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歌姫のいる都市

木々が深く生い茂る森の中を歩く三人の旅人がいた。一人は渇きの呪いに魅入られた人間の少年。一人は呪いを癒す翡翠の涙を流すクウェンチエルフの少女。そして不老の呪いを身に宿した龍人の用心棒。にこやかに談笑しながら歩みを進めていく少年少女。後ろから耳を澄ませている龍人は二人の光景を微笑ましいなと感じながらついていく。


「はぁ……この獣人さん達の住む森……素敵だったね……もふもふ……」


「ははっ、ティアラすごいよね。どんな起源の獣人さんにも心通わせて、触れ合えるなんて」


「ウルバルさんの言ってたみたいに、やっぱり起源由来の習性とかプライドとか、別の起源の獣人との確執はあるみたいだったけど……」


「うん。でも基本皆さん余所者の僕達にも親切にしてくれて、ありがたかったね」


ガレアはサーロとティアラの無垢な会話を聞きながら、それはきっと二人の裏の無い優しさ、つまり自分達に害のない存在だという事が獣人達にすぐ伝わったからなのだと。それと、その後ろに彼ら獣人が本能的に恐れる存在、龍人がついているのだ。迂闊なことはできないからね、という事は黙っておいた。


「でもだいぶゆっくり獣人さん達の森で過ごしちゃったね」


「そうだねティアラ。でも構わないさ。急ぐ旅でもない。涙はウルバルくんとの関わりの時にたくさん集まったからね。まだあるだろう?」


「はい! まだ瓶にしっかり入ってます! あ、サーロ今は大丈夫? 苦しくない?」


「大丈夫だよティアラ。この前少し貰ったからあの苦しい衝動は来ないよ。ありがとね」


お互いを真心から気遣い合う少年少女。澄ました耳に聴こえてくるその声を、ガレアは瞳を閉じ、心地良い響きとして感じ取る。自分の中の失った何かを埋めようとするかのように。


次第に進んでいく先から光が射し込み木々が開けてきた。獣人の住む森を抜ける様であった。差し込む強い日射しを手で遮りながら森を抜けた先の光景を視界に入れる三人。


自分達が今いる場所から彼方に見えたのは、アバンダンシア以上に文明が発展した都市であった。高層な建物が幾つも建ち並び、自然よりも人工物が占める割合が多かった。特に少年少女の瞳に飛び込んできたのは都市の中央にスラっと他の建物よりも高くそびえ立つ時計塔と、その周囲に浮かぶ飛行船であった。


「うわぁ~! すごい!」


隠れ里という、自然と共に生きてきたティアラにとっては未知の存在であり、驚きと感動という感情に埋め尽くされた。


「文明の進み具合は土地によって異なるって、アイシャ先生から教えてもらっていたから知ってはいたけど……すごい。たしか……飛行船だったかな? かなり技術力が高い街……というより都市ですね」


「こういう大規模で、人が多く集まるところは面白いよ。多様な人がいるものだからね。そしてそれは私達の旅の目的に対してもありがたい事さ。多く人がいるだけ、涙を流すきっかけも多くあるだろうからね」


ガレアは片手を顎に当て、以前この都市に立ち寄った時の事を思い出していた。


「そういえば……数年前かな? この都市に立ち寄った時に興味深い人物がいたんだよ」


「興味深い人物ですか?」


サーロは頼りになりすぎる用心棒兼剣の師でもあるガレアが興味深く思う人物とはどんな人なのかと気になった。


「ふむ、その人物はね、皆から歌姫と呼ばれていたのさ。まだ初々しい少女であったがね。その頃で今のキミ達くらいの歳だったかな? しかもただの歌姫ではなく、その歌声は心を動かす、とも言われていたのさ」


「心を動かす……それだけ素敵な歌声なんですね」


「私……聴いてみたいな」


ガレアはうんうんと頷き、人差し指を立ててくるくる回しながら二人に今後のプランを伝えていく。


「ではこの都市での目的の一つとして、歌姫のコンサートにでも行こうか。感動で涙を流せるかもしれないからね」


「それならティアラが悲しい思いをしなくていいですし……歌姫の歌、気になります」


「うん! 歌姫さんのコンサート楽しむのと涙を流すの両方できれば一石二鳥だね!」


「そういうことだ。では行こうか。そして都市に着いたらまず」


「まず?」


「お酒が飲みたい……」


ガレアはアバンダンシアから持ってきたお酒を切らしていた。獣人の森ではあまりお酒は流通しておらず手に入らなかったのだ。急にげんなりした態度に変わったガレアに二人は目が点になる。


「お酒……恋しい……」


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