◎閑話休題 筋肉は裏切らない 祿 密約
次から本編に戻ります。
本編のアイン殿下は10歳、ハシビロコウ属性に磨きがかかります。
この話の時は6歳、まだ国王陛下が元気にヤンチャしている頃です。
「自分の息子が襲撃されたのに見舞いにも来ない」と宰相に顰蹙買ってます。
◎アイン殿下後援会(仮)② オチを探している。
男5人(内一人六歳児童、宰相の膝上)+騎士団統括局副長傘下の騎士が三人、更にミネルバ卿らアイン殿下の護衛騎士三人の計11人の野朗の筋肉が厚い。
副長の部下の騎士達と呼ばれた護衛騎士の3人は立っていたがそれでも円卓を囲むその部屋は狭すぎた。
アイン殿下、宰相以外筋肉である。
三人の昼肉の残りの肉もワゴンで召喚されている。
…まだ三分の一も食べてない。
人間含め、部屋は肉ぎゅうぎゅう。
むさい。
周りはむさいけど温め機能の魔石入りの肉皿からは香ばしい香りが漂ってくる。
昼時…お昼まだなのか?
肉の横に立つ騎士達からは殺気が漂っている。
肉に対して。
「紹介するよ、私から向かって左側、眼鏡のインテリっぽいのが東の辺境伯ことミネルバ伯爵家の次期総領のパウル ルーカス ミネルバ、色黒肌に金茶っぽい髪のナンパ男が南の辺境伯 ヨナス エリアス シュヴェールトヴァール卿」
酷い紹介の仕方じゃないか? シュヴェールトヴァール卿は誰にも聞こえないようにぼそりと呟いた。
南の辺境は海の幸と砂漠とドラゴンライダーが有名なトコロ。
王都の西の港と東の港、南の港を繋いで物資を運ぶ航路の関係上、辺境伯同士実は仲がいい。
港を持たない北の辺境伯は別にして。
インテリ眼鏡と紹介されたミネルバ家長男と四男の目が合う。
(一兄、久しぶりに見たなぁ 王都に来てたんだ。)
(二兄は王都のタウンハウスに住んでいて職場も一緒なので会う機会は多いけど一兄は王城でもタウンハウスでもほとんど会わない…何処に泊まっているのだろう?) 謎多き長男…。
「こいつらはアイン殿下の護衛騎士、眼鏡が私の弟の ディーオイレ ミネルバ、たれ目がバリエ シュピーゲルング、シュピー商会の三男坊だそうだ。 赤いのはバルド スキャン オストーゼ、オストーゼ家の次男坊だな」
(本当に雑な紹介だな二兄、そんなんで騎士団統括局の副長良く務まるよな)ため息のミネルバ卿。
(というか…アイン殿下の護衛騎士…まだ護衛騎士なんだ)
少しほっとしてるミネルバ卿、が。
「三人は第二水色騎士団から第三藍色騎士団に移動となる」
ほっと油断してた今、崖から度突き落とされた。
ディーオイレ ミネルバの瞳に剣呑な光がやどる。
(やはりアイン殿下の護衛騎士から外されるのか)
「チッ!」
ミネルバ卿の舌打ちは集まったメンバー全員に聞かなかったことにされた。
バルトとバリエはそんなミネルバ家兄弟のやりとりと四男坊の動向ににひやひやしている。
特にバリエはミネルバ卿のバーサーカ化からセミファイナルで断末魔の大暴れで足、押さえつけていた当事者だった。
因みにその時受けた打撲が二の腕やら脇腹にまだ青痣として残っている。
ミネルバ兄弟にとっては単なる兄弟喧嘩でも他の人間にとってはバーサーカーの暴走、それも一人ではない下手したら3人、怪獣大戦争だ。
いい迷惑だとバリエは天井を仰ぎ見る。
ギャワウォーと、雄叫びの幻聴が聞こえて来た様な気がした。
そんな部下の心情を読んだのか、にやりと統括局の副長が嗤う 嗤い方が邪悪。
「第二水色騎士団は一部を除いて全員第三藍色騎士団に転属になる」
はい?
「今の第三藍色騎士団はやはり一部を除いて第二水色騎士団となる」
一部とは?
お偉方に睨まれて降格させられるのは3人だけでは?
「第一・二も第三も地位、給料はほぼ変わらない 便宜上分けているだけだ」
吐き捨てるように呟く副長…何か溜めてらっしゃる?
「それを勘違いした肉壁の覚悟もないクソ貴族共が第一や第二に行きたいだのうるさく騒ぎ立てるので、奴らを第二に移して第三を精鋭で纏める」
ああ一部とは。
副長、フフフ…と嗤ってらっしゃる、これ同僚のミネルバ卿が何かたくらんでいる時の顔と同じだ。
「護衛任務も第三にシフトするから仕事は変わらないぞ」
はい、肉壁、皆分かってます、あんたも高位貴族だろうと疑問に思うほど副長、悪い顔でございます。
そんな騎士統括局副長を見てバルトとバリエは同じことを考えていた。
チンピラ感がミネルバ卿とそっくりじゃね?
八人兄弟だったよな? 皆こんな感じなのか。
風評被害のその脇で当のミネルバ卿は別のことを気にしていた。
さっきから鬱陶しく視界の端で動く人物、南の辺境伯のナンパ男、若きシュヴェールトヴァール家当主のヨナス エリアス シュヴェールトヴァール卿。
ミネルバ卿達と一緒に運ばれてきた肉を興味津々で眺め、照り焼きハンバーグの皿にスプーンを突っ込みたれを味見したりしている。
確かに騎士団内部の話だから聞かなくても良いんだろうけど空気読まないタイプか。
あ、味見したスプーンはちゃんと下げてもらうんだ。
肉は食べて空いた隙間を寄せたり野菜を足したりして見栄えよく盛りなおされていた。
ふむふむと添え付けの丸パンを二つに割り、トングで器用にレタス、ハンバーグ、目玉焼きを順に乗せ最後に東の辺境謹製マヨソースを乗せてパンで挟んだものを2皿作っている それ、オレらの肉っすけどと、注意したいが副長の話を折ると後がうるさい。
銀の皿二枚にバーガー一つづつ乗せる。
魔獣肉照り焼きバーガー! もう一つはダブル肉にチーズダブルのダブルチーズ照り焼き!
じゅるり
更に皿に山盛り細切りポテト乗せた、芋をふかして細長く押し出した奴に薄く衣を付けて揚げた芋。
ミネルバ卿が心の中で叫ぶ。
(ちくしょー! く…口が照り焼きの口になってきた) じゅるり…。
双方の皿に山盛り盛った芋とバーガー、シュヴェールトヴァール卿、一皿はアイン殿下のテーブルに置くとにっこり食べる様に進めた。
「アイン殿下は鑑定眼をお持ちと伺っておりますが毒見は必要ですか?」
毒見が必要かと言うより見たことない食べ物をどうして良いか分からないようだ。
シュヴェールトヴァール卿は肉の傍らにあった切り分け用ナイフでバーガーに切り込みを入れてヒョイとつまみ食いをする。
手掴みかよ、おい。
ついでと、傍らの紙ナプキンでクルリとバーガーを包んで殿下に差し出した。
港の屋台で食べ物売る時、汚れないようにくるんでいるのと同じ。
ん?
いつの間にかミネルバ兄弟、三人同じような顔でアイン殿下とシュヴェールトヴァール卿のやりとりをみている。
魔獣のミーア・ミーアキャットルか?
思いたったその姿にバリエは怪獣大戦争より恐怖する。
子供の頃、ミーア・ミーアキャットルの罠にハマって集団につつかれた事があった、トラウマである。
魔獣のミーア・ミーアキャットル、背伸びして立ち上がった猫のようなイタチのような生き物で集団で地面に巣穴を作って棲んでいる。
何体かで巣穴から頭を出してそろって周囲を索敵する様は可愛いという人もいるが…凶悪な肉食獣である。
そんなミーア・ミーアキャットルに似ているミネルバ兄弟も凶悪だとバルトは気付いていた。
何か罠を張っている…?
シュヴェールトヴァール家もやはり子沢山で5人兄妹の4人が女の子。
そんな妹達の面倒を見てきた長男は小さい子をほうっておけなかった。
昼時に子供は我慢できないだろうと殿下に丸パンサンドを作って差し出したのも元来の面倒見の良さからだろう。
可愛い。
もっきゅもっきゅ食べるアイン殿下。無表情ながら目がキラキラしてる。
…良かった、美味しいんだ。
ほっこり。
アイン殿下にほっこりしながら自作のダブル肉マシマシチーズバーガーを食べるシュヴェールトヴァール卿。
しかしそんな卿の後ろにそっとミネルバ伯爵家の長男が迫る。
「可愛いですよね、アイン殿下」
耳元で囁かれ、ぞくりとして振り返ると至近距離ににやりと嗤うミネルバ伯爵家長男。
上目遣いで二人の様子を見つめながらも、もきゅもきゅ照り焼きバーガーを食すアイン殿下は子供好きには可愛さ天元突破だった。
殿下の属性がハシビロコウ属性でも。
ズキューン!
シュヴェールトヴァール卿に何かが刺さる。
南の辺境伯家長兄、妹を嫁にやりたくない溺愛系。
しかもシュヴェールトヴァール卿、弟も欲しかった。
「図書館棟修繕に関してどんな建材を使おうが予算オーバーした分はミネルバ家で出します 守備、強度を最強にしますから今度襲撃されても安心、安全な図書館棟をお約束します」
にちゃりと嗤うミネルバ家長男、シュヴェールトヴァール卿にとってはホラー案件。
「今は何もしないでいいんですよ、黙して語らずでいてくれれば」
学園でも学年が違えど辺境伯長男同士、結構仲良くやっていたがこいつは得たいが知れないというのがシュヴェールトヴァール卿のミネルバ家長男の評価。
シュヴェールトヴァール卿以外の人間からは爽やかな好青年で通っているところがタチが悪いと。
ふと、気が付けばミネルバ家の次男と四男が長男と同じ顔をしてこちらを視ていた。
四男はとてもいい笑顔で親指を上げてサムズアップしてきた。
〈〈〈アイン殿下、推し仲間認定〉〉〉
違うから! シュヴェールトヴァール卿は叫びたかった。
アイン殿下は地雷だと引退した両親にも注意されている。
次期国王になれば優秀な人材だが側妃や貴族派の敵が多すぎた、派閥も宰相家位しかない、そんな派閥に入るには危険だと。
南の辺境伯家は中立。
「今はこのまま中立で、いざという時に支持してもらえれば」
と、長男、一生懸命もきゅもきゅ食べる殿下を前に言質を取ろうとしている。
卑怯な!
アイン殿下が聞いている所で!
上目づかいでもきゅもきゅしている殿下と眼が合う。
可愛い。
シュヴェールトヴァール卿、ヤバイと思う前に首を縦にふっていた。
にんまりするミネルバ家長男。
すまねぇ親父 ハニトラに捕まった…。
アイン殿下はバーガーを食べ終えて山盛りポテトに移ろうとしたが、やはりどうやって食べていいのかわからないらしい。
躊躇するアイン殿下に苦笑しながらシュヴェールトヴァール卿がポテトを摘まんでアイン殿下の口元に持ってくる、条件反射のように殿下がぱくりと口に入れた。
殿下の眼が輝く。
ほっこり。
美味しかったなら良かった。
毒を食らわば皿まで! ヤケになっている。
手づかみでどうぞとシュヴェールトヴァール卿が勧めるのをコクコクとうなずきながら手を伸ばす。
と、ポテトの乗った銀の皿に影が走った。
自分の顔が映っているのだが髪の毛の中で何かが動いている。
顔を上げてシュヴェールトヴァール卿を見上げると卿の後ろで口元にヒレを充ててポーズを取るシャチがご機嫌に揺れていた。
…シャチか…。
アイン殿下の魔力が幻視を可能にする程度まで回復した証。
振り向くとミネルバ家長男は白いメンフクロウ。
次男は眼付きの悪い鷹がそれぞれ頭に乗っている。
では自分は?
急いで室内に鏡を探すが見当たらない。
先ほど銀の皿に動くモノが映っていたのを思い出す。
ポテトの銀の皿の空いた部分に映った自分の銀髪まじりのアッシュグレイの髪の中にひょいと何かが動いた。
実物大の眼球サイズのものに小さな胴体と手足をつけた…二頭身のぬいマスコットのような。
眼玉。
それも赤に金散る眼玉…。
銀の皿越しに目が合うとそそくさと髪の毛に紛れて隠れる。
呆然と皿を見つめていたらまた、ひょっこり髪の間から顔を出して恥ずかしそうに俯く。
眼玉。
……そうきたか。
アイン殿下、とりあえずポテトをまぐまぐするしかなかった。
美味しいけどちょっとしょっぱい…。
これが黒歴史の味…。
バリエが聴き留めていたらきっと突っ込む。
(そんな訳あるかーい!) と……。
ステーキ肉(以下、肉): 殿下のマスコット爆誕!
雷鼠: ヂュウ〜!
火の玉小僧: なんて呼べば?
肉: 魔眼ちゃん?
肉: 俺の魔眼が疼く…(目を押さえ怪しく呟くステーキ肉、お前の目玉は何処だ…?)
雷鼠: はい! ステーキ肉、教育に悪いのでOUT!
肉・火の玉: 雷鼠、お前話せたのか!




