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03:ウィロー・ストリート





 翌日、アンドロイド特別捜査官室。最後に出勤してきたのは、銀色の髪をタイトにまとめた美男子だった。


「おはようございます!」

「お、おはよう!」


 サムとノアは、彼を頭のてっぺんから指先までじっとりと眺める。肩につくくらいはあった髪はバッサリと切られ、爪も短く整えられている。化粧はしていないが、その美しさの輝きは失われておらず、未だ瞬いている。


「おはようアレックス。遅かったな」


 最後にマシューが声をかける。するとアレックスは涙声で訴えかける。


「ねえ、私大丈夫?変じゃない?お化粧してないと、どうにも落ち着かないのよ!」

「大丈夫だ、アレックス。お前は綺麗だよ」


 確かに綺麗ではあるが、これで男性には見える。しかし、内偵の予定なんかまだまだ立てられていないのに、相方にこんな無理をさせてよかったものかとマシューは考える。


「本当?じゃあ、こんな格好でもいいの?」

「もちろん。でも、我慢できなくなったら、化粧しても構わんよ」

「ううん、しばらくは、こうしているわ。マシューが大丈夫って言ってくれたしね」


 アレックスは、短くなった襟足を撫でながら、にっこりとほほ笑む。彼の美貌にはすっかり慣れているはずの同僚たちであったが、今日ばかりはその笑顔に心奪われてしまったようだ。




 アレックスとマシューは、午後からウィロー・ストリートに出かけてみることにした。思えば二人とも、この通りをきちんと歩いたことが無かったからである。その理由は明白、ここは風俗街だからだ。

 昼間だというのに、客引きの男たちがそこらをうろついている。念のため私服に着替えておいてよかった、と二人は思う。この時間にスーツ姿で歩けば、否が応でも目立ってしまうだろう。

 二人は用心しながら、娼館と呼ばれる場所をチェックしていく。予め資料を頭に叩き込んではいたが、資料の内容が古かったのか、店は変わってしまったり減ってしまったりしている。

 長い時間をかけて通りを歩いた二人は、どこか休憩できる所を探し出す。しかし、こんな風俗街で休めるところと言えば。


「何よマシュー、ラブホ入ったこと無いの?」

「いや、あるが。もう少し歩けば、普通の喫茶店があると思うんだが」

「私、この靴履くの久しぶりでさあ。靴擦れしちゃったから、一回脱ぎたいんだよね」


 アレックスの強い希望に押されて、二人はホテルへと入って行く。靴を脱ぎ捨て、ダブルベッドに顔から突っ込んだアレックスは、しばしそのままの姿勢で動かない。マシューは冷蔵庫から炭酸飲料を取り出して飲む。

 ごろん、とアレックスは寝返りを打ち、マシューに言う。


「それにしてもさ。娼館型の風俗って、五つくらいしかなかったよね?」

「そうだな。しかもどれも規模が小さい」

「あの位の数だったら、全部内偵できるかも」

「でも、大丈夫か?お前、風俗なんか行ったことないだろ?」

「そういうマシューは……って、どうせ彼女一筋か」


 あまり知られていない話だが、マシューには付き合いの長い恋人が居る。アレックスも彼女に会ったことがある。気が強そうに見えて、奥ゆかしい、ギャップのある美人だった。


「とにかく、私なら大丈夫。毎日は無理かもだけど、一日一店舗、内偵してみる」

「ああ、わかった。俺はその間、この界隈の聞き込みをしてみるさ」

「決まりね」


 アレックスはマシューから炭酸飲料をひったくり、一口飲む。


「とりあえず、ここで時間潰して、定時までに帰れるようにしましょ」

「アレックス、もしかして昼寝する気か?」

「そうよ。アラームかけるか、きちんと起こしてね」


 アレックスは枕を抱き、うずくまるような体勢になる。止めても無駄だと悟ったマシューは、彼がぐずって起きようとしない時間も換算し、何時に起こすべきか考え始めた。

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