祝賀会にて
王太子妃殿下をみては倒れそうになる私を、旦那様は心配気にうかがってきます。
王族の控え室は、しばらく穏やかな空気が流れていました。
広間に招待客達が集まりおえたとの知らせがはいり、私たちは控え室から広間に移動しました。
「国王王后両陛下ならびに、王太子殿下ご家族、第二王子殿下とご婚約者、第三王子殿下と妃殿下のご入場です!!」
入場を知らせる係の者が、広間全体に聞こえるよう、口上を発声しました。
私と旦那様は、第二王子殿下達の後に入場しました。
広間の中央、周りから一段高い位置に私たち王族が並ぶと、国王陛下が招待客に集まってくれた感謝を述べ、その後、王太子殿下たちもそれぞれお礼を伝えて、祝賀会が始まりました。
祝賀会が始まると、私たちの元に沢山の招待客たちが集まってきます。私たちはそれぞれの招待客の相手で大忙しです。
会話の合間にフッと気になる人物がそばを通りました。それは、祝賀会で給仕をしている者の一人でした。
なんだか、見覚えがあるような……?
首を傾げた瞬間!
ーーガシャーーンッ!
「キャァーーーー!!」
「ウワァァーー!」
私たちの近くで騒ぎが巻き起こりました!
あれは、イグレッタ様!?
彼女が倒れているそばに、巨大な魔物、肉食蜥蜴が!
なぜ魔物が国内にっ?!
「衛兵! であえっ!」国王陛下が指示をだします。
「フィオーナ!」
旦那様が、私含めた周囲の人を集めて魔法を使おうとしているみたいです。王族が使う結界魔法でしょうか……
考えている場合ではありません、スっとナイフを取り出し、力いっぱい投てきしました!
当たり前のように、ナイフは肉食蜥蜴に命中!
衛兵たちが守りを展開するより、旦那様たち王族が結界を展開するより、何よりも早く私のナイフが冴え渡りました!
魔物をみて顔面を蒼白にされていた王太子妃殿下が可哀想ではありませんか!
あんな魔物は、一瞬でも王太子妃殿下の目に入れてはいけませんね。
ナイフの命中をうけた肉食蜥蜴は、そのまま消滅いたしました。
先程まで、怒号や悲鳴で騒がしかった広間が静まり返っております。
「……ッハハハ! 何だそれ凄いな。ナイフで魔物を撃退する人、初めて見た」
いつも少し遠慮がちだった旦那様のくったくのない笑い声。
「何か裏があるんじゃないかと警戒していたが、杞憂だったようだ」
遠慮がちだったのは、警戒していたからだったのね。
「皆を守ってくれてありがとう」
頭を撫でられた!? 顔をあげると旦那様の眩しい笑顔。
「……ッ」
顔があつい……。これはなに!? 旦那様の顔をみていられない。扇で顔をあおぐ。
「皆様を危険から守れてよかったです」
胸がキューーッと苦しくなりました。
どうしましょう、胸の病かしら……。
「……俺はフィオーナに恋をしてしまったようだ」
恋……。旦那様……、私も貴方に恋してしまったみたいです!
私自国から飛び出してよかったです。だって、平穏な生活と恋の両方を手に入れることができたのですもの!
その後、二人は王国の中でおしどり夫婦と語られるくらいに仲の良い夫婦となった。
お読みいただきありがとうございました( ..)"
これにて一旦完結です。
後日談や、リュシオン視点など、いつかゆっくり更新できたらと思っています。