閑話休題壱 異世界転生者はかく語り
本編の設定を煮詰め直して丸めてます。
初心者だからと甘い設定で描き始めてはいけないとみにしませてます。設定コロコロ…
しばしミネルバ卿に頑張って動いて貰って場を繋ごうと思います 伏線コロコロコロ…
「なんでやねん!」
チュドーン!!!
雄叫びに合わせて訓練用ゴーレムが俺の裏拳ツッコミで吹き飛ばされ、訓練所の壁に激突する。
壁にはマンガでしか観た事ない蜘蛛の巣状の亀裂が入った。
「キレてるよ!イイ裏拳ツッコミだ!」
「きゃー、ミネルバ卿ステキ脳筋!」
バリエとバルトが壁に並んでやる気のない嬌声をあげてる。
うるさい…見てるなら俺の相手しろや!。
夕暮れにはまだ早い時間、勤務前の身体慣らしに訓練所に来たら小隊の部下、バリエとバルトがいた。
訓練するでもなく俺が選んだメニュー、訓練用ゴーレムとの乱戦を眺めてヤジってくる。おい!
と、にらんだついでに横に山と積まれた廃棄寸前の訓練用ゴーレムを見てしまった。
「……」
壊したのは俺だっけ?
「やっと落ち着いたか」バリエは俺の部下だが年上なのでプライベートではタメ口だ。
ちょっと残業続きで荒れてたのがバレてたか、まあ、荒れてる上司の相手なんぞ身が持たないよな 俺が悪いな。テヘペロッ
頭軽くコツンとしながら小首を傾げてウインクと舌だしの可愛さアピールのコンボ、どだ?
目が合ったバリエのクソデカため息にちょっとイラついてる間に2人、こちらに歩いてきた。
大きなお友達はテヘペロでは誤魔化されてはくれませんでした。
「相変わらずとんでもない身体強化魔法ですね?」
すまん、イラッとして殺ってしまった…いや、ゴーレムだから器物損壊。
器物損壊は大した刑罰にはならないよな?刑法何条だったか…って、それは前世の法律。
あぁ 始末書書かなきゃいけないのは今世も同じだ、騎士も広い意味ではお役所仕事だからな。
しかし どんだけ壊した俺、「チュウチュタコかいな…チュウチュ…」7体か、
「ナンすか?それ?」
バトルが胡散臭そうに聞いてくる。
「東の辺境のとある部族に伝わる数の数え方」
「嘘つけ」
と、バリエ。
「遠征訓練の時も『ハジメチョロチョロナカパッパ』とか呪文唱えてたよな? あん時はコメを美味しく炊く祝福だとか言いながら焦がしてたな」
あれえ?
俺にはうろ覚えだか前世の記憶がある。
多分30代前半位で死んだらしい、魔獣狩って踊りながら肉焼いたり…ビルの間、街中を誰かを追いかけて走り回って殴り合ってたり、始末書やら報告書やら経費計算したり……とりとめもない役に立たない、この世界ではない異国、日本の記憶。
夏の暑い日は冷えたビールが飲みたくなり、腹が減って牛丼かっこみたくなるそんな日常を暮らしていた。
「コイツの胡散臭い行動には意味なんかないぞ?騎士になる前の冒険者時代も『踊るプラチナランク詐欺』って有名だったし」
やめろ、そのオレオレ詐欺みたいな言い方!
「え?ミネルバ隊長、前職冒険者だったんですか? スカウトですか?あ!スカウトの冒険者あがりがなんで隊長…」
ゴチン! すげえ音したぞバリエ
「コイツ東の辺境伯の子息だぞ、一応」
一応ってなんだよ
えへへ まあ伯爵家の関係で学園卒業して騎士団入って騎士の叙勲受ければそれだけで騎士爵位相当は貰える。貴族あるあるだ。
「なのに騎士叙勲3日で剛の隊長騎士全員を素手で沈め、その屍(気絶させただけだけど)踏みつけて『冒険王に俺はなる!』と、叫んで逃げた」
やめて、黒歴史!
「いや〜〜アイツら辺境バカにするから」
誤魔化したくてまたテヘペロしてみた。
いやいやと、2人は首をふる。
「それ、敵前逃亡で極刑じゃないすか!」
「一部始終観てた上司の温情と東の辺境伯への忖度で休職扱いになったそうな、隊長の兄貴に首根っこ掴まれて連れ戻されるまでな」
辺境伯は重要ポストで侯爵相当ですからなぁ…
東の辺境はいいトコだぞ? デカい虫型の魔獣多いけど茶の産地だし、サツマイモは美味い。
「計画的だろ! 普通騎士団飛び出してすぐ冒険者になって、プラチナランクまで上げてた奴はいない。前から内緒で冒険者ギルド通ってランク上げしてただろ」
冒険者のプラチナランクは上から二番目、功績があれば騎士爵を賜れる事もある。
あれ? まあ辞めどきは探ってたけど。
親父に無理矢理騎士団入りさせられたからなぁ。騎士とか役所勤めとか勘弁してほしかった。
今世位スローライフでのんびり平和な人生をと、思った時期もありました。
「でもなあ、せっかくプラチナランクまで上げたのに魔物のスタンピード起きて騎士団との合同討伐行ったら、兄貴がいて思い切り身バレした」あれは誤算だったわ。テヘペロ
「……」微妙
野朗共にはテヘペロは受けないようだ。
「辺境伯家の子息で学園卒業してプラチナランクの冒険者……で、護衛騎士の隊長…」
「……」
微妙な空気の中、いつのまにかわらわらと湧いてきた魔導士部隊の工兵が横で空気よまず壊れたゴーレムを確認している。
「胸部に一撃?魔法の痕跡少ないなあ、剣の傷じゃないけど…身体強化?」
「ゾウマンに踏まれても壊れない作りなんだけどなあ…」
ゾウマンって…?前世で見たマンモスみたいな魔獣か!二階建て木造住宅位あるやつ?
「人体だったら内臓破裂ッスねぇ!」
1人だけ混じったネコ獣人が面白そうにゴーレムを逆さに持ち上げる、あれ?見た顔?
「お前、アイルか?」
小柄で髪の毛がハチワレ色の獣人がキュるんと振り返る、耳がヒクヒク動くその仕草が懐かしい。
「お前ディ!久しぶり!」
相変わらずの美少年風のネコ獣人は魔導士のケープを翻して敬礼してきた。
魔獣狩の打ち上げで兄貴に攫われて以来の再会だ。
あの時はパーティ解散だの報酬の事とか迷惑かけて悪かったなあ。
「前からよく壊されるゴーレムの魔法跡がディの魔法跡と似てると思ってた!」
パンパンパン 上、下と両手の平を叩いて最後、片手を横に叩く。冒険者時代のパーティでの挨拶。
懐かしいなあ
「ナンで魔導部隊に?」
「ディが実家に連れ戻されてソロ活動しようと思ったんだけど気が乗らなくてさぁ ギルドの推薦で王都の魔導士募集受けたらなんか魔導士部隊の錬金課で工兵になった」
アイルの猫目がキランと光る。
「ヒトの傑作ゴーレムを一撃で沈めるとか相変わらずの辺境仕込みのステゴロか?」
ステゴロ…前世で覚えたらしい柔道と合気道のコトか、オレ前世ナニやってたんだ?絶対カタギじゃない気がする。
「悪いなあ、ちょいと上司にムカついて八つ当たりした」遠い目で空を見上げる。青いオソラキレイ…
「お知り合いッスか?」
「昔ちょいとね」
アイルはゴーレムの手をフリフリしながら話を濁す。
何もかもが懐かしい冒険者時代…
魔獣狩って踊りながら肉焼いてのスローライフ…
第一王子殿下の護衛騎士辞めて冒険者に戻りたいと思う反面、何故か騎士辞めようと思った時と違い殿下を残して自分だけ自由になりたい気がしない。なんでかなぁ
「隊長の冒険者時代の武勇伝聞きたいっす!」
バリエの脇から顔出して余計な事言うから脇で締められてる。バカな奴だ。
「魔獣狩行って踊りながら肉焼いた想い出?」
「…踊りながら肉焼くんだ…」
バリエ、バルトの頭脇に抱えてゴリゴリしてる。
とりあえずトボけて肩をすくめる
「肉焼き踊りは平凡なモブの密かな楽しみって奴ですよ。」
「平凡なモブ…」
三人が揃ってなんとも言えない顔してるな
休憩時間も終わるから引き上げるか。
と、がっしりバリエに肩掴まれる。
「訓練用ゴーレム破壊の始末書忘れずに」
また始末書…
俺、前世も今世も同じ生き方してるな
肉焼き踊りに殴り合いに始末書、本当、変わんねぇなあ、がっくりだせ。せめてチート能力でもあればも少しマシな人生送れたか…始末書書かないような…。
いや、変わらないだろう。
訓練所を出て王宮の勝手知ったる回廊でアイル達と別れて、そのまま控室へ入り三人それぞれ護衛騎士としての身なりを整える。
第一王子アイン殿下の護衛騎士として役目を果たすため執務室に向かう。
ただ一つ変わった事は第一王子殿下を守ること。
前世は守るものがなくて早死にしたのか
明るい夕焼けに藍色の夜が重なるなか、王城にひとつ、またひとつと灯りがともり始める。
「あいつ、チートが羨ましいとか吠えてるが一年でプラチナ冒険者になったり王宮騎士団で『踊る凶戦士』の二つ名が付く事の何処が普通だってんだよ、俺らからすれば十分チートじゃねえか?」腑に落ちない顔て呟いたバリエは、茜色が消え藍が深くなりつつある空を見上げた。
ノイエクラッセ王城の夜が始まる。
アイン殿下以下、俺たちの時間だ。
描き始めてから3話で閑話休題入れて伏線設定マシマシは反則技ではないかと戦々恐々としておりますが、少しでも読んで楽しんで頂ければ幸です。
はい、厨二病の病は深いです。