1章 堕鬼
現在大通りらしきところを歩いている、周りにはたくさんの人がいる。
さすが異世界だ。
さきほどまで路地裏にいたから気づかなかったがいたるところにさまざまな種類の種族の者たちがいる。
屋台を出して客を元気よく呼び込んでいるドワーフ。
あそこで取っ組み合いの喧嘩をしてるのはオーガだろうか?ゴブリンまでいる。
テーブルに座ってお茶を飲んでるあの耳が尖り顔の整った女の人はきっとエルフだろう。
おお!
見た目は人間だけど動物の耳と尻尾を生やした半獣半人…亜人までいる!
異世界ものの本やゲームをやっていて良かった。ある程度の見分けがつく。
「カレンこれからどこに行くんだ?」
「ギルド本部だよ。そこでクエストの内容が各々に伝えられるんだよ」
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でかい…ただただでかい。
ギルド本部は淡い小麦色のレンガで作られていて屋根には盾と二つの剣と王冠のエンブレムの旗がでかでかとつけられている。
周りには試験を受けにきた人でごった返していていかにも冒険者っていう人だらけだ。
その時ギルドの中央部に鎧を身にまとった男が現れ周辺を見渡すと口を開いた。
「これから騎士試験を開催する!俺の名はメージ=ハーゲン騎士団の副団長をやっている。騎士試験の内容は知っての通り王様から出されるクエストをクリアすることそして今回は三人一組のチームを作ってもらう、クエストの内容は各チームランダムで違うから注意してもらいたい。ではチームを組み終わったら俺のところに来い」
そう話すと男は奥にある山積みの書類がのっているテーブルへ向かっていった。
きっとあの書類はクエストの書類だろう。
「三人一組のチームか…カレン俺達と組まないか?」
「もちろん!最初っからそのつもりだったよ」
カレンは快く承諾してくれた。
だがメリエルが困惑の表情を浮かべていた。
「時雨…私は今神の力が使えないから足手まといになる可能性がとても高いぞ?」
「そのことなんだけどどうやらお前魔法は使えるらしいぞ」
「なぜわかるのじゃ?」
「多分気づいてなかったと思うけど裏路地の一件の時にメリエルに魔王討伐を頼んだ神様が俺の脳内に直接話しかけてきたんだよその時に俺の能力とメリエルの事を話してくれたんだ」
「へぇ~メリエル魔法使えるんだ。私も使えるけど魔法を覚えるのが苦手で少ししか使えないんだよね。メリエルはどのくらい魔法の知識があるの?」
「魔法の知識は全部知っておるぞ!」
「ぜ…全部!!!!!?」
メリエルが胸を張るなかカレンが口をパクパクさせている。
全部か…メリエルをコピーできれば良いんだけど神様から説明を受けたときに神様と魔王はコピーできないって言ってたもんな。まぁ出来たとしてもメリエルの存在意義がなくなっちゃうからコピーしないけどね。
「き…気を取り直して副団長さんの所へ行こう」
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副団長までの長い列に並びやっと副団長からクエストの紙をもらった俺達。
だが紙を受けとったカレンがオロオロと狼狽えた。
「堕鬼……」
そうカレンは呟いた。
堕鬼ってなんだ?
そう考えていると表情に出ていたのか副団長が話し掛けてきた。
「なんだ青年堕鬼を知らないのか!?そんな奴もいるんだな
よし!教えてやろう堕鬼ってのは元は普通の人間なんだ力欲しさに鬼と契約を交わす禁忌の魔法に手を出し体内へ取り込み飼い慣らす…だが所詮は人間鬼を飼い慣らすなんて不可能に近い。飼い慣らしに失敗したものは鬼に体を乗っ取られ鬼化し鬼へと堕ちる…これが堕鬼だそれを君たちに討伐または救い出してもらう。まぁ救い出すなんて不可能だがな」
そう話す副団長にカレンが焦りを含めた口調で副団長に話し掛ける。
「待ってください!確か堕鬼は滅びたはずではなかったんじゃないですか!?それに堕鬼一人での力はとても計り知れない!それを私達三人で倒すなんて…」
そこでカレンの言葉を遮り副団長が話し出した。
「倒すなんて無理か?そんな奴は魔王なんて絶対に倒せん無理なら騎士になるなんてやめてとっとと帰れ」
カレンは黙りこんだぐうの音もでないといった表情だ。
確かにこんなところで弱音を吐いていたら魔王なんて倒せないと俺も思う。
「いいえやります…」とカレンは小さく呟いた。
「よし!アレンこいつらを堕鬼のいる所へ連れて行ってくれ…あと青年その格好どうにかしろ変だし見る限り服の耐久性はきっと低いだろう?こちらで防具を用意しているから使え」
俺はその言葉を聞き目線を副団長から自分の服へと移す。
…あっ!学校から帰ってそのままこっちに来たから制服のままだった…
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現在ギルド本部の地下へと続く階段を降りている。なぜギルドの地下に堕鬼とかいう危険な奴を収容してるんだと思ったがここはギルドの本部だ色々なやつが集まるから安全だと思ったんだろう。
周りの壁には自ら発光する石、ルクス石という石が付けられている。目が眩む程とても輝いている。
副団長から貰った防具はとても体に馴染み動きやすくデザインも良いしかも剣まで貰った。
前を歩いていたアレンという青年が立ち止まった。
どうやら着いたらしい。
眼前に広がるのは幾重にも重なった魔方陣らしきものの扉。奥にはだだっ広い部屋が広がっている。
そしてここでアレンが説明し始める
「ではこれから魔方陣を解きますのであなた方は中に入り堕鬼と戦闘してもらいます。戦闘中はもしもの時のために魔方陣をまたかけます。私はあなた方の戦闘を見ていますが戦況が劣勢になったら引き上げてもらいます。分かりましたね?」
俺達はコクリと頷くと魔方陣が解かれ中に入っていった。
中には女の子が立っていた・・・黒髪でそこから二つの角をはやし黒髪の奥にある二つの目は赤く輝き体の周りに黒いオーラを纏った女の子が・・・。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」
女の子は人間とは思えない獣みたいな雄叫びを上げた。
女の子が右手を空中に掲げると右手には漆黒の剣が出現した。
数十メートルも離れていよう距離から俺を目掛けて飛んできた・・・。