帝王リュシオの最後
響く剣戟の叫び。生じる衝撃は辺りの大地を抉り、舞うは砂埃に混じる鮮血。
群青と紅の剣が重く空気を震わせるほどの衝突をし鍔迫り合いする。
過去の少年であったリュシオなら、ここまで龍人に渡り合えるのは喜びに違いなかった。一人のロマンに憧れる無垢な少年のままなら。
しかし、今は違う。彼の身には、多くの人々の強すぎる願いが、思念が、彼に力を与え、彼一人の心で決めたことでは自由に行動出来ぬほどに。皆の為に己の力を使えたら、それは彼の本当の願いであった。皆に笑顔を、と。
鍔迫り合いしながらお互いの表情がみえる。リュシオは険しく、歯を食いしばり、その群青の瞳に廻る紋様はより激しく増していき、群青は深淵を思わせる程の闇色に近づいていく。
ガレアは、ただ、ただ、哀れさと、愛しさを今のリュシオに対して感じている表情であった。それは淡い笑顔。
「キミは、変わらないけど、変わってしまったんだね」
「僕は……いや、帝王リュシオ! 私は! 皆の笑顔の為に!」
さらに群青の剣に力が入り、脈が皮膚から浮き出るほど、瞳は最早紋様に埋め尽くされて、漆黒色に。
「そうか……」
ガレアは紅の剣を手放した。そしてリュシオの群青の剣が自身の身体を切り裂く。鮮血が宙に飛び散る。その刹那、ガレアの龍化させた手が、リュシオの胸元を貫く。それは、致命的に生命を奪う一撃であった。
「これで、いいのかい。リュシオ」
「……」
胸元から手は引き抜かれる。群青の剣が手から零れ落ち、ガレアにもたれ掛かるように倒れるリュシオ。口と胸元から零れ滴り落ちる大量の血。
そして、俯いていた顔をガレアに向けると、あの頃の、ガレアがとても愛おしく感じていた表情が浮かんでいた。
飾らない、彼自身の素直な笑顔。泣きそうだけれども。血にまみれてはいるけれども。
「あぁ……ありがとう……」




