◎不夜城 夜明け 王子様の王宮内生存戦略《サバイバル》①
いつも読んで頂きありがとうございます。
バリエん家の〈シュピーゲルング商会〉もアイン殿下側に付きます。
はい、王位継承権争い激化の様相を呈してきました。
華麗に王宮内サバイバル、勝ち残るのは誰か。
手を変え品を変え、襲撃は続く予定。
◎推しのぬいを量産したい野望。
眠いのですね アイン殿下、おつかれさまです。
殿下のおやすみを邪魔しないよう静かに殿下の離宮に帰ってきたのだが……。
離宮の応接室、ソファやテーブル一面に並べられた黒い生地。
一目で高級品とわかるそれらで部屋は夜の怪しい風情を醸し出していた。
なんかバリエ達座らせてシャンパンタワー並べたら似合いそう…早朝だけど。
「ドンペリ入りまーす? 」
思わず前世の決まり文句を呟いたのを殿下に聞かれた。
宰相に抱きかかえられたままの怪訝そうなアイン殿下。
「ドンペリってなに?」
こそっと宰相に確認。
微妙な顔の宰相、無言。
そりゃ宰相も知らん。
「あー東の辺境にある、お姉さんがイケメンと楽しくお話し出来る飲食店で出される一番高いお酒の名前……グブふぅ! 」
ナニカを察したバリエに口封じされた。
「なんでもアリかよ、東の辺境」
すまん、ホントに東の辺境にある店だよ。
何でもありそうだけどないものはない。
すみません、ついつい現状を見て思いのままを口にしました。
宰相閣下も此の現状の状況が掴めてないよう。
なんか知らん双子の子供いるし?
俺の横でバリエが頭を抱えて屈みこんだ。
「兄様! ご覧ください、父上が商会にある高級生地をありったけご用意してくれましたぁ!」
バリエの関係者か。
「この機を逃さずモノにするよう、会頭の厳命です! 」
地べたにめり込むバリエ。
「兄様! おはようございます。 殿下のぬい見ながらデザイン考えるとテンションあがります! 」
ととと、部屋の奥から同じ顔、同じ服のもう一人が大きいノートを開いてバリエに見せる。
子供服のデザイン画か、アイン殿下にそっくりの子供がゴージャスひらひらの服を着てる絵。
上手いね絵、殿下にあった事ない筈なのに?
多分バリエの妹弟、と布地を並べ興奮状態の小エビ嬢。
「殿下! これだけあれば準喪服、正喪服、普段着からパンツまで作り放題です! 」
全部黒だけどな。
てか、小エビ嬢…帰らなかったのか、徹夜明けなのかテンション高いな。
「申し訳ありません殿下! 」
バリエが土下座する勢いで双子を制している。
あれ? 男女の双子だって前に聞いたような…?
14歳前後位か、前世でいうゴスロリっぽいお揃いのフリルとリボン満載の灰色のワンピースに踝が出る長さのスカート、貴族は子供でも足首など出さない。
この辺は庶民ということなんだろう。
でもお高いレースで足首隠す靴下はいてるところはお金持ちのお嬢様、どちらかが男の娘。
「お前たち! 挨拶が先だろ! 首を垂れろ! 平身低頭! 」
おま…それ首切る時の合図じゃねぇか?
軍隊の号令のような掛け声をかけるバリエ、慌てて素が出てるのだろうか? 普段は女性に甘々なのに。
「挨拶はいい、直答を許すからせめて自己紹介をしてくれ」
殿下、言いながら頭ぐらんぐらんしてる…眠いのにボケとツッコミが…、ホント申し訳ありません。
こてん、と宰相の肩に頭をぶつけて寝そうになるのを必死で耐えている殿下に睨まれる。
「シュピーゲルング商会の会頭が一女、ミア シュピーゲルングです」
「シュピーゲルング商会の会頭が三男、ルカ シュピーゲルングです」
因みにバリエは2男だそうだ。
揃いのカテーシーは貴族でも通用する、凄いなシュピーゲルング商会、庶民なのにそこいらの王族貴族より教育されてる。
ルカと名乗った男の娘が眼をキラキラさせてねむねむの殿下を見ている。
あれ? この目、さっき散々見せられたような…? 死体安置室での既視感。
「此度は我がシュピーゲルング商会をご指名頂きありがとうございます、お客様のご満足いただける仕事を心掛けて誠心誠意、全力で喪服作りに励みます。」
おおう。
第三王子と同じ年回りなのに平民の子供の方が礼儀正しい。
殿下はジッと聞いているようだが多分聞いてない…頷いているのは聞いている訳ではなくコックリこっくりしてるだけ。
あれ…ん? デザイン画描いてたな…ぬい?
ぬい見ながらって…。
ぬいって……?
殿下のライディングデスクの上に殿下の人形が出てる!
アイン殿下DX、Vr32 三頭身で頭が大きいのが可愛い大人の手のひら3つ分の羊毛フェルト&中綿製 が。
バリエと俺が心のなかで絶叫した。
アイン殿下の極秘事項。
魔装工兵のアイルが呪物や魔法攻撃を躱すため作った殿下の身代わり人形(着せ替えお洋服付き)、殿下が遊ぶためではありません、いや遊んでもおかしくない年令だけど。
戦闘メイド! 可愛いからと飾らないでくれ! アイン殿下凹むから! 殿下のココロの平穏のためにちゃんとしまっといてくれ!
人前に晒す所に置かないでくれ。
俺がココロの中で絶叫してる間にバリエが動いた。
脱兎のごとくライディングデスク上のぬいをひっつかむと捧げるようにお尻を持ち、アイン殿下の寝室のベッドに投げ込んだん。
おい…。
アイン殿下には大事なことなので二度言います。
殿下、お人形遊びなんかしていません?
別に年相応でかわいいと思うけど殿下は恥ずかしいらしい 次はバトルフィギュア風のモノを作って貰いましょうか…?。
ゴン!
バリエが証拠隠滅に寝室の扉を閉めると同時に寝室から何か重いものが割れるような音がした。
…可愛くない音。
バリエが閉めたばかりの、扉の横の壁に張り付いて中の様子を覗う。
殿下と宰相はバルトと戦闘メイドに囲まれてドアから死角の部屋の隅に移動、侍従は双子と小エビちゃんを守るように壁際に誘導する。
『バリエ、場所移動』
手指さしで場所移動を指示すると心得たバリエ、ドアの開かない方に張り付く。
突入は俺、その前に殿下に指示を仰ぐ。
可哀想にねむねむの所、何度も起こされてる。
不機嫌顔。
『部屋に人気はない、魔力跡は少し、呪術だったら分からない』とのこと。
殿下の魔眼チートで便利そうで、そうでもない 人の気配や魔術跡や種類を探るのは得意だが複合魔術や呪術は経験値の足りなさから解析できないことが多い、その解決策としての〈身代わり人形〉。
先ほどバリエが寝室に投げ込んだ人形、多分悲惨なことになっているだろうなぁ。
バリエに合図を送り、勢いつけて扉を開ける。
転がり込むように物陰に隠れて索敵、人の気配も何か動く気配もない と、きっかり3秒後バリエも同じように扉の隙間から転がり込むが、やはり何も動かないので立ち上がって周囲を見回す。
あれ? これ、火薬の匂いじゃね?
薄暗い部屋のベッドは何か焦げたようなにおいを発しながら斜めに真っ二つになっていた。
火薬の匂いは前世で嗅いだことがあったのを今世まで覚えていたのか。
ろくでもない俺の前世が役に立ったかと複雑。
丁度ベッドの中央に置いてある殿下ぬいも胸元から斜めに真っ二つになっていた。
「で…殿下、なんてお労しい姿に! 」
「卿、縁起でもない事言わないでください 卿の好きな〈フラグが立つ〉じゃないですか」
いや別に好きじゃないけど。
ベッドの布団を中心に焦げで魔法陣が描かれ、その中央に人形があるが人形は焦げてはいなかった。
魔法陣の欠けた部分をナイフで切り割いて中を見ると綿に黒い糸で刺繍がほどこされ、その燃えなかった部分を推測すると発火か爆破の魔法陣で火薬で焼いて発動させるものと推測される。
黒い糸 匂いからして多分火薬がしみこませてあるのか。
この世界、余り知られてはいないが火薬がある。
が、大容量でぶっ放せる魔法のせいで武器としての認知度が低い、せいぜい魔物退治の時に奇襲をかける花火に使用する位しかない。
「すまん、呪物は私にはわからない」
扉の向こうでこちらを覗いているアイン殿下が宰相の腕の中で済まなそうに呟いた。
いいんですよ殿下、なんでも殿下が解決しなくても、もっと部下を頼ってくれれば俺たちは存外の喜びですよ(笑)。
「今日は別の部屋で休みましょう、アイルを呼んで現場検証をさせます」
こくりと頷く殿下の横からひょんとアイルが首を出す。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! 」
殿下の横で一周、ダンス付きの登場。
うぉい! いつの間に。
「アイン殿下ぬいDX Vr33が破壊されたのを感知して急いで駆けつけたよ」
Vr32だよ、制作者が数間違えるなよ。
図書館棟で別れてから大分経ってないか? どうやって…と、アイルの後ろにロボットダンスのようなぎこちない動きの魔導士ヨナス・バッハが…。
もしかして、あの前世で見たようなスケボー魔術でぶっ飛ばして来たのか。
アイルに振り回されているということは…見込まれたか、哀れな なむなむ。
多分筋肉痛? でげっそりしているバッハ氏を片手で拝む、申し訳ないな でも助かった
バッハ氏、拝まれてびくぅと痙攣…怯えてる? 。
神様拝むのとは違う前世の拝み方だからな ついやっちまったがこの世界では通用しないんだろう。
アイルには緊急時のみアイン殿下の魔術顧問をしてもらっている。
殿下では解析出来ない魔法陣や呪いの解析をお願いするため、正規の魔術顧問は誰もやりたがらない故、苦肉の策だ。
ちくせう。
「この魔法陣は気になるけど、先に殿下のお使いになる部屋の確認をしましょう」
殿下付侍女のライラー嬢がぼっと立ってる野郎共に建設的な意見を言ってきた。
はーい、殿下のお部屋チェックの時間です。
探しモノは不審物ぅ〜♬ 見つけにくいモノでした〜♪
まあ、陛下の魔眼、俺とバリエの索敵があれば……。
「不審物チェック、舐めんな」
ライラー先輩の殺意メガ盛り。
戦闘メイドと呼ぶと静かな怒りを見せてくる怖い侍女だが殿下の状態を優先できる有能な侍女。
サーセン、調子こきました。
気がつくと殿下こっくりこっくりを通り越して宰相の腕の中でぐるんぐるんになっている。
ヤバ、寝ましょう殿下!
安全確認しました、てか、戦闘侍女が留守番していたんですから……していてベッド破壊されましたが…。
「まだ、だ い じょう ぶぃ」
大分呂律がおかしい! のに我慢しないでください!
殿下気付いてないのかもしれないが部屋中の大人が殿下の一挙手一投足にハラハラしてる。
「喪服… 生地 選ん でデ ザイン選ばない と先に進め ない…」
黒い生地を片づけようとしていた双子がハッとする。
「式典ま で になんとか しないと」
ルカ シュピーゲルングが感極まって殿下を拝んでいる 膝を付いて両手を胸ね前で組む、女神への祈りのポーズ。
殿下、オトコノコだけど……。
「殿下、我々のような下々のモノにまでお心使いありがとうございます」
なんだか居た堪れなくなってるバリエを見る。
両手で顔を覆うバリエ、項垂れる。
よしよし。
そんなやりとりの間に双子姉がゆったり椅子にクッションを沢山詰めてここにお座り下さいと誘導する。
「生地をあててお色を確かめますので身体を伸ばして寝て下さい」
全部黒の生地だけどな。
てか、生地選びってそんな感じですか?
宰相がゆっくり殿下を椅子に座らせると、生地を進めるような数え歌のような歌を歌いだした。
「?」
子守歌のようなゆったりとした旋律に殿下、5秒で堕ちる。
そっと付属のオットマンに足を乗せ、靴を脱がせ、上着を脱がして毛布を掛ければおやすみ殿下が出来上がった。
「「?」」
むふーんと自慢げに腰をそらす双子。
「妹は精神系の魔法スキル持ちなんですよ」
ぐっと妹にサムズアップする兄、バリエ。
お前も立ち直るの早いな。
うん、兄妹仲いいな、平民の兄妹で揃って魔法スキル持ちって貴族でも滅多にいないのに。
平民出身と言いながら貴族の子息と間違えられるバリエ、妹弟見ても貴族っぽい、うーん。
辺境伯とはいえ家格が侯爵家と同様の俺ん家より、王家の第三王子より貴族。
ううむ、謎は深まるばかり。
バリエの家系を愚考していたらアイルに袖を引かれる。
「寝室は一通り現場検証終わって状態保存の魔法かけたから、この部屋に盾の魔法宜しくにゃ」
「部屋全体? 」
「この部屋全体」
「盾はいいけど、この部屋で殿下におやすみ頂くには煩くないですか?」
うーんとネコのヒゲゴシゴシポーズのアイル。
「衣装部屋は?」
うーん、アイルに猫の髭はないのにコシコシ。
「分散したくないニャン」
バリエが不思議そうに俺らを見ている。
アイルのヒゲコシコシポーズの時の発言は従った方がいいと、俺のゴーストが囁く(笑)。
「じゃあ俺、殿下の側で防音の結界はりますか」
かくしから防音の魔道具を出す。
「頼む」
「バルトは騎士団統括局副長に報告、部屋前に衛兵置くよう連絡、殿下はいつも通りお休みと。」
「承知しました」
敬礼するバルト、こうしてみると普通の護衛騎士なんだが評価は何故かイマイチ。
なんでかなぁ。
「ヨナスも連れて行って、魔法攻撃の説明いるでしょ?」
アイル、トンと傍らにいた魔道士師を押し出す。
え? と、いう顔のヨナス バッハ。
数時間前に副長に捕縛されかけたせいか顔色が悪い。
「行ってこーい」
ヨナスにガチャリと魔道具の手枷を嵌めた。
「何やってんだ!」
流石にアイル以外慌てる。
ヨナス氏、助けを求めてアイン殿下を見るが殿下、爆睡中。
神はいなかった。
「面倒な連中に会った時の用心、パチモンだから制約も拘束もしてないし、すぐハズレるニャン」
アイルが合わせた握り拳を離す動作をする。
真似るヨナス氏、ガチャりと手枷が外れる。
「捕縛されたら俺が引き取り行くニャン」
全然安心出来なそうなバルトと、半泣きのヨナス氏が部屋を出る、と アイルが楽しそうに呟く。
「さあ! 皆で楽しく作業開始だにゃん!」
なんのだよ!
火の玉:子供キャラ多くね?
肉:東の辺境伯家は八人兄妹だぞ?
雷鼠:王子王女で5人。
肉:南の辺境伯は長男、妹全部で四人。
雷鼠: シュピーゲルング商会は四人兄妹。
子供だけで21人……学園モノか? 。
雷鼠:忘れちゃいけねぇ、ピンクのお花畑娘も。
少人数クラスひとクラス分! でも学園関係無し、全員は本編に出ません。
今度は宰相の影が薄い?




