孤高の獣人ウルバル
「おまけで私も自己紹介しておこうかな。私はガレア。龍人族で、ふたりの用心棒さ」
「うおっ! いつの間に!」
背後の木にいつの間にかもたれかかって立っているガレアに驚くウルバル。ガレアは腕を組み、不敵な笑みを浮かべている。二人に手を出さないのは正解だ、とでも言いたそうに。
「ガレアさん」
「いつの間に! サーロ気づいた?」
「ううん、やっぱり凄いなガレアさんは」
「一応これでも用心棒なんでね。異変を感じたらいつでも駆けつけるさ」
「ありがとうございます! でも大丈夫ですよ! ウルバルさんとっても心優しい人みたいですし、もふもふですし!」
和気あいあい龍人と話すエルフの少女と人間の少年の姿に、呆気にとられるウルバル。ふぅ、と息を整えながら三人の会話に参加する。
「しかし……まぁ子供を襲うなんて野蛮なことさらさらする気はなかったけどよ、手ぇ出さなくて正解だったぜ。まさか龍人様が用心棒についてるなんてよ」
「そうだね。賢明な心掛けのおかげだね。もし二人に危害を加えていたら……ね」
不敵に、どこか楽し気に口角を上げ笑うガレア。その覇気に、ウルバルはおろか、サーロとティアラも身が引き締まり息をのむ。
「さ、お互い害の無いことは分かったわけだし、せっかくの縁だ。サーロ、ティアラ、そしてウルバルくんだったかな? 一緒に朝食でも食べないかい?」
「あ、そう言えばまだ朝食の準備もしてませんでしたね」
「おう! いいぜ! お前ら良い奴そうだしな! 久しぶりにひとりじゃない飯ってもんだ! ちょいこの先に俺ん家あるからよ、ご馳走してやるぜ!」
ウルバルは自分が飛び出してきた方向を指さし、厳つい顔ながらもどこか愛嬌のある表情でにやりと笑う。
ティアラはそんなウルバルの顔をじーっと見つめながら、手をわきわき動かしている。その様子をアハハ、と笑顔で見守るサーロ。そしてティアラの欲求を察したもふもふ、ウルバルであった。
「……もふもふするか? 俺の顔」
「いいんですか!?」
「お、おう……優しくな……」
姿勢を屈めて毛に覆われた顔をティアラに差し出す狼顔のウルバル。ティアラは目を輝かせながらそーっと手でウルバルの頬辺りから優しく触れる。
「はぁーーーっ! もふもふっ!」
「あ、ちょ、これ、気持ちいいかも……なんでだ、俺の本能が喜んでるのか?!」
はじめはゆっくりもふもふと、しかし次第にわしゃわしゃと愛でる加減が強くなっていく。ご満悦なティアラ。ウルバルもあながち嫌なわけでなく、むしろ嬉しそうであった。尻尾を左右にパタパタ動かしている。
「ウルバルさんのもふもふは毛質が少し固めで張りがある感じですね! グリマ店長とはまた違った良さのもふもふです!」
「グリマ店長だと?」
もしゃもしゃ顔を愛でられながら疑問をぶつけるウルバル。
「はい! 私達が来た荒野の向こうにある街でお菓子屋さんをしている熊の獣人族の方です!」
「のんびり口調の優しい熊さんです。僕はグリマ店長の作るアップルパイが大好きですね」
「グリマ……荒野の先の街……アップルパイ……」
「どうかしました? ウルバルさん」
ティアラはもふもふする手を止めウルバルを解放する。ウルバルは何か引っかかっているようであった。
「グリマ……そいつ、なんか、お花畑みたいな雰囲気醸し出してないか?」




