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黒の呪現獣と紅蓮の閃光

強い日射しで陽炎揺らめく地平の彼方から、黒く、禍々しい気を放っている何かが近づいてきた。空も、地にもその何かは現れ、数を増やし、こちらに迫ってくる。


鞘から剣を抜き出す紅の龍人族。


「私が来たときは一人だから無視しても通れたがね。さて、腕が鈍ってないことを願ってくれたまえ」


「ガレアさん! あの黒い生き物は……」


「あれは呪現獣。この世に残った呪いが具現化した姿だよ」


ティアラの怯えた声色の問いかけにガレアは落ち着いて答える。


「たしか……アイシャ先生から聞いたことがあります。死んでしまった人の強い思念が稀に獣のように生を持って現れると……でもこの数は……」


「ふむ、稀、とは言えない数だな」


人の死によって生まれた生を持つ思念である黒い獣、というよりも、怪物というのが相応しい風貌の呪現獣の群れはみるみる近づいてくる。


ガレアは鞘から引き抜いた自分の髪色と同じ色褪せた紅蓮色の剣を構える。


「通るには……殺さないと何ですか……」


「あぁ、あの群れを抜けるほどの速度で飛んだらキミ達の身体が耐えられないかもしれないからね」


ガレアは何ともないように答える。ただそれが最善だというように。ティアラは、理解はしていているが、心の悲しみに揺らいだ。その心の響きはガレアにも伝わっていた。


「自分達が生きるためには仕方のないことなど山ほどあるさ。それに、あれはむしろ斬らねばならない」


「それは……どういう……」


サーロは喉を軽く押さえながら、ガレアを見つめ、聞いた。


「呪現獣。死んでも残されてしまった哀れな思念達。この地から解放してやるべきだと私は思うからね」


黒の群れの姿をはっきり捉えられる距離に。ガレアの後方にティアラとサーロ。


ガレアは、大地を力強く蹴り出した。瞬間、目に捉えられぬ速度で呪現獣に向かっていく。そして紅蓮色の剣を、強く握り、一閃。


「ガッ!」


剣に貫かれた呪現獣は、鈍い叫び声を上げ、霧散していった。周囲の呪現獣たちはワンテンポ遅れて、ガレアの存在に気付き、牙を、爪を立てた。そして一斉に襲い掛かる。


「ごめんね。すぐに終わらせるから」


ガレアの低い一声。そしてガレアの姿はサーロとティアラには捉えられなくなった。


斬。


「ガギャァ!」


斬。斬。斬。


「キャシャー!」「グァガガガッ!」「イィーーー!」


斬。斬。斬。斬。斬。斬、斬、斬、斬、斬斬斬斬斬……。


無数にも見えた黒い呪現獣の群れは、瞬く間に霧散していく。鈍い叫び声と共に。


ガレアの姿は相変わらず捉えられない。唯一見えたのは太陽の光を受けて鈍く煌めく剣の光。紅蓮の閃光だけであった。


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