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アバンダンシアの荒野にて

やや熱を帯びる龍化したガレアの口の暗闇の中で、ティアラは涙を未だに滴らせながら、強く目を瞑り、頭を抱えながら、頭の中でぐちゃぐちゃになった先程までの出来事を理解しようとした。しかし、サーロの顔が浮かぶ度に心臓が冷たい熱に刺されるような心地がし、とにかく涙が止まらなかった。


――リュシオ……。


「……ガレア……さん?」


ティアラは今一瞬ガレアの声が聞こえた気がした。しかしガレアが声を発した訳ではなく、心の声が流れ込んできた様であった。

ティアラは、今のガレアの心に共感しようと意識を集中する。いつもは広い世界が見えるだけであったが、今回は違った。そこは煉瓦造りの一軒家、その中で大きな肖像画が。描かれていた青年は、どことなくサーロに似た雰囲気をしていた。その絵の青年を優しく指先でなぞるガレアがいた。表情までは見ることは出来なかったが、その姿には、哀愁と後悔、そして慈愛をも感じ取れた。


――ガレアさん……もしかして……この人の事……。


「きゃ!」


突然大きな揺れを感じた、ガレアが急降下、いや、落下しているようであった。ティアラは頭を抱え蹲る。


荒野に落ちて衝突する直前、意識を取り戻したガレアは力を振り絞り羽ばたき、着地の衝撃を和らげる。そして着地し終えると、龍化した体は、まじないの文字の塊が解けるように徐々に消失していく。そして、ティアラは無事に解き放たれ、ガレアは地面に伏せ倒れている。


「ガレアさん! 大丈夫ですか!」


「……ケホッ……」


ガレアに駆け寄り心配するティアラ。その周囲に次第に黒い靄が立ち込め、獣の姿をした呪現獣が数体現れた。


「そんな……ここは……ガレアさんっ! どうしよ……!」


呪現獣の一匹が、ティアラとガレアの元へ襲いかかってくる。ティアラはガレアを庇うように抱き抱え、強く目を瞑る。


「グァァァァァ……!」


ティアラは襲われると思ったが、何も起こらない。怯えながらその目を開くと、そこに居たのは。


「アイシャ……先生?」


銀色のレイピアにまじないの紋様が刻まれていた。そのレイピアで襲いかかってきた呪現獣を切り伏せ、今は身動きが取れないでいる。その立ち姿は凛々しい騎士を思わせた。


「グーーーーリーマッ! はやく来なさい! 二人を乗せてさっさとアバンダンシアへ戻るわよ!」


「だって〜! アイシャ先生が私を踏み台にして先に行っちゃうから〜痛かったよ〜」


「急がなきゃやばかったでしょ! いいからはやく!」


「グリマ店長も……」


「わーーん! ティアラ大丈夫〜! 二人とも背中に乗せてくよ〜」


ティアラとアイシャの支えもあり、ガレアもグリマの背中に乗ることが出来た。そしてアイシャは何やらまじないを唱え、指で紋様を宙でなぞると、自分達の回りが薄い蒼色で覆われた。


「今なら呪現獣に感知されないから! ほら! グリマ! 行く!」


「うーん重いよ〜。でも頑張る〜!」


「失礼な! レディしか乗ってないんだぞ!」


「そんなこといっても〜」


そう掛け合いしながらもグリマは皆を乗せてアバンダンシアへと走りを続ける。ティアラはグリマの背中のもふもふ感に心が落ちつき頭の中のぐちゃぐちゃが収まってきた。 そして、伝えなければならない事をハッと思い出し、険しい顔のアイシャに話しかける。


「アイシャ先生! あの、サーロが! 人柱って、 えと、王国のためとか! クラーク先生が、アイシャ先生に伝えって! えと、あと……」


「そう……やっぱり……分かったわ。ティアラ」


「アイシャ先生どうしよう! サーロ死んじゃうの? 私はどうしたら!」


「落ち着いてティアラ。詳しくはアバンダンシアで聞くわ。そして、アバンダンシアの事と、クラーク先生と私達のこと、そしてサーロの事、ちゃんと話さないとね」


「……はい」




「おっかえりー! たっだいま〜! 帰ってきたね! 王都エリュシオン! の残骸!」


「……そうだね」


退廃し滅びた王国の玉座の間にサーロとアニムスはやって来ていた。やや遠くからローブを纏った元老と、兜を被った案内人であった男がその様子を見る。いや、監視している。


「ねぇ! 僕(私)らの残された時間はもう少ないんだからさ! もっと楽しくいい事しようよ! イチャイチャしたり! 触れ合ったり! もっと大人な事とか……」


「アニムス」


「ん〜?」


サーロはどこか寂しげにアニムスを見つめる。アニムスは大きく瞳を開けてとぼけたような笑顔を見せサーロの言葉を聞く。


「キミは……キミの夢は……いいのかい?」


「……」


「だって、キミはあれ程……」


「分かったんだよ。僕(私)はこの王国の呪縛から逃げられない。どうしようもないんだよ。未来なんて望めないって」


「……」


「お話はおわりましたかな? インヒアレント・エンペラー、ニア・エンプレス」


「ちぇー、まだイチャイチャしてないのに〜」


「では、帝王リュシオ復活の為、王国永遠の繁栄の為に、お二人の結婚式の準備を」


「はっ!」


「結婚式〜結婚式〜うふふふふ!」


「……」


――サーロ!僕はね、もし自由の身になれたらね!したいことがあるんだ!


「アニムス……キミには、本当のキミで笑顔でいて欲しかったな」


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