あなぐらに棲まうドヴェルグについての覚書
ドヴェルグ(訳注:いわゆるドワーフのこと)は地中の空洞に棲まう、小さな生物である。背丈は人間の膝程度で、よく「小人」と称される。
彼らは色白で、顔を含めた全身に長く黒い体毛を備えている。そのため衣服をまとうようなことはない。人間に似た姿をしているが、知性は低く、大抵の動物がそうであるように、火を恐れ、また大量の水も嫌う。寿命は短く、せいぜい五年程度しか生きられない。多産でこれを補っているが、生き残れる個体数は多くはない。そう遠くない未来に死滅してしまうのではないかと思われる。
彼らの主要な食料は昆虫だ。大きな岩を動かしたときなどに、裏にびっしりとへばりついているような甲虫を特に好む。これは労せずして捕まえやすいからだろう。彼らはあまり敏捷なたちではない。感覚器としては聴力に優れており、蝙蝠のように音の反響を利用して周囲の様子を探ることができる。代わりに目は完全に退化している。彼らが無愛想に見える、夜目が利くと一般に言われるのは、このような理由があるからだ。
また彼らには奇妙な習性がある。金や銀、貴石の類を巣に集めるのだ。目の見えない彼らが、どのようにしてそれを見分けているのかは不明である。収集の理由そのものも解明されておらず、なおいっそうの研究が必要となるだろう。
この「小人の財宝」を見つけ、略奪した者には、ドヴェルグの呪いがかかるとまことしやかに伝えられている。が、これは怪談の類であろう。私はコイン状の銀塊をひとつ失敬したことがあるが、いまだそのような呪いにはかかっていない。
(編注:ドヴェルグは現代では目撃例がなく、すでに絶滅しているのではないかと推測されている。そのせいもあって、彼らがいかにして貴金属を見つけるのか、またそれを集めるのかに関する研究は、進展の目処が立たない状況にある)