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笑顔が似合うキミと生きるこの世界

ガレアは、本当に、一瞬だが、驚き目を見開いた。だが、至極納得した笑みを浮かべ、いつもの如くやれやれと首を振る。


「本当に、本当にキミ達の響きは素敵すぎる。嫉妬してしまうほどにね。だが、それは断るよ。キミらの想いも分かるが、私も、サーロ、ティアラに過去のしがらみ苦しみに囚われず、幸せになって欲しいからね」


「そう言うとも思ってました。だから、最後に僕からお願いが」


「何かな? 新郎サーロくん?」


そういうとアイシャに目配せするサーロ。アイシャは主祭壇の下に隠しておいた翡翠色の剣をサーロに放り投げ、華麗に受け取り、その切っ先をガレアに向ける。


「僕があなたの剣を叩き落とせたら、ガレアさん、僕らの頼み聞いてくださいね」


「……あぁ、懐かしな。……良いだろう……ただし手は抜かないよ?」


「大丈夫! サーロは負けないもん!」


「ではでは〜! デモンストレーション! 皆さん外の広間へお集まりくださいなー!」


広間に出たサーロとガレア、そして見守るティアラをはじめ、来客達。紅蓮の剣と翡翠の剣をお互い軽く触れ合わせ、お互いの想いを通わせる。


「私はこの世界にこのまま生き続けても良いと思っている。例え見える世界は色合いが無くても。この胸に、リュシオの遺志がもう無くとも」


「でも、ティアラから聞きました。ガレアさんの心は、リュシオさんと、ヴィーネさん、あの二人の居場所に居てこそ、彩り心安らいでいると」


「それはそうだね……さて、話し出したらキリがない。ここは言葉でなく、この剣に託そうではないか」


「はい。では……行きます!」


ガレアとサーロの剣戟が始まる。その重なる響きはとても心地好い。互いを想いやるが、自身の意志も揺るがない、澄んだ心の鍔迫り合い。


――あぁ、こんなに成長したんだね。サーロ。本当に、強く、優しく、頼もしくなった。


ガレアは一切手を抜かない。だが、サーロもその重い太刀を去なしながら、ガレアの剣に想いの丈を打ち付ける。


――だからこそ、キミらはもっと自由に、未来に笑顔で過ごせる為に!


ガレアは大きく剣を振りかぶり、渾身の力でサーロの剣を叩き払おうと、一閃。


サーロの首元の渇きの紋様の呪いが、発光する。その刹那は、サーロに種族を超えた膂力が宿った。


そのガレアの渾身の太刀を、サーロは自身の翡翠色の剣の刀身で受け滑らせる。ガレアの力をも、自身の太刀の力とし、受け流した紅蓮の剣の刀身を、叩き斬る。それは、リュシオが最後にみせてくれた剣技。


ガレアの剣が、手元から放たれて、大地に叩き付けられ、滑り転がる。


本当に、予想しないその太刀に、ガレアは、束の間の驚きと、そして悠久の時忘れていた感動で満たされた。


「……本当に、本当にキミらは、この世界は、素晴らしい」


「ガレアさん。僕らを護ってくれて、世界を見せてくれて、ありがとうございました」


地面に転がる紅蓮の剣を、アニムスは拾い上げる。その瞳は微かに緋色と翡翠色が残っていた。


「サーロ。ガレアさん。この剣、僕が貰っていいかな」


「ほう? 理由によっては、許そうかな? 売って金にしたいのだとしたら怒るよ?」


「僕は、この剣を持って旅立ちたいんだ。世界の広さをもっと知りたい。やっと、やっと、それが叶う、そんな日常になったんだから」


ガレアはその声の響きに意識を澄ます。それはまだ何色にも染まらない無垢な白色をした響きだった。


「良いよ。 キミの旅路にも善き縁がある事を」


「アニムス、やっぱり行くんだね」


「うん、僕は、微かに残る呪いと、共生出来る道を探したいんだ。それはサーロもでしょ?」


「そうだよ。今に繋がる過去を切り離すだけでなく、それを今に繋げ、未来に笑顔で暮らせる日々に出来たらって」


「それに! 私はサーロと笑顔だけでなくても! 喧嘩して怒った時も、悲しいことがあって泣き止まない時も、一緒に、お互いを想いやって、最後はやっぱり笑顔になれたらって!」


「だから」


「だからガレアさん、この翡翠を」


「あぁ、頂くよ」


ガレアはティアラから手渡された翡翠色の結晶を、口に含み飲み込む。胸の不老の紋様が翡翠色に発光に次第に薄くなり消えていく。


ガレアは、自分の心の中の風景。煉瓦造りの小屋の中で意地らしく眺めていたリュシオの絵に触れる。今まで色を感じなかったその絵が、鮮やかに彩り広がった。


――あぁ、そうだ。彼は、こんなにも……。


扉がノックされた。外からは少年の無邪気な声と、それに呆れる少女の声が。


――今行くよ。


「世界はこんなにも彩り満ちて、悲しみも、喜びも、溢れていたんだね」


ガレアは白い灰の様に体が崩れ去り、優しい風に導かれ、アバンダンシアの空に舞っていく。


「おやすみなさい。ガレアさん」


「サーロー! 今は悲しむ時じゃないよー!」


ティアラはウェディングドレス姿で意気揚々と駆け寄ってくる。


「そうだね! 笑顔でいてこそ、だからね! 何より」


「何より?」


「こんな素敵に綺麗で可愛いお嫁さんとの結婚式だもん! 楽しまなきゃ!」


「はわっ! 言われると思ったけどやっぱりまだ照れる!」


皆が結婚式の宴を盛り上げようと賑わい始める。その中心には渇きの呪いに魅入られたサーロと、翡翠色の涙流すティアラ。


「ティアラ」


「サーロ」




「「愛してる」」


ここまで翡翠の涙と渇きの呪いの物語を読んでくださりありがとうございます。自身の初の公募用ファンタジー小説でした。自分の原点としてここに綴らさせていただきました。


次の物語に繋げる為にも、宜しければ、感想や評価いただけたら幸いですm(_ _)m


ここまでお付き合い頂き本当にありがとうございます。

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