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また夢で  作者: 黒井満太
第三章
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途切れたフィルム⑦

 海の中を漂っていた。

 見上げても光が見えないほど深いところだった。どうしてこんなところにいるかはわからない。僕は底までたどり着けないかと考え、下へ下へと泳いだ。そのうち、暗くてよくわからないが、建造物らしきものがそこかしこに生えているのが見えて、地面はすぐそこだとわかった。

 足をつくと途端に水が引いて、白い世界が露わになった。蛇行した青い道が一本、地平線まで伸びていた。時々銀色に発光するその道は、よく見ると透けていて、下では魚達が鱗を反射させながら先へと泳いでいく。

 そしてさっきは暗くてわからなかった、道に沿うように埋まっている建造物は、どれもちゃみかんの一部だった。風車の羽と小屋、円形の屋根、無数の窓ガラスと煉瓦、苔むした井戸などなど。すべては現実と同じぐらいボロボロだった。

「どこへ行くの?」

 逆さまに地面に刺さった風車小屋のてっぺんに、白い少女が座っていた。少女は難なく飛び降りると、僕の前に手を後ろ組みにして立ちはだかった。

「カスカはどこへ行きたいの?」

「それはおまえが決めるんだ、獏也」

 後ろからしわがれた男性の声がした。振り向くと、コック姿のじいじが立っていた。

「僕は――」

 思い出すのは、これまでに見た夢。知らない星の砂浜、懐かしい商店街、昼と夜が同時に進む夏祭り。

「ここより遠くに」

 僕はあたりを見渡す。廃墟となったちゃみかんが散らばっている。

「もうカスカを縛るものは何もない」

 白い少女は後ろに手を組みながら僕の目の前まで近づいた。目線が同じ高さであることに今さら気づき、自分が子供の姿に戻っていることを知った。

「もうこうして会うのも最後かもね」

 そう話す少女に、寂しそうな素振りは微塵も感じられない。そうなるのが当たり前であるように、平然としている。僕は彼女の肌に触れようとして、手をぐっと握りしめこらえた。

 わかっている。別れの時が来たのだ。

 途切れたフィルムを、つなぎ合わせる時が来たのだ。


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