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愚兄が魔王を継ぎました。~ツンデレ魔導士奮闘記~  作者: まあ
第三部 ラグシア、宮廷魔術師になる。
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第五一話

 今更ですが、ラグシア達の祖国を『ロクシード』、ユフィ達の祖国を『ガーランド』としました。

 ガーランド王のそばに裏切り者がいる可能性がある聞かされたユフィは難しい表情をしながらも可能性は確かにあると考えたようで説明を飲み込んで王城に戻って行った。

 ラグシアは王城に戻る気にはならなかったようで書斎に残ると魔法陣やこの場でも調査できる事はないかと作業を続けていた。


 ……一度、戻ってみるか?

 戦争を始めると決めたとしてもお互いに情報は欲しいはずだ。

 美味い汁をすするにしても。誰もが一番良いところを手に入れたい。情報交換に乗ってくれる者はいる。


 この国からの視点では情報を一方向からしか得られないと考えが頭の中にあり、ラグシアは転移魔法で祖国である『ロクシード王国』で情報収集する事を考え始める。

 戦争を始めると言ってもお互いに密約を結び、国や国を牛耳る者達は自分達の利のために働いてきた者も多い。

 シーリング家やリズの実家であったラミリーズ家もその中の一つであり、ラグシアの頭の中では数名、自分の話しに乗ってくれる者もいるようである。


 しかし……問題は私が祖国に戻っているのが他の家の者に知られるとシーリング家の立場を悪くする。


 先日、功を得て、ガーランド王国の臣下の一端に名を連ねたとは言え、シーリング家は外様である。

 それだけではなく、異国出身のデュメルがガーランド王の一人娘であるユフィと婚約を結んだ事に異議を唱えている者も多い。

 下手な動きをすれば二心がありと騒ぎ立てられ、邪魔者は消してしまえと思った者達が実力行使に出る事も考えられる。


「……簡単に戻ってくると言うわけにはいかないか? それに渡せる情報と渡せない情報もわけないといけないが、あまり時間をかけていると有益な情報が得られない可能性が高い。どうにかして入り込む方法はないか。いや、移動する場所さえわかれば入り込む事はできるだろうが」


 シーリング家に仕えている者達の安全のためにも下手な手は打てないが情報が戦況を有利にする事は戦場へ出た経験のないラグシアでも知識として知っている。

 その上で、転移魔法を使ってロクシード王国の中に潜り込めるのは情報収集に有利である。

 利点と欠点をラグシアは頭の中で天秤にかけるがすぐに考えはまとまらないようで彼の眉間には深いしわが寄った。


「ラグシア」

「……何だ?」

「入っても良い?」

「……まあ、良いだろう」

 

 その時、リズが遠慮がちにドアを開けて書斎の中を覗き込む。

 彼女の登場にラグシアは珍しく、考え事をしていたにも関わらずにすぐに返事をする。

 リズは彼の行動がいつもと違うと思ったようだが、ユフィに怒られた事で少しは反省しているのか、ラグシアに許可を取るように聞く。

 ラグシアは考えがまとまらない事やユフィにあまり気を張りすぎるなと言われた事もあり、彼女と話す事で気分を変えようと考えたのか小さく頷いた。

 文句が出ると思っていたのかいつもと違うラグシアの様子にリズは少し警戒しながらも書斎の中に入る。

 書斎に入ってきた彼女の姿はメイド服に戻っており、ラグシアはまた、ドレスを見せに来たと思っていたのかリズの姿に首を傾げた。


「ドレスはどうした? 義姉上は置いて行ったんだろう?」

「私はもう良いかな? と思って、見せたいのはラグシアだし、ラグシアはラグシアで忙しいから、感想もくれないし」


 ユフィはリズやメイド達の様子からドレスを持ち帰るのは今度でも良いと言ってくれたようであり、それを聞いていたラグシアは疑問に持ったようだ。

 リズは照れたように笑うとラグシアの元まで移動し、ラグシアの前に紅茶とクッキーを並べる。


「……何を企んでいる?」

「企んでない。私だって、お義姉様に言われて反省したんだから」


 最近のリズの行動とは違うためか、ラグシアは少し警戒したように聞く。

 その言葉に彼女は少し不満だと言いたいのか、頬を膨らませるとイスを引っ張り出してきてラグシアの向かい側に座った。

 いつもならば、ラグシアの真横に移動し、腕に抱き付いて調べ物の邪魔をするのだが今日はどこか冷静に見える。


「……熱でもあるのか? 他の者達はまだドレスで遊んでいるのだろう」

「熱もない。どうして、疑うの?」

「この国に来てからの事を見て居ればそう思う」

「それは……仕方ないじゃない。突然、知らない土地に来たんだよ。やっぱり、不安だったし」


 しかし、ラグシアの目から見た彼女はおかしく、何か裏があると考えているようでその表情は険しい。

 リズは不満そうに言うが、ラグシアは彼女がおかしくなっていたのはこの国に来てからだと理解していたと言う。

 彼の言葉にリズは不安を吐露すると甘えたいのかラグシアの顔を見つめる。


「……不安なら、リズ、お前だけでも戻っても良いんだぞ。王都以外になら狙われる事もないだろう。王都以外にもいくつか転移魔法の移動場所としている場所がある」

「そういう事じゃない。だいたい、王都以外に行っても、知り合いも誰もいないじゃない。それなら、ラグシアがいるここが良いに決まっているでしょ」


 リズはラグシアから許可を取ってから甘えようと思っていたようだが、当の本人であるラグシアはそれを国に帰りたいと理解したようで王都以外なら彼女一人なら安全に暮らせる場所ぐらい見つけられると言う。

 彼の答えにリズはラグシアが何もわかっていない事に不満そうに口を尖らせるとはっきりとラグシアの側が良いと主張するが言われた本人はわかっていないようである。


「……ラグシアは私がそばに居なくても良いの?」

「そばに? できれば安全なところに居てくれた方が心配が少なくて良いんだが、私は兄上やリア、ゼノン殿と違い、武はまったくできない。そばに居ても守る事などできないぞ」

「ラグシアはそうだよね」


 リズは頬を膨らませて自分がいなくても良いのかと聞くが、ラグシアは魔導士である自分では緊急時にリズを守る事ができないと考えており、彼女を安全な場所に置いておきたいと答える。

 その答えはリズのした質問の答えとは若干、外れており、彼女は大きく肩を落とすがそれでも彼が自分の安全を確保したいと考えている事は嬉しかったようで顔を赤らめた。



いつも『愚兄が魔王を継ぎました。~ツンデレ魔導士奮闘記~』をご覧いただき、ありがとうございます。

以前から書かせていただいていますがスランプ継続中です。


気分を変えようと1本新作を書き始めました。

『ケーキよりも甘い笑顔を 連載版』と言う作品です。

ジャンルは恋愛となっておりますのでファンタジー作品を読んでいる方の趣味には合わないかも知れませんがそちらも楽しんでいただければ幸いです。

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