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一人になりたい高校生  作者: 矛盾の猫
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五話

最後まで読んでいただけると嬉しいです。

 入学5日目の放課後、俺と綾野は掃除をする空き教室の前にいた。小雪は職員室に鍵をもらいに行っている。俺はスマホを使って暇をつぶしているわけだが、なんかさっきから綾野が俺の方を見てるんだよな。

「俺の顔に何かついてるのか?」

「何もない」

「じゃあなんでさっきから俺の方を見てるんだ?」

「さっきからじゃない。いつも見てる」

いつもってなんだよいつもって。そういえば最近一緒にいるから忘れていたが、こいつはもともと俺をストーキングしている奴だったな。つまり俺の事を見ているのがむしろ普通の事っということになるのか。

「そういえばそうだったな」

まあ、何時もどうり気にしないのが一番だな。再びスマホを使おうと思ったが、小雪が小走りで向かってきているのが見えたのでスマホをしまう。

「すいません、遅くなりました」

「おう、お疲れ」

一応労いの言葉をかけておく。

「それでは、早速始めますか」

「そうだな。サッサと終わらせて帰りたいし」

小雪が教室の鍵を開け、扉を開ける。空き教室は普通の教室の半分くらいの広さで、それなりに埃っぽい。机と椅子がいくつかあるが、こんなところにあるのだからおそらくもう使えないのだろう。その他にも古い教材や本などが教室の隅の方や古い棚の上に置いてある。

「それじゃあ役割を決めるか。俺は窓拭きがいい」

「いらない物まとめる」

「それでは、私は床を掃きますね」

しばらくの間、真面目に掃除しているとある箱が目に入った。その箱をよく見てみると、どうやらパスワード式の金庫のようだ。俺は掃除をする手を止めて金庫を調べる。金庫にはメモが貼ってある。

[汝、この金庫を開けたくば四桁の真の数字を入れよ。さすれば金庫は開かれん]

きっとこのメモを書いた人は中学二年生だろう。そんなことは置いといて、こんなものを見つけたら気になるのは当然の事だろう。メモをもっとよく見てみると端の方に小さな文字で何か書いてある。

[ヒントは○○年度卒業文集の中に。注意!この金庫は一度間違えると二度と開かなくなります。]

1回しかチャンスはないのか。

「猫八、さぼってないでちゃんと掃除してください。って何やってるんですか?」

「ん?ああ、なんか金庫を見つけて中身が気になってな。パスワード式の金庫でパスワードのヒントが書いてあったんだよ。ここまでくると開けたくなるだろ?」

「まあ、確かにそうですけど。そういうことは掃除が終わってからにしてください」

「そうだな」

小雪に注意されてしまった。金庫を開けるためにも早く終わらせなければ。その後、俺は通常の1.2倍速くらい早く掃除をした。まあ、もともと遅いからそこまで早いわけではないが。


 大方掃除が終わり、俺は金庫の事を2人に説明する。

「・・・というわけだ。綾野、いらない物の中に○○年度の卒業文集はなかったか?」

「・・・あったと思う。でも○○年度のかはわからない」

「そうか。まあ、取り合えず探してみるか」

「そうですね」

俺達は文集を探す。にしても色々あるな。ボロボロになった教科書、折れてるものさし、開けてないお菓子もある。お菓子に関しては中身を見たくないな。

「あった」

しばらく探していると綾野が見つけたのか文集らしきものを掲げいる。

「あってよかったですね。もしなかったらもう何もできませんし」

小雪の言う通り文集がなかったら金庫を開ける手段が壊すしかなくなるからな。

「見つけた」

綾野が俺に文集を手渡す。

「おう、ありがとな。助かった」

俺がお礼を言うと綾野は照れたのか少し頬を赤くする。

「よし、早速中身を見たいところだが、どこを見ればいいんだ?」

ヒントには文集に何かあるとしか書かれていなかったからな。どうするべきか。

「そういえば、先生に鍵を借りるとき聞いたんですけど、元々ここはある部活の部室だったそうですよ。何部だったかはわかりませんが」

「なるほど、とにかく部活について書かれているところを見てみるか」

俺は文集の部活の部分を調べる。部活について書かれているところには、部員や功績など色々書いてある。部室の場所についても書かれているため、ここを部室としていた部活を見つければヒントがあるかもしれない。

「・・・あった。ここはどうやら裁縫部だったみたいだな」

「裁縫部ですか。私達も裁縫部にすれば今頃掃除なんてしていなかったかもしれないですね」

「確かに。裁縫部の方がよかったかもな」

「猫八、ヒント」

綾野に言われて、脱線していた思考を戻す。

「取り合えずみんなで見てみるか」

俺は文集を床に置いて、2人にも見えるようにする。文集には3人の部員の出席番号と学年に数字が書かれていて、それ以外に数字は見当たらない。

「おそらく、出席番号が怪しそうだな」

「そうですね。部員の名前は都郷トゴウ 有華ユカ小畑コハタ 日富美ヒトミ前鶴マエズル 志保シホ、この3人ですね。出席番号は順番に4番、9番、16番ですか」

う~ん、出席番号を並べるとちょうど4桁の数字になるからやっぱり出席番号が重要だとは思うんだがな。

「綾野は何かわかったか?」

「全然」

綾野が即答する。

「それにしても、このメモを書いた人はちょっとあれが入っているんですかね?」

しばらく考えていると小雪が金庫に貼ってあるメモを見ながら言う。

「・・・チュウニビョウ」

はっきり言ったな綾野。小雪が言葉を濁した意味がなくなった。それにしても、どうしてチュウニビョウの人が書きそうな文で書いたんだ?何か意味があるのだろうか。

「真の数字か・・・」

真の数字、マコトの数字・・・うん?ま、こ、と、の数字?確か部員の名前って。

「そういうことか」

俺は思わずつぶやく。

「猫八、わかったんですか?」

「ああ、たぶん。結論から言うとパスワードは1694だと思う」

「どうして?」

「今から説明する。まず、この問題で重要なのは名前と出席番号、そしてメモの文章だ」

「名前と出席番号はわかりますけど、このおかしな文章も重要なんですか?」

「ああ、俺も最初はただのおかしな文章だと思ったけど、ちゃんと意味があった。メモには真の数字って書いてあっただろ。そこが重要だ」

「真の数字・・・あ」

どうやら綾野はわかったみたいだな。

「この真の数字っていうのは、ま、こ、と、って分けて考えると部員の名前の頭文字になるんだよ。あとはこの順番に出席番号を並べると1694になるわけだ」

「ほ、ほんとだ。よくわかりましたね」

「すごい」

「ほんと、よくわかったな、俺」

我ながら少し驚いた。

「まあ、そんなことより早速開けてみるか」

俺は金庫にパスワードを入力する。カチャッ、と金庫の開く音が部屋に響く。金庫には細かい部分まで細工された白い猫の人形と一枚の手紙が入っている。

「人形と手紙があるな」

「この人形すごいですね。細かいところまでよくできてます」

小雪は人形を持つと腕に抱く。

「手紙、気になる」

綾野は手紙が気になるらしい。

「それじゃあ読んでみるか」

「この手紙を読んでいる人へ。この手紙を読んでいるころには私はもうこの学校にはいないでしょう。私は今、卒業式が終わった後にこの手紙を書いています。なぜこのような手紙を書いたかといいますと、私達の代でこの裁縫部が廃部になってしまうからです。なので、せめて何か残していきたいと思いこの手紙と今まで私達で人形を作ってきた中で最高傑作だと思う人形を残していきました。ですが、ただ残すだけではつまらないと思い少し問題を出しました。楽しんでいただけたのなら幸いです。最後に人形に関してはどのようになさってもかまいません。しかし、もし私達の願いを聞いていただけるのでしたらその人形をどこかに飾っていただけるとありがたいです。それでは、私はこれで。裁縫部部長、都郷有華」

「だってよ」

「ありがとう。猫八」

「取り合えず、やることはやったしもう帰るか。あと、その人形はどうするんだ?」

「飾りませんか?この部室に。手紙にも書いてありましたし」

「そうか。まあ、素人の俺が見ても良い人形だってわかるぐらいのものだしな」

「白川さんは?」

「・・・猫八がいいなら私もいい」

「それでは部室に飾るということでいいですね。今日は私が持って帰って、また後日、机とか運び終わってから飾ることにします」

「そうか。それじゃ俺は帰るわ。また明日、いや明日は休みか。月曜日な」

「はい。ではまた月曜日に」

「またね」

俺は2人に背を向けて歩き出す。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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