顕現する剣
「ほう」
サーロは真摯な瞳でガレアをまっすぐに見据えている。ガレアもその視線を正面から受け止める。口元には笑みがこぼれていた。
「それはなぜかな?」
「僕のために、ティアラはこの旅で危険な目に合うかもしれない。ティアラは……僕の孤独を癒してくれた大事な人なんです。だから僕は護りたい。自分の手で」
ガレアは耳のピアスに軽く触れる。そして瞳を閉じて満足げに微笑む。
「本当にキミ達の心の響きは素敵だね。いいよ。私が教えられることならキミに授けよう」
「よろしくお願いします!」
「さて、戦い方を教えるとなると、キミにも剣が必要だね」
「あ! そういえば剣持ってませんでした……。どこか、この獣人族の住む森で手に入るかな……」
「それには及ばないよ」
そういうと、ガレアは自分の剣を鞘から少しだけ抜き、掌をすっーと切り、血を浮かび上がらせた。そして何やら聞き慣れない言の葉を呟くとその血が宙に浮かび、呪いのような紋様が血の周りを覆っていく。
「ガレアさん……! これは……!」
「今、キミ特製の剣を創っているのさ。これも龍人の力だよ」
そうして、一瞬血が輝いたかと思うと、透明な、ガラスのような剣が出来上がった。ガレアはその剣を手に取り、サーロに手渡す。サーロは両手で剣を握りしめる。
「この剣は、キミの心の響きに呼応して、その色を変え、性質が変わるのさ」
「心の響き……」
「さぁ、キミの想いを強く剣に込めるんだ。何のために剣を使いたいのかをね」
サーロは両手で握った剣を顔の前に構え、瞳を閉じ、強く想う。大事な人を、ティアラを護りたいと。
剣は、サーロが握っている部位から色付き始めた。それはティアラの涙と同じ色、新緑を思わせる翡翠色の剣となった。