獣人族の森にて
夜も深くなる頃、生い茂る木々に囲まれた中に少し開けた場所があった。そこに、サーロ、ティアラ、ガレアは焚火を囲み、ガレアが適当な木を切り倒し作った丸太の上に座る。
サーロとティアラはグリマ特製のライ麦パンをよく味わいながら頂いていた。アイシャが日持ちするようになるまじないをかけているという。噛めば噛むほど味わい深くなり、ティアラは特に美味しく召し上がって満足げである。
ガレアは私の分は気にしないでくれと言い、アバンダンシアで買っておいたお酒だけをぐびぐび飲んでいる。
「ぷはぁ! やはりお酒はいいね。活き活きしてくるよ」
「ガレアさん凄い飲みっぷりですね……」
「サーロ、お酒はまだ進められないが水はよく飲んでおくべきだよ。渇きの呪いはその名の通り喉の渇きも酷くなる。気休めだが多少は苦しみが和らぐからね」
サーロは喉を押さえる。せっかくのライ麦パン。美味しい、とは思えるのだが、やはり喉の渇きのせいで心から食事を楽しめないでいた。
「でも獣人族の暮らす森に今日中に来れてよかったよ」
「ガレアさんのおかげです」
「楽しかったよね! サーロ! 空の旅!」
「うん! 肌に感じる風に、広がる景色!」
「夕焼けに染まった空を飛んでる時、私感動しちゃった!」
サーロとティアラはわいわい空の旅について語り合っている。ガレアは静かに目を伏せ、耳を澄まして二人の声を聴く。
「善き響きだ」
「ガレアさん、何か言いました?」
「いや、今日はもう遅い。そろそろ寝ようか」
横になり薄手の大きな布に体を包んで眠るティアラ。すやすや寝息を立てている。隣で一緒に横になっていたサーロだが、今は体を起こして焚火を眺めている。
「眠れないのかい? サーロ」
ガレアは全く眠ろうとはせず、近くの木に寄りかかって二人を視界に入れ見守っていた。
「ガレアさんこそ、眠らなくて大丈夫なんですか?」
「私の呪いのせいでもあるが、眠らなくても問題ないのさ。龍人族はこう言ってはなんだが諸々の基準が大分他種族と違うからね」
「そう……ですか。だからそんなに強いのですね」
「あぁ、呪現獣の時の事かい?」
「はい、身体能力もですけど、あの剣技は凄かったです」
「お褒めにあずかり光栄だね」
サーロは横で眠るティアラに視線を送る。そして、自分の首筋を片手でなぞる。
「ガレアさんにお願いがあります」
「なんだい?」
「僕に、戦い方を教えてください」