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紫紺の帝王サーロ

上空から通る声が厳かに伝わる。捕らえられているティアラ達が声の聞こえる上空を見上げた刹那、紅蓮色の爆炎が炸裂する。その後には燃えて霧散していく呪現獣達。


紅蓮に煌めく閃光が、捕らわれているティアラ達に向かって宙を突き抜ける。そして一閃。三人に纏わりつく呪現獣は霧散し散っていく。


「ガレアさん!」


「すまない、手こずった。だが……」


人型に戻っていたガレアは紅蓮の剣を軽く振り払い、その握りを強くする。


「こうなってからが、ティアラ、キミの頑張りどころだよ」


「はい……!」


「届けるんだ、キミの翡翠を。キミの想いを、願いを!」


「はいっ!」


「アニムスは私達に任せて。あの子も、救わなければいけない。自分自身の為にもね」


「うぅ……! 頑張るよ〜! 心配しないでティアラ〜! ガレアさん〜!」


覚悟を決めたティアラ達に向かって、騎士の姿に変えられたアニムスが襲いかかる。その呪いを具現化した剣をアイシャは翡翠のまじない宿るレイピアで去なす。グリマはおろおろしながらもアニムスを抑え込もうと、気の抜ける声を発しながら飛びかかるが、軽く躱されてしまっている。

黒い球体に囚われたサーロと、それを崇め不敵に笑みを浮かべ続ける元老。

ガレアは地面を抉るほど力強く踏み込み、元老に斬り掛かる。が、元老の正面に黒い呪いの塊でできた壁が剣が届くのを阻む。


「かっ……たいねぇ! 未練がましい事だな!」


「滅龍よ。お主のおかげでワシは知ったのだよ。不遇に陥り亡くした命の思念こそ最も強い力があるとのぉ!」


「元老よ。まったくキミの世界は狭い事だな! 呪いとなってこの地に残り続け何を見てきた!」


ガレアの胸元の不老の呪いが、ガレアの心臓、龍心に呼応し、黒血色に眩く発光する。その光はガレアの握り締める剣に、その手に、力を与える。


「この地には誰かの笑顔の為に、涙を流せる者もいると! 誰かの力となる為に、己を省みない愚かだが、愛おしい存在もいると! その命の響きは貴様の遺志などより遥かに輝いているのだと!」


一閃。


ガレアの紅蓮色の斬撃が、呪いの塊を斬り裂き、元老の首元から斬り払い、滅する。

彼方へ飛び転がり、徐々に霧散していく元老の頭。しかしその瞳は変わらず鈍黄色に光り、口元は満面の笑みを浮かべていた。完全に消えるその時まで。そして、遺されたのはローブのみ。


「ガレアさん!」


「……」


元老を倒し、呪いの儀式から解放されるはずのサーロは、未だ黒い球体に囚われている。


「おかしい……元老の気配は消えたはず……なぜ……」


「ガレアさん……この中にサーロが……! はやく助け出さないと!」


「っ! 待て! ティアラ! 離れるんだ!」


ティアラは黒い球体に駆け寄り、サーロを救い出そうと手を伸ばす。ガレアには、聴こえたくない響きが聴こえていた。新しい存在の誕生の響きを。黒い球体は唐突に収束し、その内側にいた人物に取り込まれる。

そこに現れたのは、サーロ、であった存在。


「サーロ……?」


「……僕は……帝王……民の願いを叶える者……」


その姿は、少年の姿ではなく、数年月の時を経た、青年の姿。背丈も伸び、髪も乱れ伸び、声はサーロ本来の声と、残響の様に重く暗い響きが重なる。

開かれた瞳の色は、渇きの呪いの緋色と群青色の瞳が混じりあった、全てが溶けそうな闇を思わせる紫紺色。


「王都の繁栄を……民の願いを……そして……」


サーロに元老のローブが引き寄せられ、身体に纏われる。


「この私が世界に君臨する永遠の存在に!」


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