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紡ぎ繋がる群青の意志

瞳を開く。そこに見えるのは見覚えのある風景。小鳥のさえずり、澄んだ川のせせらぎ、若々しい新緑の草原、そして頬を撫でる爽やかな風、広大な、どこまでも広がる心の世界。久方に思い出す、心地良さ。


「ここは……」


「サーロよ。ここは、お前の本当の、心の形なのだ」


「本当の……」


そこに立つサーロには呪いの紋様は無い。渇きの苦しみも死した者の呻きも聴こえない。その隣にはクラークが、静かに寄り添い立つ。その眼差しは遠く広がっている空の先へ。


「私は、とても幸せな人生を送れた。王都から逃げ放浪の旅の中でも出会う人々に良き縁を感じた。ただ、サーロ、キミが生まれた時、やはり安住の地を与えたくなった。その為には、私達を狙う王都エリュシオンの亡霊から、解放されなければならないと」


「それで……王都に潜入してたんですね」


「あぁ、だが、私一人の力と知恵を合わせても、その遺志は根深く、どうすることも出来なかった」


クラークは拳を強く握り締め、その悔恨の念を押し殺している。


「王都を滅ぼした龍に、我が家系が仕える王族の子の未来を、過去にしがらみに囚われず笑顔で過ごせるようにと、力を貸してくれるよう頼んだ事もあったよ。断られてしまったがな」


「それはなぜ?」


「龍はそもそもこの世の理に干渉しない存在でなくてはならないと、ね。ただ」


「ただ?」


「安住の地の候補として、アバンダンシアの地を紹介してくれたのさ」


「ガレアさんは、お人好しですね」


静かに、微笑みあう、サーロとクラーク。次第にクラークの姿は薄く透けていく。


「サーロ、思い出したかい。キミの心の形を」


「はい……クラーク先生……じっちゃん……僕を護ってくれてありがとう」


「安心したよ……なら墓参りにはお嫁さんも連れてきてくれるかな」


「もちろん!」




「はははっ! これが王都の民の呪いを集めた力か! 心地よいぞ! 渇きの苦しみも怨嗟の呻きもわしを猛らせるだけ!」


「よく言うね! その苦しみはサーロに押し付けてるだけだろうが!」


ガレアは紫紺の帝王サーロの容赦ない猛攻に、サーロ自身の身を案じながらでは分が悪く、攻めきれない。ただ、一瞬の機会を狙う。


「さぁ! そろそろ不老の呪いを頂かせてもらうぞ! 滅龍よ!」


「ガハッ……!」


予想外の重い蹴りを喰らい、流石の龍人とて痛みに耐え、体勢が崩れる。そこに漆黒の剣が、今、まさに、斬り降ろされた。


その手の甲には、光を失っていた、ラビルのまじない宿るベルトが。紋様が翡翠色に強く光り出す。


――お前の言いなりにはならない!


ベルトは急激に収束し、手の甲を強く縛り上げた。剣が握れず手放してしまうほど。


――今!


ガレアは刹那の速さで手の甲を切り裂き血を溢れ零させる。その手でサーロの首の紋様を押さえつけ、上空から床に叩きつける。


「ぁが! ごの……ガキが……!」


「今から賭けにでようじゃないか! 私の不老の呪いに宿る遺志、リュシオの意志を流し込む!」


「な……んだと!?」


「あとは……サーロとリュシオ、キミら次第だ!」


「離せぇぇぇぇ!」


元老に憑依されたサーロの影から鋭い刺の形をした呪いの塊がガレアの身体を突き刺し貫いて行く。


しかしガレアは大胆不敵に、頼もしい笑みを変わらず浮かべたまま、自分の不老の呪いに宿る遺志に語りかける。


――私を介して世界は充分に見てきただろ?そろそろ、キミは、成せなかった父としての役目を、託し繋いでくれた者達の為にも、帝王としての、いや、リュシオ!一人のキミ自身の為に!未練を断て!この子を救たまえ!




玉座の間にて、大喝采を受けている元老のローブを纏うサーロの形をした何か。その影の群青色は、波打ち揺らいでいる。


扉が蹴破られた。現れたのは青年姿のリュシオ。その手には群青色の剣が。喝采が止み静寂が玉座の間を包み込む。


「あーーー、ここまで来たら本音しか言わないぜ」


リュシオは群青の剣を、サーロに向ける。


「テメェ! 元老! やっぱり生理的に無理だ!」


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