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笑顔よさよなら

「これは……あ、がっ……!」


闘技場はユイガの血によって起動された呪方陣に囲まれ、闇を宿した重い緋色の光に染められて行く。その光を浴びたサーロをはじめ、呪いを宿した者達は、各々苦しみ悶えだした。身体に刻まれた呪いの紋様が、呪方陣の緋色の光に呼応するかのように発光している。


――苦しい……喉が……渇く……裂けそうだ……それに……!


サーロは急激に増大した呪いによる渇きの苦しみに耐える。そして、それ以上に抑圧しなければと、堪える衝動があった。


――このまま、死ぬ、のかな……生きたい……生きたい……! 周り全てを……壊してでも……生きたい……! ダメだ……落ちつけ……!


呪いの、宿された者の生存本能と呼応し湧き上がる自分一人のものとは思えないほどの、破壊衝動。呪方陣により、呪いに宿された思念が、暴走して、溢れ出ている。その強さのあまり、呪いの思念に身体より先に、自分の意志が、心が、押し潰され消されそうであった。


「かっ……はっ……! 他の……方は……がっ!」


サーロは周囲の人達にも性根の良さから、気を使おうと顔を上げるが、突然、何者かが自分の首を凄まじい力で締め付けてきた。その力は尋常でなく、サーロは声が出せず、首を掴む手も振り払えない。サーロは息が出来ず、遠のく意識の中、何とか瞳を開けて、自分を襲う者を見る。


その者は、ホリィーナだった。


「……ふふふ……」


「がっ……!」


「ふふふ、きゃはは! きゃははははっ! どうしよう! 苦しいよ! 止まらないよ! 止められないよ!」


サーロの首を絞める力がより増してくる。サーロは何とか意識を保つので精一杯であった。


「貴方が素敵だから! 触れ合いたいなって! でも、裏切られたくないから! 動かなくなって! 私のモノになって! きゃははは!」


サーロは、霞み、消えそうな意識の中、閉じていく瞳で見たのは、ホリィーナの表情。


「きゃはハハハ! ワタシ、ハ、タダ、フレアイタイ、ダケ、ナノニ、ナ……ゲホッ!」


それは、涙が溢れ、吐血し、壊れそうな、悲痛な泣き笑い顔であった。淀み私欲溢れたギラつく瞳の光の奥に、一点純粋な、健気な少女が泣いている気がした。


――この子も、呪いに苦しめられてるのか……。



サーロの意識は消失した。力無く抗っていた手が垂れ下がる。


――僕が、全部背負えたなら。


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