◎不夜城 夜 国王というアイコン
殿下の周りはみんな子供好き だけどショタではない。
女子出番少ないけどBとLの話では無いのです。
◎陛下ならあり得る話。
「亡くなられた国王陛下のお身体に呪印らしい印が現れました」
呪印って何?
神官以外の皆の目が点になった。
印とは身体やモノに描かれる魔法の印。との魔術師の説明。
一番有名なのは女神の破門印 女神の印に×がついた印でこれを受けると死して死者の国の門を通れず、アンテッドやゾンビ、リッチ、ゴースト死霊系モンスターになって世界が終わるまで人間に退治され続け、アンテッドとして再生を繰り返す。
何千年か前、王族が聖女を迫害し破門印を付けられ、国が滅んだらしい。
この国の西に広がる大陸の4/1を占める大砂漠がその跡地と云われている。
次に祝印 神のいとし子や聖女、聖人に付けられる神の祝福。
そして呪印
人間が人間に付けた魔術の印。
そして一部で有名なアレ…。
「淫紋ではないのか?」さらっと殿下が破壊力の高い単語を口にした。
ごふっ! と誰かが吹いた。
バリエが口を抑えて天を仰いでいる 宰相は「無」の表情。
神官はキョトンとしているが魔術師は目をひん剥いて殿下を見てる、ちょっと痙攣したように震えている大丈夫か? というか。
殿下のイメージが…子供であるが故の高潔な…という心象操作が…。
流石実体験で見た事ないだろうが知識チートっぽい陛下なら…知ってそうで聞くのが怖い。
俺は前世知識、チートじゃないオタ知識で淫紋ぐらい知っているけど。
びっくり、この世界 乙女ゲームじゃない18禁野郎大好きエロゲーの世界じゃないよな? というか誰得の世界なんだよ。
淫紋 エッチなことするお店のお高いお姉さんにはたまに淫紋を入れている方がいらっしゃるそうで それを入れているとお高いおねえさんがさらにお高くなるそうで…。
そういう感じの魔術補助紋だと冒険者時代の相方の魔法使いに聞いたことがある。
が、出来れば殿下の御前で詳しく聞かないでほしい。
殿下が知っていてもだよ。
「了解した。詳しくは国王陛下のご遺体を確認しながら聞く」
宰相が話をぶった切った!
アイン殿下を筆頭に殿下の横に宰相、両脇に俺とバリエ、後ろにお使い中のバルトの代わりに執事が付き、その脇に白と黒の神官と魔術師がついて国王陛下のご遺体が安置してある殯宮へ向かう。
が、魔術師のおっさんの独り言が聞こえて来る…ヤバイ単語が…。
「淫紋…盲点でした、あのお方ならそれぐらい入れていそうだが…。」
あの国王陛下なら…ホント入れてそうで怖い。
「…頭の弱い方で宰相の傀儡だと聞いていた…」
殿下のことっすか?
「あれは花街や遊郭にある民間伝承的な魔術で…」
そうなんすか。
「殿下がご存じなほど知名度がある呪術ではない筈」
あー、このおっさんなんか変なスイッチ入ったらしくて小声だが淫紋、淫紋と怪しい単語を連呼して自分の思考の海に沈んでいる、殿下に聞こえるから止めてくれないかなぁ、情操教育に悪いんすけど。
隣の並んで歩いていた若い神官がおずおずとおっさんの独り言に割り込んだ。
「あの~~? 淫紋とは何ですか?」
声でかい!
とたん宰相閣下、ガシッと殿下を荷物のように抱えて後ろの俺らから速足で距離を取り始めた。
そりゃ殿下の後ろで淫紋淫紋言われたら情操教育に宜しくないのは分かるけど。
わかるけど、閣下! 俺らを置いて行かないでください。 俺らアイン殿下の護衛騎士! と、執事一名、他。
皆が宰相に置いて置かれないよう速足になる、魔術師のおっさんと若い神官もなんでという顔でついてくる。
宰相閣下、身体強化使っているのか殿下抱えながら超速足! 閣下文官じゃないんすか!
そんな高速移動でウエストを荷物のように抱えられた殿下、揺さぶられて虚無顔でほっぺを膨らませている。
あれは揺さぶられてレロレロ寸前の顔と見た!
宰相閣下ぁ! 殿下に気がついてくれ。
殿下やべえと、宰相閣下の後ろに付いてきた皆が気がついた時、魔術師のおっさんが動いた。
いきなりブツブツ呟きながらかがんだと思ったら飛んだ!
はい?
閣下以外全員目が点になる。
風魔法の応用なのか足下紙一枚位の隙間で浮いたかと思ったらスケボーの要領でスピードをあげ、ギュンと宰相に肉薄、下から救い上げるよう殿下を抱きかかえると奥のトイレのドアをぶち破ってなだれ込む。
は はえぇえ?
廊下斜め横でこの場面を目撃して棒立ちになってる二人組の侍女、運んでいたお茶のワゴンが勝手にスルスルと進んで行く。
宰相も呆然 殿下を抱えた状態の姿のまま固まっている。
魔法使いのおっちゃん、唯の中年のおじさんかと思ったらすげえ大業かました! 流石魔術院派遣の高位魔術師、誘拐の時アレ遣られたらヤバイかもしれない、要チェックだ。
トイレのぶち破られたドアの向こうから水を流す音が丸聞こえになってる。
間に合ったか?
いつの間にか俺を追い越してバリエが侍女の押していたワゴンをそっと侍女に渡すとワゴンから水の入ったピッチャーと紅茶のカップを一つ取りだしてトイレに向かった。
侍女ズにニッコリ微笑んで持ってくあたり、イケメン詐欺?
俺の背中にはゼイゼイした神官が張り付いている…体力ないな神官!
俺は背中に神官貼り付けたまま宰相の所に合流。
軽そうに見えて重かった神官まだヒトの背中てゼイゼイしてる。
殿下を抱き上げたバリエとロボットのようにカクカク動いている魔法使いもこちらに来た。
反動なのだろうか? 多分アレは全身筋肉痛。
カクカクした笑顔(目が笑ってない)でおっさん魔術師、未だ固まったままの宰相の肩をたたく。
「宰相閣下、子供の扱いが酷すぎますねぇ」
「……」
「子供をあんな体制でブラブラさせちゃいけませんねぇ…」
宰相閣下が引いている。
「アイン殿下、馬車で酔うタイプでしょう?」
「…………」
娼館カチコむとき、あんな感じでした。
「三半規管の弱い子供、あんな揺さぶりかけるとはどういう考えなのでしょう?」
「…………」
面目ありません、反省。
何処から湧いて出たやじうま連中が陰から見てる。
気がついてヘロンヘロンの紙人形のようになっていたアイン殿下がシャキっとする。
こんなところで我慢しなくてもいいのでは…と、思うがアイン殿下の噂は些細な事でも悪意を上乗せされて千里を走る。
バリエがさりげなく野次馬から殿下を隠す位置に付きながら宰相とおっさん魔術師を扉の方へ誘う。
丁度宰相閣下がアイン殿下を攫われたのが目的地の手前。
宰相達の横の少し奥まった所にある豪勢な両開きの扉の奥。
そこからは王族すら許可なく立ち入れない、国王陛下のご遺体が安置してある殯宮。
何事もない様に無表情で立つ殿下、足元がチョイカクカクしてる。
殿下ぁ(泣)抱き上げますか?
腰を少し下げ無言で両手を殿下の前に差し出す。
ふるんふるんと首をふる殿下。
こ…子供詐欺…じゃなくてェ! 俺も忘れがちだか年相応の仕種だ。
ちょっとほっこり。
俺が腰を下げたせいで張り付いていた神官が俺の肩に顎乗せたままほっこりしてる。
いい加減背中から退けや。
ぬるんと俺の背中から退去した神官はアイン殿下の目線までかがむと懐から小袋を出す。
「飴ちゃんです。馬車酔いが少しスッキリしますよ?」
宰相、馬車扱いです。
一粒取り出して紙を剥ぐと自分の口に入れ、袋の中身が殿下に見える様差し出す。
「殿下、少し身なりを整える時間を頂きます」
だから飴ちゃん舐めるくらいの時間ありますよ。
あちらもまだかかりそうですし。
ちらり
宰相と魔術師の話し合いもまだかかります。
あの単語もでなければ少し休憩……。
神官、ニコニコしながら殿下を見てる。
殿下、貰った飴ちゃんもきゅもきゅ食べてる ほっこり。
が、そんなホッコリは好奇心溢れてキラキラが漏れでる神官の一言でブリザードに埋もれた。
「殿下は淫も…」
このピュアイケメン詐欺神官がぁ!
俺の癒しを踏み抜きおった! ので
ブラック俺様、降臨。
俺は神官の脳天鷲掴みにした。
鷲掴みして身体強化で持ち上げようか?
こいつ、己の知識欲満たす為に殿下に発してはいけない単語を口走りやがったな?
処す!
その乙女ゲー攻略対象みたいな長髪剃り落として、その脳天に前世、今世共通の描いてはいけない子供の落書きを描き込んでやる。
イケメン処すべし! そして乙女ゲーの可能性ブッ潰す!
「ミネルバ卿」
アイン殿下が感情のない顔で見上げる。
飴ちゃん食べ終わりましたか?
回りを見回すと宰相、魔術師のオッチャン、執事、バリエがヤバいモノ見る目で俺を見ていた。
「ミネルバ卿、その脳天鷲掴みはやめなさい」
了解ですアイン殿下。
神官をポイっとして回りの野次馬を睨みつけながら凶悪な顔でニヤリと嗤う。
どうせ「驕る平民騎士」だの「冒険者あがり」だの言われているんだろう。
神官がオッチャン魔術師の影に張り付いてる。
仲良いな。チッ
「行くぞ」
さっきまで子供の扱いが乱暴とオッチャンに説教されていた宰相とがため息をついた、オッチャン魔術師が仕方ないと並んで扉の前に立つ、その次が俺、俺の後ろにアイン殿下、左右にバリエ、神官、最後尾が執事の順に並ぶ。
「解錠」
ふと、前世のばあちゃんが貰い物を開けるときのお決まりのセリフを思い出した。
♬なにがでるかな? ナニがでるかな?
タララビッタリたらりら♪
魔術師のおっちゃん 高位魔術師
8歳の双子(男女)の父 子煩悩 息子、娘に頬すりすりしてお父様お髭ゾリゾリ痛ーい! と言われるのが至高。
神官 主神殿高位神官。
元高位貴族の三男でのんびり過ごし過ぎてこうなった。
独身、イケメン 小さい子供好き 変態ではない
将来孤児院の院長になって子供の成長を見守りながらのんびり老後を過ごしたい。
女性苦手だが野郎はもっとどうでもいい。