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少年リュシオと紅蓮色の龍人

「赤龍! ガレア! 今日こそ僕はキミに勝つぞ!」


「なんだい、また来たのかい? おチビさん?」


「な! 去年よりは背は伸びたぞ! それに剣術も磨いたんだ! 今日こそ一本取るぞ!」


「はいはい、私から剣をはたき落とせるかな? リュシオ」


そこは赤褐色の地盤に囲まれた広い洞窟。上部には、陽の光が十分差し込むほどの空洞が開けている。そこに巨躯で居座る紅蓮色の龍の姿が。その正面には群青色の瞳を煌めかせた少年が、銀色の、やや刃こぼれした剣を構える。紅蓮色の龍は呆れた口調でもあるが、どこか楽しげに少年の名を呼ぶと、その巨躯は、まじないの紋様になり次第に解けていき、その中から紅蓮色の髪を長く伸ばした、背の高く、スタイルのよい若い見た目の女性が現れた。その手には自身の髪色に似た紅蓮色の剣を握っていた。


少年リュシオは、剣を携えたその姿をみると、意気揚々と、そして、真剣な眼差しでガレアを見つめ、刹那の静寂、そして、駆け出し剣を振るう。


「やぁぁぁ!」


「ほぉ」


リュシオは少年とは思えぬほど研鑽された剣術で、ガレアの剣に斬りかかる。ガレアは軽く受け流すようにリュシオの剣さばきを弾いていく。


「くっ! はぁ! たぁ!」


「ふむ、去年より剣さばきは成長してるね。流石に一年修行してくると言ったことはあるね。ただ」


しみじみ瞼をを閉じながら、リュシオの成長を褒める。しかしその剣は軽くあしらいつづけ、そしてニヤッと楽しげに笑うと共に、力を込めてリュシオの剣を叩き落とす。


「私には通用しないがね」


「くっ……そぉー! くっそー!」


「まぁまぁ、そう悔しがるでないよ。人間同士ならキミはとても強いさ」


「僕はガレアに勝ちたいのに! あの伝説の龍から一本取った人間として伝説になりたいんだ!」


そう喚いて、大の字で地面に倒れるリュシオ。その姿を微笑ましく優しい目で見つめながらクスクスとガレアは笑う。


「なかなかに大志を抱いているね。いい事だ、大志は人を成長させるものさ」


「くぅ……しばらく挑むの我慢して鍛えたのに〜……。あっ! そろそろ狩りして帰らないと! 村のみんなの為にも」


「キミの村は相変わらず平和かい? 多種族が集いトラブルもありそうだけど」


「平和すぎて! 退屈しちゃうけど! 僕は好きだよ!」


「退屈すぎて、立ち入ることを禁じられいた、私の住処に遊びに来るくらいやんちゃ者だからな。そのうち、広い世界に旅立つ時もあるだろうさ」


「……うん、実は、僕が村で一人前って認められたら、旅をしようと思うんだ。世界を旅して、学んで、経験して、その事を村で活かせたらって」


「人の一生は短い。千年生きる龍にとってはね」


「……そうだね……だから! 生きてるうちに! やりたい事はやりきるんだ!」


「……キミの魂の輝きは、心躍るね」


「……へへっ!」


「リュシオ〜! またここに来てたのね! また狩りサボって!」


「げっ、ヴィーネ……付いてきたのかよ〜」


「げっ、じゃない! ガレアさんに遊んでもらうのはやる事やった後よ!」


「遊んでたんじゃない! 挑んでたんだよ!」


張りのある声でリュシオを咎めるのは、リュシオと同じ年頃の少女。耳はやや尖っている。リュシオとの問答に呆れ溜め息を吐く。その吐息は薄らと翡翠色の光を帯びていた。


「やぁやぁ、クウェンチエルフのお嬢さん? 悪いね、私の暇つぶしに彼を付き合わせちゃって」


「ちょ! 暇つぶしって!」


「リュシオ黙る! ガレアさんも毎回かまってやらなくていいんですから! いいんですから! ね!」


「ふむ、心に留めておこう。 私が彼にかまっていると」


「と……?」


「キミがリュシオとの一緒の時間が減ってしまうからね? ヴィーネ? ふふっ……」


「?」


「なっ! ちょ! それは……そうだけど……言わなくていいんですから!」


顔を赤くして、ガレアに突っかかるヴィーネと、よく状況を理解してないリュシオ。その二人と関わる中で、心彩られる感覚を感じ、自然と笑いが溢れてくる。


「ほんと、よく恐れられているはずの龍人に関わろうとするものだね、キミたち」


「え、会うまでは不安だったけど、あなたの心は全然怖くないし、とても広いから心地よかったわよ。私エルフだからその辺敏感だし」


「僕は……龍だ! すげー! くらいしか思わなかったけど……」


「……単純」


「リュシオはそうだったね! 私を狩りに来たのかと思って脅かして退けようかと思ったけど、拍子抜けしてしまって、話し込んでしまったからね」


「この天然たらし……」


「ヴィーネ?」


「さぁさぁ、キミらも仕事があるのだろ? 今日のところは帰った帰った」


「はい! また来ます! 今度こそ一本とるぞ!」


「はぁ……リュシオ、ま、止めても無駄だからね……私も付き合ってあげる」


「え、いいよーヴィーネ……ここまでくるの大変でしょ?」


「察しろや!」


「?」


「クククッ……ハハハハハッ!」


紅蓮色の龍人と、群青色の瞳の人間少年、翡翠色の力を宿したクウェンチエルフの少女、三人の心音は小気味よくこの空間に響き浸透していく。


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