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ジャム
テーマは「赤」です。
ぷつん、と弾ける果皮。とろりと溢れる果汁。白銀の鍋底に広がる、赤、赤、赤。
柔らかな毛の生えた滑らかな皮を丁寧に剥ぎ、硬く白い殻を叩き割ると、半透明の膜で覆われたピンク色の果肉が覗いた。引きずり出して鍋のなかに入れれば、柔らかな脂肪の塊であるそれはぷかぷかと浮く。つられて落ちた二つの白い種は瑞々しく張って、軽く握るとくしゃりと潰れる。指を伝う透明な液は、爽やかなレモン汁のようだった。
皮も、汁も、残さず入れた鍋のなかに砂糖を加え、中火にかけて一煮立ち。浮いてきた滓を掬い、木べらでなかを搔き回す。熱く赤い流れに揺られて、ピンクの塊がほどけていく。ゆっくりと優しく、混ぜすぎないように。蓋をしてとろとろと煮込めば、あとは瓶に詰めて冷ますだけ。リボンを結べば出来上がり。甘くて可愛くて、美味しいジャム。
貴方は永遠に私のもの。ガラスの向こうから見返す黒い宝石に、彼女はひとり微笑んだ。