とある世界での子供達の遊び
青々とした色が一面に広がる草原と、風が吹くと葉と葉の擦れる気持ちのいい音がする森の間で仰向けになり、特に意味もなく空を見る。
空にはただ青い空と真っ白な雲があるだけで何の面白みもないが、なぜか眺めてしまう。
走り回った体力がそろそろ回復してきたかというところで起き上がり、先ほどまでみんなと遊んでいた場所に駆けていく。
体が空を切る音が聞こえ、不思議と楽しくなってくる。
みんなが見えて、全身で自分の存在を主張する。
「おーーい!みんなー」
「あっ、リッくん!」
「リッくん!次何するー?」
「どこいってたのさー」
「ごめん!ちょっとあっちで休んでた!」
「俺もっとかけっこしたい!」
「えー私もうやだー」
「僕ももっと違うのがいいかな」
「じゃあいつものやろうよ!」
「いーねー!やろー」
「わかったー」
小石を投げ飛ばし、一番吹っ飛ばしたやつが勝ち、投げる方法は何でもいい、といういつもの遊びをする。
実のところ、昨晩用意した秘策があり負ける気がしない。前回はソーちゃんの作った投石器とかいうやつに負けたけど、その3倍、4倍は吹っ飛ばす自信がある。
「じゃあ私からやるね!」
「いーよ!じゃ次俺な!」
「あ、ソーちゃん俺が最後でいい?」
「いいよー」
「今回は絶対勝つんだから!」
「投げていいよー」
「見ててよね!行くからね!」
パーちゃんが全力で腕を振りかぶり、しなりを付けて小石に推進力を伝えようとする。
地面はパーちゃんの力みでめり込んでおり、土が少し盛り上がる。
小石を投げる手によって空が割かれ小石が手から離れる。
小石は大きな衝撃音を出しながら吹き飛び、途中で左に逸れて森の方へ飛んでいく。
「あーーー!間違えたーーー!」
「はいぱーちゃん森の方に飛ばしたから失敗なー」
「えーもっかい!もっかいやらせて!」
「だめだよ次俺の番だもん」
「あーーーもーーーー」
そのままアルとソーちゃんがいつものように投げたが、前回のソーちゃんは超えられなかった。
「よーし俺絶対勝つからな!」
「くっそー全然だめだった―」
「俺ちょっと道具持ってきたんだよ」
「え?リッくんあの投石器ってやつ作ってきたの?」
「ちがうよ!もっとすげーやつだよ!」
「なにそれ見せてー」
「じゃじゃーん杖でーす」
「えーーーー作ってもらったの!?」
「すごーい!」
「まぁまぁ見てろって!絶対ソーちゃんより飛ばしてやるよ。あ、アルちょっと石持ってて」
この杖はものすごく簡単な作りで、まっすぐにしか使えないとお父さんが言っていたので飛ばしたい方向に狙いを定めて杖の先端を小石に付ける。
目を閉じて集中し、自分の中にある魔力の循環とやらを意識し、その力を杖に集まるようになんとなく操作する。
10秒ほどで杖にふわっとした何かが移った感覚があり、目を開けると杖がうすぼんやりと光っていた。
あとはこの力で小石を吹き飛ばすだけ。
次の瞬間、今までの人生で感じたことがない衝撃が全身に走り、自然と目を閉じる。数舜後自分の体が宙に舞っている事に気が付き、目を開けると地面から自分3人分ほど浮いていた。
そんな思考を巡らせたのもつかの間、気付いたころには地面に転がっていた、呆然としたままのっそりと起き上がり、吹き飛ばされた場所に戻る。
みんなと顔を見合い、アルが最初に吹き出した。それからは連鎖的にみんなで訳も分からず笑った。
「アハハハ!なにあれーーー!!」
「ブハハハ!!!すっげーー!杖すっげーー!」
「アハッハハハハ!!」
「ハッハッハッハッハー!!!どーーだ!すげーーだろ!!!!」
小石がどうなったかは分からないが、確実に今までで一番遠くまで飛ばせただろう。
そのあとはおなかがすいたので家に戻り、服が泥だらけなことを怒られた。
あーーー楽しかった!明日もやろうっと!
魔法という概念が存在したらばその力は自然界に利用されると思うんですよ。
だから成り行きで生物っていうのは私たちの住む世界とは比べ物にならないほど強固になると思うんですね。
そんな世界があったら、こんな遊びが生まれると思いませんか?