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過去

 席替えしてテンションだだ下がりの中、さ

 らに追い討ちをかけるかのように先生が言

 った。

 

「そこの一番前の二人。今日放課後図書室の

 本の整理手伝ってくれ。」

 

 う……。

 

 小さくうなずく津川さん。

 ふぅ、仕方ない。

「はーい。」

 オレは渋々返事をした。

 

 ー放課後ー

 

「あー、やっと終わったー。」

「お、二人ともご苦労さんだったな。また、

 よろしくな。」

「先生〜、あんまりこき使わないでください

 よー。」

 オレの言葉にクスクス笑う津川さん。

 

 

 二人で教室に戻る途中の渡り廊下でオレは、

 津川さんの秘密を知った。

 

 

 ヒューッ。

 突然強い風が吹いた。

 すると津川さんの髪が風になびいた。

 急いで髪を押さえた津川さんだったけど、

 オレは偶然見えてしまった。

 

 

 あっ…

 

 慌てて髪を押さえながら津川さんがこっち

 をみた。

 

「もしかして…みた?」

「う…ん。なんかごめん…」

「ううん。隠してる私が悪いの。」

 

 

 何を見てしまったかと言うと津川さんの耳

 の辺りにそれほどは、目立たないのだけれ

 どアザみたいなものがあった。

 

「でも、そんなに目立たないし気にしなくて

 も大丈夫だよ。」

「うん…よく言われるんだけど、だけど…」

 

 急にポロポロ涙を流す津川さん。

 

 えっ…

 

「なんっ…どうしたの?」

「あっ、ごめんなさい。泣くつもりなかった

 のに。本当ごめん…」

「ううん。いいよ。」

 

 とりあえず津川さんが落ち着くまで教室で

 少し休んだ。

 

 

「どう?落ち着いた⁇」

「う…ん。」

「そっか、なら帰ろっか。」

 小さくうなずく津川さん。

 

 

 すっかり暗くなってしまったので途中まで

 送ってあげる事にした。

 

 とにかく明るい話題…

 

 うーん。

 

 

「あっ、そういえばこの前猫が追いかけっこ

 してたから喧嘩かと思ってニャーって言っ

 てみたら、一匹の猫が振り返ってニャーっ

 て言ってくれたんだよ。すごくない⁉︎」

「うん。すごい。私猫好き。」

「そうだよね。猫かわいいよねー。」

 

 …シーン…

 

「あのね、あの…」

「ん?」

「あの耳にあるアザみたいなの火傷の後なん

 だ。」

「あー、そうだったんだ…」

「うん。傷自体は大した事ないの。でも、私

 が火傷した事でお父さんとお母さんが大げ

 んかしてね、それで…家族がバラバラにな

 っちゃったんだ。私のせいだよね。みんな

 笑わなくなっちゃったし。」

「そんな事ないと思うよ。きっと他にもなん

 か理由があったはずだよ。だから、自分を

 せめないで。」

「そうかな…。」

「うん。それに大げんかしたって事は、よっ

 ぽど津川さんの事心配してくれてたって事

 でしょ?だから、全部が自分のせいじゃな

 い。大丈夫だよ。津川さんが笑ってたら、

 家の人だってきっと嬉しいはずだよ?」

「そうかな…?」

「うん。」

「なんか少し元気出たかも。ありがとう。」

 ニコ。

 

 津川さんが、笑った。

 

 

 次の日

「琢也くん、琢也くん。」

「ん?」

 明るい声…

 誰だろう?

 振り返ってみると、

 津川さん。

 

「昨日、久々に家で明るく振る舞ってみたら、

 お母さんがよかったって涙流して私の肩を

 さすってくれたの。」

「うん。よかったね。」

「ありがとう。私、なんか色々考え過ぎてた

 のかもしれない。勝手に塞ぎ込んで。」

「そっか。じゃあ、もう大丈夫そうで安心し

 た。」

「うん‼︎」

 

 

 その日から津川さんは、髪を顔で隠さずに

 過ごすようになった。

 そして、よく笑うようになりすっかり別人

 のようだ。

 

 

 もうすぐ合唱コンクールが学校で行われる。

 津川さんは、伴奏。

 すごく素敵な音色で思わず聴き惚れてしま

 うくらいだ。

 すげーなー。

 

 

 最近の津川さんは、明るく誰からも好かれ

 る存在となっていた。

 そうなると男どもは、黙っていない。

 

 

 津川さんは、クラスで人気ナンバーワンの

 モテ女になった。

 ピアノがうまくて明るくて性格もいい。

 素晴らしいじゃないか。

 

 でも、誰とも付き合わない様子だ…。

 

 

 オレもだけどピンとくる相手にまだ出会え

 ていないのだろうか。

 

 

 あんなにかわいいのに、彼氏がいないなん

 てもったいない。

 なんて思っていたら、田川さん登場。

 

 

「なんで津川さんってさ、誰とも付き合わな

 いの?」

 なんてヤボな質問をしている。

 

 

 すると津川さん。

「私、好きな人がいるの」

 発言。

 

 

 なるほどねー。

 

 オレみたいに、ピンとこないんじゃないわ

 けね。

 

 ハハハ…

 

 ってか、津川さん…

 好きな人いたんだな。

 

 なんでオレこんなにへこんでんだよ…。

 

 

 続く。

 

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