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また夢で  作者: 黒井満太
第一章 
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人形の家③

 懐かしい商店街だ。道路を挟んで立ち並ぶ店はどれも、古くて小さくて統一感がない。小学校を卒業して今の町に引っ越すまで、獏也はこの通りを通学路として使っていた。おつかいにもよく行かされていた。もう来ることもないかもしれないけど、今でも獏也の原風景として心に残っている。

 立ち行く人は誰もいない。ここにいるのは獏也と、隣の白い少女だけだ。狭い歩道を、獏也が少し車道側にはみ出して、横に並んで歩いている。少女はこんな寂れた商店街でも色々な店に興味を示し、ところどころで立ち止まったり、獏也を置いて勝手に走ったりして忙しい。中でもこの商店街で一番大きな模型店には、しばらくかじりついて離れなかった。二階建てで駐車場まであり、店の中はガラスの壁で見えるようになっていて、天井から吊るされている戦闘機のプラモデルはいつ見ても男心をくすぐる。しかし目的地はここじゃない。商店街の終わりの方にある、肉屋さんに用があるのだ。

 白い少女は獏也の家に遊びに来ていた。今は春休みで学校はないけど、大人の仕事はちゃんとあるから共働きの両親は留守にしていた。朝から家にやってきた彼女と一緒に録画していたドラマを見終わって、お腹が空いたけどつくってくれる人がいない。冷蔵庫を開けるとネギともやしと卵に二人分入った生ラーメンがあったもんで、家で作ることにした。そこで少女がチャーシューを入れたいっていうもんで、こうして買いに出ているわけだ。

「わがまま言いやがって」

 少しむくれてみせても、少女は「へへへ」と悪びれず、じゃれつくように獏也に頭突きするだけだった。

 たどり着いた場所は、見覚えのある店。西洋風の一階部分に、ハンバーガーのような形をしたモダンな二階部分。さらにその上には小さな白い風車が乗っている。ただし扉はなく、軒先にはお肉の並んだケースが置いてある。カルビ百グラム400円、豚タン300円、レバー250円、サガリ900円……。

「ここ焼肉用の肉しか売ってないからね、チャーシューはないよ」

 いつの間にかいた店の主人が何も聞いてないのにそう告げる。獏也は心底がっかりして、あてつけるようにその人を睨んだ。おじいさんと呼んでいい年齢に見えるが、体つきがしっかりしているし、服装もなぜかコックさんの格好をしていて若々しい。シュッとした鷲鼻と、まつ毛の長いぎょろっとした瞳が印象的だった。

「……どこかで会ったことあります?」

 そう尋ねる獏也を無視して、店の主人は奥に引っ込んだ。獏也は白い少女と目を合わせてどうしようかと途方に暮れてると、主人はすぐに戻ってきて、ウインナーの入ったビニール袋を手にぶら下げていた。

「焼いて入れてみな。意外とうまいんだぜ、ウインナーラーメン」

 獏也たち二人はお礼を言って、店を出た。チャーシューが買えなかったのは残念だけど、白い女の子は楽しみだ楽しみだとはしゃいでいる。彼女がいいならウインナーでもいいか……そう考えると、獏也もまだ見ぬそのラーメンによだれがでてくるのだった。

 

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