落ち着いてくださいまし。フランシスカ様。いったい何がありましたの?」
私の声でフランシスカは落ち着きを取り戻す。興奮した理由を説明する。
「先ほど教室で、女子たちが1冊の薄い本を読んで盛り上がっておりましたの。何を読んでるのか、わたくしにも見せてくださるようお願いしたのですわ」
フランシスカは再び鼻息を荒くした。
「驚きましたわ! わたくし度肝を抜かれましたわ! その薄い本は、殿方と殿方があられもない姿で抱き合っておられましたの。そして、あんなことやこんなことをなさっておられたの! いったい何ですの? あの薄い本は!?」
あー、お嬢様には刺激が強かったか。私は薄い本について説明する。
「フランシスカ様。それは、BL。いわゆるボーイズラブと呼ばれる漫画の同人誌ですわ。成年向けの大人の本ですの。フランシスカ様がお読みになるものではありませんわ」
「あら、そう。時に、ジョセフィーヌ。あなたが夜中にこっそり書いている小説もBLの同人誌なのかしら?」
私は驚愕する。心臓が止まりそうなほど。背中に冷たい汗が流れる。
「ななな、なにをおっしゃっているんですか? フフフ、フランシスカ様」
フランシスカは1冊のノートを取り出した。そのノートには見覚えがある。私のノートだ!
「ジョセフィーヌ! ああッ、いやらしいジョセフィーヌ! このノートにあなたが書いてるのは、わたくしの婚約者アンソニーと騎士見習いのパーシバル! 2人の殿方があられもない姿で、あんなことやこんなことをなさっているのが書かれていますわ! どっちが攻めで、どっちが受けですの? 答えなさい! ジョセフィーヌ!」
「ひいぃぃぃーッ! フランシスカ様ーッ! お許しをーッ!」
私は思わず絶叫して許しを乞う。
「決めましたわ! ジョセフィーヌ。わたくし、このノートに書かれていることを同人誌にしますわ! 学園中に広めますわ!」
「やめてえええーッ! それだけは、それだけはーッ! お願いします! 何でもしますからーッ!」
私の声が虚しく響いた。




