アンゲルス王国へ
皇帝陛下と、アンゲルスの国王陛下との間で親書のやり取りが行われた後。
めでたく、私とアンゲルスの第三王子の婚約が整いました。
私と歳の釣り合いがとれる王子は、末の王子だけだったようです。
王妃になるのは荷が重いので、大変喜ばしいことでした。
今日は私がアンゲルス王国に旅立つ日。
皇宮の外には、竜騎士団が私が来るのを、今か今かと待ち望んでいます。
お姉様が他国に嫁いだときも、竜騎士団を従えていたけれど、他国に対する威嚇行為なのかしら?
あれでは、花嫁が到着した喜びよりも、侵略されるのではという恐怖の方が勝りそう。
侍女たちとともに、竜騎士団の場所まで優雅に歩いた私は、見送りに来ている皇帝陛下や皇后陛下、その他家族に笑顔を向ける。
「皆様、お見送りありがとうございます。私フィオーナはこれよりアンゲルス王国に嫁ぎ、両国の友好の架け橋になれるよう、努力いたします」
「……期待しているぞ」
「私の可愛い娘。なかなか会えない場所に行ってしまうのは寂しいけれど、立派に役目を果たしなさい」
皇帝陛下は言葉少なく、皇后陛下は目に涙を溜めながら激励してくれました。
「お姉様っ! 遠くに行ってしまわれるのは悲しいですわ!」
側妃の横に立っていた妹が走り寄って抱きついてきました!
普段はあんなに嫌味なのに、どうしたのかしら。実は私の事が大好きだったとかでしょうか?
「私もラフィーネと話せなくなるのは辛いです。ラフィーネがこれからも元気に過ごせるよう祈りますね」
「ありがとうございます、お姉様! わたくし、お姉様のために贈り物をご用意いたしましたの。楽しみにしていてくださいませ……」
贈り物とは何かしら? なんだか不穏な気配がします。一応警戒しておきましょう。
家族の見送りを受けながら、私はフレアやその他の侍女と竜騎士団を従えてアンゲルス王国へ飛び立ちました。