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龍と帝の最後の邂逅

そこは、静かな、木漏れ日に包まれる森の中。一軒の煉瓦造りの風情ある家があった。その中で、紅い髪の毛を編み込み伸ばした龍人が一人。


キャンパスに絵の具を重ねていき、一人の青年の精悍な顔を書き込んでいる。群青色をした瞳を持つ、青年リュシオを。


ガレアは描き終えたその青年の絵に触れる。優しく、輪郭をなぞる。


玄関のまじないを施したベルが鳴り響く。それは、あの大志を抱く、純粋無垢な少年と出会い、剣を交え、言葉を交わし、心を通わせた場所に、来客が現れた証であった。


ガレアは、この時が来てしまったのかと、深く、息を吸い瞳を閉じる。そして、憂いを取り払い、自身の呼称と同じ色合いの紅い剣を腰に携え、玄関に向かう。扉を開き差し込む穏やかな光が、今は心に滲み染み込んでくる。


ガレアは自身の血を媒介にまじないを唱える。それはマーキングした場所に自分だけが一時も掛からずに転移できるまじないであった。


ガレアは赴く。少年リュシオとの思い出の地へ。




そこは赤褐色の地盤に囲まれた広い洞窟。上部には、陽の光が十分差し込むほどの空洞が開けている。しかし今は暗雲立ち込め、鬱屈さと静寂さ、そしてどことなく安穏さに包まれている。


龍人は、その地の中央にまじないの紋様が自身の形となるよう纏まり集まり、赤龍の人型を顕現させる。


洞窟の入口から毅然とした歩みの音を響かせながら、高貴な装束を見に纏った、群青の瞳、群青の剣の象徴とも言える存在、帝王、リュシオが現れる。


「やぁ、久しぶりだね。リュシオ……かな? 随分ふけたね?」


「久しぶりです。ガレアさん」


ガレアは内心とは裏腹に嘲笑するかのような声色でリュシオに話しかける。対してリュシオは、過去の無邪気さ溢れる好青年な声色ではなく、荘厳として重さのある話し方であった。いや、重くされてしまった言葉であった。


「キミの村、いや今は王都かな? 噂は聴いてるよ? キミやヴィーネにかけたまじないを通じて、私にも伝わってくるからね」


「なら、話はこれ以上必要ないですね」


「つれないな。せっかく久しぶりにあったんだ、もう少し駄弁ろうじゃないか、昔みたいに」


リュシオは群青色の剣の切っ先を、ガレアに向ける。そして、変わらぬ覚悟を決めた厳しい表情のまま、大きく瞳を開く。その群青色の深い色に闇色の数多の紋様が巡り這いずり廻っている。それは、王都の繁栄を望むもの達の、生きた思念。そして、それは他を犠牲にしてでも栄華を得ようとする、煮えたぎる熱いエネルギーの塊。


「もう、昔みたいにはいかないのさ。私は広い世界の冒険に心躍らせる少年ではいられない」


ガレアも、瞳を閉じながら歯がゆそうに顔を顰める。集団の意志の力に飲み込まれてしまった、一人の笑顔の絶えない少年だった帝王に憐れみと愛おしさと虚しさを抱く。


「ただ」


「ただ?」


「こんな形でも、あなたとまた剣を交えられるのは嬉しいかな」


泣きそうな、笑顔。少年の頃の面影が過ぎる。


「なら、誠心誠意、受けて立つのが私の務めだな」


ガレアも紅い剣の切っ先をリュシオに向ける。


静寂、安穏、荘厳が空間を埋め尽くす。お互い剣の切っ先を構えたまま。


剣が交わるには合図は要らなかった。


群青と紅の剣が交差する。


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