緑あるの土地へ
「あぁ、余談だから気にしなくてもいいが、アバンダンシア、あそこもある意味では呪われた地だね」
「え?」
「……え?」
サーロは予想外の余談に思わず声が漏れた。ティアラはサーロの事が心配でよく聞いていなくて、サーロが驚いた声に驚いて声が漏れた。
「まぁ今は気にしなくてもいい事だよ。あそこは特定の範囲内には恵みを与えてくれる、まじない、人々の想いが宿っているのさ。だがもちろん代償は生まれる。そこの土地に辿り着けなかった者達の負の思念がアバンダンシアに至るまでの土地に宿り侵食し衰退させる。そしてそこに生きていた生物の哀しい思念が今のような呪現獣となっていたのさ。たくさん、ね」
「……そう……なんですか……」
「サーロ……」
サーロはアバンダンシアの周りの土地がなぜ不毛地帯になっていたのかを、余談で知り戸惑う。ティアラはとにかくサーロが心配である気持ちしかなかった。
「うむ、余計な余談だったね。要するに呪いやまじないは一概に良いもの、悪いものとは言い切れないというだけさ」
ガレアはそう言いながら、ひょい、とサーロとティアラを小脇に抱える。
「え」
「へ?」
サーロはまた予想外の事で声が漏れた。今度はティアラもだった。
「さて、まだまだ不毛地帯は続くからね。今日中に緑のある土地に着きたいな。ということで」
「ちょ! 待ってガレアさん!」
「まだ心の準備が!」
「舌噛まないでね」
大きな翼を生やし、そして、勢いよく大地を蹴り出す。
「空の旅に再びご案内さ」
「きゃぁぁぁっ!」「うわぁぁぁっ!」
空を爽快に突き進む頼もしい用心棒と、小脇に抱えられた少年と少女。遠くには緑広がる土地が微かに見えている。そこは獣人族が暮らす森であった。
「おっしゃ! 今日も出来たぜ! 俺特製昼ご飯!」
狼のような姿をした二足歩行をしている獣人族がひとり、ウッドハウスの庭に拵えてある椅子に座って元気に手を合わせる。木製のテーブルにはバナナマフィンと豆乳が置いてあった。そして一気にむしゃむしゃバナナマフィンを食べたかと思うと、ごくごくと豆乳も飲み干してしまった。
「ぷはぁ! 今日も美味いぜ! ごちそうさま!」
狼の獣人族の男はまたもや元気に手を合わせる。そして誰かに祈るよう両手を握り、静かに黙祷する。片手には、紋様が刻まれた革のベルトが掌から手の甲にかけてきつく装着されていた。
「今日も俺は貫いてるぜ。 男の約束だからな! このウルバル、誓ったことは曲げねえからよ!」