◎不夜城 昼 王子様はランチタイムも《サバイバル》⑤
いつもお読みいただきありがとうございます
一応、登場人物が野朗ばかりですがBと Lの話ではありません 絢爛(一応)豪華(王宮なので)な王宮サバイバル、ショタの王子を担いでテッペン争奪バトル…なのです。
乙女ゲームは何処行った? バトルフィギアは伏線。
◎敵は殲滅対象 なのでシュピーゲルング兄妹のターン? (笑)
第三護衛騎士団の制服を司令官風にゴテゴテに装飾した黒服を着た球体関節人形。
なんかトゲトゲした肩当とか、ゴツイ胸当てとかついてる。
アイン殿下バトルフィギア零号機?
よく見ると前世で同僚が自慢していたフィギア+着替えが出来るり●ちゃん人形、な アイン殿下人形。
関節部分に球体の可動部が嵌められ、動く手足、魔眼封じの眼帯までそっくりに作り込まれている。
デフォルメの仕様がアニメキャラ…これ、バトルするんすか?
嫌な感じがする、見覚えがあるようなないような…。
ゲームの開始年齢になったらコレを着るみたいな? 嫌な感じが。
この時代の、この国の流行とかデザインの服ではないわ コレ。
というか乙女ゲームの最難度攻略キャラ故の、強制力の結晶がこのコスプレ人形ですか?
未来で乙女ゲームの舞台でこの衣装で戦えと。
あの機械音モドキの抑揚の無い声が聞こえそうで背筋がゾッとする。
違う。
誰だ! んなもん作った転生者出てこい!(転生者風評被害)
誰か転生者がいるのか(俺以外)
内部に情報漏洩した犯人がいるのか(俺じゃないぞ!)。
かぼちゃパンツ履いているのか? (小エビ女子、ハーフパンツ脱がそうとすな!)
横でゴッと音がしたので横目で確認すると床に沈没する勢いでバリエが土下座していた。
さっき立ち直ったばかりなのに。
…バリエ、後で尋問な。
「そこの白宰相」
ソファに隠れて悶え苦しんでいる奴・を眺めながらため息をついた宰相が側妃一行を睨む、その一行に混じった白い衣装に銀髪の若いとは言えないが結構なイケメンが怯えている。
黒衣の夜の宰相がいるなら昼にも形だけの宰相がいた。
俺らの中での通称、白宰相(仮)
いつもは側妃とその祖父、第三王子と共にいる昼の白宰相が夜の黒宰相に呼ばれてしおしおとお辞儀する。
国王陛下、側妃、側妃の手先が自由に暴れられないように昼にも宰相職を置くことなったらしいが…。
影の薄い侍従がいつの間にか側妃の持っていた王命を記したという用紙をウチらの黒宰相に渡した。
「王命とは王が発する最上級の命令であり、王が不在の時に発せられる命令は王太子または摂生が発する詔勅、元老院全員の著名が入った上位書が回されるはずだが? 」
白宰相が肩をすくめて小さくなる。
宰相が仕事が出来そうなのを置いたらしいのだが側妃その他の圧が強く、書類仕事の処理以外余り役に立っていないという。
側妃が白宰相をおしのけるように叫ぶ。
「国王陛下の長男のドライド ハンター ノイエクラッセが国王になるなら私が国母としてドライド殿下の代わりに王命を出してもおかしくない! 」
このおばさん、語尾に感嘆符を付けないと話せない病なのか?
というか押しのけられてないで、こういう暴走を止めるのが仕事では? 白宰相!
白宰相は側妃の鼻息で吹き飛んでいた。
ほっといてあげよう。
国王陛下の長男、第一側妃の第三王子のドライド殿下はちょっとやさぐれて下を向いている。
いるよな、こういう親。
子供の為と言いながら、言っていることが自分の為、自分の見栄や虚栄心の為に子供を出汁に使う。
なんだか酸っぱいものがこみあげて来る。
この子も乙女ゲームの攻略対象キャラのはず。
覚えているゲームの広告のデザインに金髪、青い目の青年もいた。
…がっしり系の騎士だったよな…ふっくらさん…。
甘やかされて育てられ、王になることを望まれる 親の虚栄心の為に国王になることを望まれることが幸せとはいえない。
ちょっと同情してたら睨まれた ほほう場に慣れてきたか、度胸あるな にやり。
眼を逸らす、が 視線を感じて恐る恐るこちらをチラ見する第三王子。
にやーり。
「子供ビビらせないでくださいよ」
バリエがこそっと囁く、お前、立ち直り早いな(笑)
第三王子で遊んでいても側妃と黒宰相の不毛な水掛け論は続いていた。
しつこいな。
「普通でも王命を出すには王のサインと玉璽と宰相である私のサインと印が必要ですが?」
「国王が王命を出したなら絶対でしょう! 」
「学園で習いませんでしたか? 一年の教養で習う基本ですよ? 」
国の法律を学園で学ぶのは貴族の子供に課せられた義務である。
絶対君主国家で王政を敷いているが国民を守る為の法律はある それを教え込むための貴族の義務。
全てではないが貴族も平民もこの国の基礎を教えるために学園はあったはず。
…まあ、その学園で勉強より恋愛ゲームで忙しかったらしいが。
「この命令書には第三王子の名前と白宰相の印しかない、服地の献上とは? 戦時中でもないのに無償で王家に献上とは盗人ですか? 強盗ですか? 戦時中でも買い物をしたら料金の支払いは発生しますよ、支払いはどうする予定ですか? 国費から予算を出すには現在なら元老院と貴族院の了承を取って私のサインと玉璽が必要ですが」
「私は絶対サインなどしません」
ギロリと睨みを利かせる黒宰相。
「大体王家は基本献上品など求めない、新商品の宣伝や流通のための試供品などは受け取ることがあるが何故服地の献上なんだ? 」
「……」
言い淀む側妃。
「喪服が、王家の国葬で王族が着る正喪服が貧相なものでは威厳が保てないだろうと」
「ドライドは国王の長子、次期国王が普通の生地の喪服では威厳も何もない」
側妃の中では自分の息子が次期国王になるのが決定しているようだ…が。
「未だ次期国王は決まってませんよ。」
瞬殺 黒宰相の塩対応が凄い。
本当にこの国大丈夫かというほど次期国王が決まっていない。
もしもの時はお元気になられた? 元国王陛下が暫定的に王位につくのだとしても。
水面下の元王弟、第一王子、第三王子の王位継承権争いはひどいことになっている。
「王位継承権は普通なら正妃の第一子、または国王の兄弟、その次が側妃の子供と王弟の子供と順番が決まっていますよ、ドライド殿下は第三子、正妃の子供であるアイン殿下が第一子、前国王の病が癒えて復活される可能性もある、それがかなわなくても前国王の王弟も帰国されている、それを鑑みるとドライド殿下の王位継承権は5番目程ですが? 」
にべもなし、こんな所で騒ぐより、もっと息子に勉強させた方がいいだろう。
黒の宰相が側妃の持っていた書類をくるくると棒状に丸めながら付属のリボンで縛り、畳みかける。
くっころな顔をしてる側妃、いや殺し合いじゃないですよ今は。
其方から執拗に毒入りの食べ物や暗殺者を送ってくるけどな。
今はまだ反撃の刻ではない。
「王命の詐称さしょうは極刑ですよ? 王都の服飾店に王命として出した命令書は間違いとして早く撤回することです」
黒宰相の圧が凄い。
「でないと査問会案件になりますよ? 」
黒宰相は側妃の首に用紙をつきつけ、横に滑らせる。
一歩退く側妃。
横に滑らせた用紙をそのまま受け取る白宰相。
その姿はこの部屋の扉をくぐった時よりげっそりしていた。
ご愁傷様です。
側妃の反論は封じた。
第三王子もぶーたれるだけで何もすることなく、母親を助ける気もないようで始終無言を貫く。
側妃一行はすごすごと手ぶらでアイン殿下の部屋を後にすることとなる。
第三王子の喪服は城の針子たちでなんとかしくれ。
実家には色々実験的に作った生地が沢山ある、が…渡さないけどな(笑)
さあ、しまっちゃった殿下たちを出してあげない…と。
一言かけて扉を開けるとアイン殿下が戦闘メイドに後ろからハグされて撃沈していた。
…羽交い絞めともいう。
何故かバルトが腹をかかえて悶えていた。
さっきから「ぐふぅ」だの「がはっ」だの言ってたのはお前か。
「殿下、台風は過ぎたのでお昼にしましょう? 」
だが、部屋置きの時計を確認すると無常にもお昼を大分過ぎたおやつの時間になっていた。
あーーー…。
アイン殿下には王宮内で食事は用意されない。
今から宰相家で用意して貰うには時間がかかるだろう。
何処か食べに行くこともできない。
こういう時の為の乾きもの?。
そのツヴァイ殿下は風呂場の扉からバリエに先導され出てくる。
何故かツヴァイ殿下も侍女に後ろからハグされて足ぶらんぶらんさせながら出てきた。
何やってんだ。
こちらのソファの陰では南の辺境伯エリアス ヨナ シュヴェールトヴァール卿が転がって痙攣している。
何故!
「面白いものを見せて貰ったよ、あれが噂の側妃かぁ~」
お笑いに耐性がないのか、涙を流しながら笑っている。
チャラい感じのイケメンだがそれでも南の辺境伯の惣領。
辺境伯というと王都から遠い辺鄙な領地の伯爵家と思われがちだが爵位の順位はトップの王族、王族が降下して公爵、王族の血も濃いような譜代貴族や歴代で昇爵するような功績を上げた故の侯爵、その下の伯爵、子爵、男爵、準男爵や騎士爵は平民が一代限りで昇爵するような功績を上げたか騎士学校を卒業して貴族の後ろ盾を得て騎士として働くものに与えられる爵位がある。
その中の侯爵相当の地位を与えられ国境を守る家の事を指すのが辺境伯。
武の北部辺境伯、流通の南部辺境伯、錬金術の東部辺境伯。
東の辺境伯だけ胡散臭い呼び名なんすけど、まあ気にしない(笑)
「あれはない、国王が子供もいるのに王太子妃の後釜に置かず、側妃のままにしたのがわかるわ…わかりたくないけど」
ちゃんとソファに座れよ、兄ちゃん。
「もう、王命詐称で捕まえて幽閉しちゃえよ」
「国葬前に揉め事を起こして諸外国に足元を見られたくない」
と、黒宰相は苦虫を噛み潰して飲み込んだような顔で言うが…もう、無理じゃね?
「ノイエクラッセ王国の七不思議」
国内外で有名だよな。
「兄様~っ拘束されました! 放すよう言ってください」
大きなぬいぐるみを抱くように拘束されたツヴァイ殿下、シュヴェールトヴァール卿に直訴するが笑って誤魔化される。
「側妃の襲撃で昼飯がまだだったよな、皆、知り合いの食堂から出前奢ってやるよ!」
ソファの座面に手をかけ、一気に立ち上がる。
出前って…ここ、王宮…?
舞踏会やらお茶会で外の店から料理人を派遣させたりすることはよくあるが、王城内で食事する場合は基本王宮内での調理場で作られたものが提供される。
食中毒や毒の心配をなくすためだが下級騎士や侍女ならたまに料理の配達を頼むこともあるらしい、が上位貴族はどうなんだ?
「ツヴァイ殿下もアイン殿下も鑑定眼があるから平気だろう」
うきうきしてる辺境伯、自分が食べたかった?
南の辺境伯家の侍女、侍従たちが丼の乗ったワゴンを押してくる。
丼! 東でも庶民に人気のカツ丼、卵丼、うな丼!。
てか! 東の辺境伯のアンテナショップのお食事処のマークが入った丼?
アイン殿下や宰相は何コレみたいな顔してるがウチの特産品です。
美味しいですよ、ニヤニヤ。
今回はカツ丼のようだ、丼ものマイスターの俺の鼻にかかれば蓋がしてあっても匂いでわかる! 久しぶりのカツ丼。
夜の仕事が多い俺は時間が合わず店では食べられなかった! くううぅ米だよ米!
ホカホカご飯に柔らかく煮たカツが乗ってる。玉ねぎで煮た出汁に醤油、卵は半熟。
下の米に染みて照り照りの出汁色をしている。
王子達と辺境伯や宰相の前に丼、カトラリー、汁物椀と順に置かれる。
俺ら使用人は後で食べるよう控えに取ってあると、侍女がこっそり教えてくれた。
ありがとうシュヴェールトヴァール卿! ゴチになります。
だが、アイン殿下は一人胡乱な顔をして俺を見ていた。
アイン殿下?
手元には丼と箸。
ツヴァイ殿下は慣れた手つきで箸を使っていたが…。
俺はアイン殿下が箸を使って食事をしている所を常々見たことがなかった。
しまった! 東と南の辺境ではメジャーなカトラリーのお箸だが中央の王都ではほぼ箸を使うような料理はない。
箸を使う料理が出るのはウチ東の辺境のアンテナショップの食堂と踊る焼肉亭ぐらい。
慌ててワゴンにあったフォークとナイフを後ろからそっと殿下の脇に置く。
気配に振り返って俺を見上げる殿下が不思議そうな顔をしていたので、ついつい頭をぐりぐり撫でてしまった…食事中なのに。
いっぱい食べて大きくなってください、殿下。
殿下が眼を見開く。
あれ? 強く撫ですぎた?
ちょっと悪いなと思っていたら、ブー垂れた殿下、上目遣いで一言。
「不敬」
いただきましたーご褒美です。
可愛いです(笑)
そのまま前を向いたアイン殿下の広角が少し上がっていたのは俺は見えていなかった。
殿下が密に「ありがとう」と呟くを聞いただけ。
だが、聞こえたその言葉で、昔…昔々、思い出せない程古い記憶の古傷がずくり、と疼いた。
火の玉:バトルフィギュアってなに?
肉:戦う生き人形。
火の玉:怖!
雷鼠:ぴきーー!
肉:人形の首コロすると殿下の首が…
雷鼠:ぎゅぴーーー!
火の玉:それ、呪いの人形!
猫:呪いのとか違うにゃん、殿下の型取ったゴーレムにゃーん! 身代わりとも関係ないゴーレムにゃん
猫:…夜中に動き出す奴にゃん(ニヤリ)
魔眼ちゃん:夜中は普通に仕事中だから動いていても大丈夫。
猫:ゴーレムも仕事するにゃん
ゴーレム:おサボりは許しませんプス ー!
肉・雷鼠・火の玉:プスプスプス! ギャーー!!!




